MARVEL and all related character names: © & ™ 2024 MARVEL

写真拡大

『スパイダーマン』ソニー・ピクチャーズによるマーベル映画シリーズで、多くのファンはスパイダーマン作品との接続を期待しているが、現在までになかなか実現しておらず、冷めてきているような印象もある。『ヴェノム』シリーズで焦らされ、『モービウス』では予告編のフェイクにも使われ、ではいまいち釈然としない別世界での物語となっていた。

そこに公開された最新作『クレイヴン・ザ・ハンター』では、スパイダーマンにまつわる描写が控えられている。前回の特報映像では、クレイヴンがクモに囲まれるカットがあり、将来的なスパイダーマンとの対決を示唆していたのだが、今回は含まれていない。原作コミックのクレイヴンは、素手で猛獣を倒せるほどの身体能力と五感を持つ最強のハンター。全ての相手を狩り尽くすと、やがてスパイダーマン狩りに執念を燃やすという男だ。

それよりもフォーカスされているのは、徹底的なゴア描写だ。レッドバンド版として公開された今回の予告編では、クレイヴンが相手の頸動脈に刃物を突き刺したり、トラバサミで頭を挟んだり、人を木の幹にぶつけて粉砕したり、狼が人の首を食いちぎったりと、過激な描写がこれでもかと詰め込まれている。この映画の主人公は殺人者の父との関係に悩みつつ、自身も殺戮に取り憑かれた容赦なき狩猟者であるようだ。

(MCU)劇場公開作では『&ウルヴァリン』が初のR指定となった。監督のショーン・レヴィは、暴力描写にはキャラクター上の必然性が必要で、むやみやたらに過激なシーンを見せれば良いわけではない、と。この映画での過激な暴力シーンは、観客にグロテスクな悪寒を与えるためではなく、デッドプールが映画のルールを無視して自由に暴れるキャラクターであることを伝えるのに効果的だった。旧20世紀フォックスの『LOGAN/ローガン』(2017)もそうで、年老いて私生活も荒れていた主人公ローガンのザラついた怒りや、人生の終着点に向かいつつある彼の戦闘に満ちた生き様を表現するのに不可欠だった。

一方のソニー『クレイヴン・ザ・ハンター』が、どのような哲学で暴力描写を取り入れるのかは注目したいところだ。クレイヴンは原作コミックなどでも、必ずしも激しいゴア描写と結びつけられるキャラクターではない。もしもスタジオが、過激な暴力描写を取り入れてR指定にすれば他のコミックヒーロー映画と差別化できるだろうと考えているのなら、それがうまくいくかどうかは少々不安だ。クレイヴンが激しい怒りや復讐心に駆られていることや、倫理観を失っていることを物語る背景が十分に示されれば、暴力描写にも筋が通り、キャラクター造形をワイルドに補強してくれるだろう。

早速、本作は「マーベル史上、最もバイオレンスなヴィラン誕生」と紹介されている。マーベル作品とバイオレンスの組み合わせは、「デアデビル」などのドラマシリーズを除けば手付かずの領域で、うまくいけば大人の観客に刺激的な鑑賞感を提供できる。それも、「ハードボイルド」「裏社会」「下劣」といった類の過激描写ではなく、「野生的」「直感的」「野蛮」といったトーンを成立させれば、『クレイヴン・ザ・ハンター』は唯一無二のアメコミ映画となりうる。例えるなら、「仮面ライダーアマゾン」的な特異性である。

予告編にはスパイダーマンの有名なヴィランであるライノもヴィランとして登場。『アメイジング・スパイダーマン2』(2014)ではロボットアーマーとして登場していたキャラクターだ。今回はよりコミックに忠実な、サイ人間として変態する設定になる模様。狩人 対 サイの討伐シーンが見せ場になりそうだ。

ソニー・ピクチャーズによる一連の『スパイダーマン』シリーズ作の中で、この映画がどのような立ち位置となるのかも気になるところ。ここではスパイダーマンに敵対する6人組のヴィランチーム「シニスター・シックス」の実写化が長年待望されており、これまでにヴェノム、モービウス、バルチャーが伏線として登場した。クレイヴンやライノも加われば既に5人が揃うことになり、いよいよ実現に王手がかかる。

ただし折りの悪いことに、MCUではアンチヒーロー・チームの集合映画『サンダーボルツ*』が2025年4月に公開予定となっている。この作品でさえDC『スーサイド・スクワッド』と比較されているのだから、本格始動させる際には時期や見せ方を慎重に見極める必要がある。

ソニーの『スパイダーマン』シリーズは『ヴェノム』にR指定描写を望む声も多く、スタジオにとっては満を持しての導入となった。果たして、『クレイヴン・ザ・ハンター』の過激な暴力は、ソニー・ピクチャーズのマーベル映画に新たな血を注ぐことができるか。スパイダーマン関連の示唆はいかほど期待ができるだろうか。『クレイヴン・ザ・ハンター』は2024年12月13日、日米同時公開。

The post first appeared on .