デッドスペースが減り、向かい合うドア同士がぶつかる心配もないなど、メリットも多い引き戸。介護リフォームを専門的に行う工務店に勤務するライターは、老後も快適に暮らせるよう、引き戸を多用した家を建てました。実際住んでみて、使い勝手のよさに満足したものの、じつは家づくり時にコンセントの位置で問題が発生。思ってもいなかった事態も起きています。詳しくレポート。

新しい家ではバリアフリーを意識して引き戸を多用

筆者は、妻と子ども2人の4人家族。2年前にハウスメーカーで、延床面積35坪の2階建ての家を建てました。

じつは筆者、高齢者向けの介護リフォームを、専門的に行う工務店に勤務しています。その経験も生かし、長く住み続けることができるように、バリアフリーを意識して家づくりを行い、「引き戸」を多用しました。

上の間取り図を見るとわかるように、玄関や勝手口、バルコニーなど外部の出入り口と、子ども部屋以外は、引き戸を採用しています。

外部の出入り口が開き戸になっているのには、理由があります。ハウスメーカーから気密性の問題で、引き戸にできないと言われたからです。また、子ども部屋は、間取りの関係で引き込むスペースがとれず、引き戸にできませんでした。

引き戸を採用した2つの理由

引き戸を多用した理由は2つあります。

1つ目は、引き戸にすることで、年をとってからも過ごしやすい、家づくりが可能だからです。引き戸は、開き戸と比べて開口部が広くとれます。ですから、車イスなどでも出入りがしやすくなります。

また、扉をあける際に上半身を、あまり動かさなくていいので、体が不自由になっても使いやすい扉です。

2つ目は、空間の有効活用です。

上はわが家の寝室です。6.8畳の部屋に、シングルベッド(100×195cm)を3つ並べて置いています。もし、内開きの開き戸だったら、ベッドに扉が当たっていたでしょう。しかし、引き戸にすることで、ベッドを3台置いても不自由なく、扉のあけ閉めができています。

もちろん、外開きの開き戸にしたら、問題ないという指摘があるかと思います。しかし、その場合は、扉同士がぶつかるリスクや、扉をあけた際に廊下を歩いている人にぶつかるリスクがあります。

そのような理由から、わが家では、引き込む壁が取れなかった子ども部屋以外は、すべて引き戸を採用しました。

間仕切りにもなり、あけておけば動線もスムーズ

上の写真は、1階LDKの引き渡し時の写真です。写真手前奥は、小学生の娘の勉強部屋兼、3歳の息子のオモチャ部屋として使っています。ここはつり下げ引き戸を採用しました。

普段は、かなり散らかっていますが、あけた状態でLDKと一体化して広々使用しています。そして、来客時には閉めて隠しています。引き戸が間仕切りとして使えていて、非常に便利です。

写真の右奥の2つの引き戸は、玄関からの動線と、洗面台所への動線。ここにも引き戸を採用。

開き戸と違い、引き戸はあけっ放しにしていても、扉がジャマに感じません。ですから、出入りが多いこれらの扉を引き戸にしたことで、家事動線がスムーズになったと感じています。

ちなみに、これらの引き戸は、閉まる直前にブレーキがかかり、ゆっくりと閉まるソフトクローズ機能がついたものを採用しました。「バタン!」と勢いよく扉を閉めがちな、小さな子どものいる家庭には、事故を防ぐうれしい機能です。

引き戸を多用したことで、コンセントの位置に苦心

空間の有効利用を考えたら、引き戸の方がよいと考えていました。しかし設計時、困ったことが起こりました。引き戸にすると、壁の有効利用ができなくなるというデメリットが。

家づくりで、コンセントやスイッチの位置を決めるのは、間取りが決まってからです。筆者が家を建てたセキスイハイムの場合は、インテリアコーディネーターさんが、内装や照明と一緒に、スイッチやコンセントの位置についても考えてくれました。

インテリアの打ち合わせで、「引き戸を多用しすぎると、スイッチやコンセントをつける位置が制限される」ということを指摘されました。

わが家の場合、この段階で着工日が決まっていたため、間取りから考え直すこともできませんでした。結局、取りつけられる場所が限られるなか、時間的にも余裕もなくコンセントやスイッチの位置を決めることに。

実際に住んで困ったことは、光がもれること

引き戸のデメリットとして、気密性の低さがあります。断熱性・気密性が低い住宅の場合、冷暖房効率に大きな影響がでます。しかし、この点は気密性の高い全館空調の家なので、問題になりませんでした。

しかし、気密性の低さからくる廊下の光もれや、音もれについては、気になっています。とくに寝室を暗くした際に、写真のように廊下からもれる明かりが気になり、夜9時以降は、2階の廊下の電気を消した状態で、生活することになってしまいました。

1階は引き戸、2階は開き戸がよかった

引き戸を多用した家に住んで実感したことは、わが家の場合、1階は引き戸を、2階は開き戸をメインにしたらよかったということです。

LDKや水回りなどの家族で共有するスペースについては、引き戸にした方が機能的です。しかし、子どもや寝室などのプライベートな部屋については、プライバシーを守ることのできる、開き戸の方がいいと感じています。

今はまだ、家族全員で同じ部屋に寝ているので、そこまで大きな問題はありません。しかし、子どもたちが自分の部屋で寝るようになり、生活リズムがバラバラになったときまでには、音もれや光もれの問題を解決する方法を、考えておく必要があると思っています。