総裁=首相には向かないが……(C)日刊ゲンダイ

写真拡大

 毒を以て毒を制す――というのか。9月12日告示、27日投開票の自民党総裁選に現職閣僚として初めて出馬表明した河野太郎デジタル相(61)が会見で突然ブチ上げた「裏金返納」発言を巡り、党内で波紋が広がっている。

【もっと読む】裏金自民はやっぱり反省ゼロ? 総裁選めぐり《安倍派幹部》がXでトレンド入りのワケ

 26日に国会内で記者会見した河野氏は、派閥の政治資金パーティーの裏金事件の対応について、「検察が調べて分からないものを真相究明するのは難しいが、書類を訂正したら終わりというのは国民の理解を得られない」と指摘。その上で、関与した議員に対し、「(政治資金収支報告書への)不記載額の返納を求める」と踏み込んだ。

 自身のX(旧ツイッター)に寄せられる批判的な意見を片端から拒否することから「ブロック太郎」と揶揄され、大臣会見や国会答弁で見せる子供じみた態度や、上から目線で相手を小ばかにした物言いで世論批判が絶えない河野氏。だが、メディアが持ち上げる「突破力」によほど自信があるのか、その矛先は裏金事件へ向いたようだ。

■安倍派議員は「返せという考えは、我々としては理解できない」とカンカン

 だが、この「裏金返納」には早速、党内で反発の声が上がった。

 二階派(志師会)幹部だった武田良太元総務相(56)は26日配信のネット番組で、河野発言に露骨に不快感を示し、「一事不再理という言葉があるように、党紀委員会で決定された処分を再度新しい組織にかけるべきではない(略)ずっとこの問題をやっていれば国益になるかといえば私はそうは思わない」などと持論を展開。

 裏金事件の“震源地”となった最大派閥「安倍派」(清和政策研究会)の衛藤征士郎元衆院副議長(83)も27日、「返せという考えは、我々としては理解できない。あまりにも唐突なご発言だとみんな思うんじゃないか。河野さんから説明してもらわないと」とカンカンだ。

 茂木敏充幹事長(68)も同日の会見で、「(今年)6月の政治資金規正法改正で、不記載収入を国庫に納付できる特例が新設されたが、過去に遡及するのはなかなか難しい。立法趣旨も踏まえ、対応を検討していく必要がある」とやんわり返納を否定していた。

 だが、こうした裏金返納に後ろ向きな態度を示す自民党国会議員に対し、SNS上では《返納すればオシマイというワケではないないが、それすら嫌がるとは。反省ゼロだな》《河野大臣は総裁=首相にふさわしくないが、裏金事件に切り込んだことは評価したい。裏金議員はカネを返すことすら拒否するのか》《自分たちに都合のいいザル法を作りながら、「遡及が難しい」とは舐めているな》などと、あらためて批判的な投稿が続出する事態となった。

■「一時不再理」を言うなら裏金議員は全員起訴し、裁判所の判決を待つべき

 ちなみに武田氏が例に挙げた「一時不再理」とは、刑事事件の裁判で判決が確定している場合は、その事件を再度審理することを許さないとする刑事手続上の原則のことだ。ただ、それを言うのであれば、まずは金額の多寡にかかわらず、裏金を作った議員は一人残らず全員、政治資金規正法や脱税などの罪で逮捕、起訴し、裁判所の判決を待つべきではないか。

 その上で「無罪判決」が確定したのであれば、武田氏が言う通り、「一時不再理」は成り立つだろう。しかし、実際はどうだったかといえば、逮捕や在宅起訴に至った裏金額の線引きは曖昧で、真相解明せず、党員資格停止などの内規処分で幕引きだ。仮に一般国民が同じように裏金を作っていたら、脱税で追徴課税は免れない。そもそも返納すれば終わりという問題ではないのだ。

 武田氏は「国益になるかといえば私はそうは思わない」とも言っていたが、国益を考える政治家であれば最初から裏金作りに手を染めることはしなかったはず。法律を守らない政治家が今もなお立法府に大量に存在していること自体がすでに国益を損なっているのだ。

  ◇  ◇  ◇

 ●関連記事【もっと読む】【さらに読む】では<裏金自民はやっぱり反省ゼロ? 総裁選めぐり《安倍派幹部》がXでトレンド入りのワケ>など、総裁選で裏金事件をごまかしたい自民党の動きなどを取り上げている。