食材の値上がりが年々続き、食費節約も難しくなっている時代。そういったなかでもやりくりは必要です。高齢者向けの3DK団地でひとり暮らしをしながら、節約生活をモットーにしている美術エッセイストの小笠原洋子さんが、この物価高騰時代において意識していることを教えてもらいました。

食材が高い…節約暮らしが物価高騰に思うこと

「あらぁ、キュウリもトマトも、すごーく高いわねぇ…」と店先で棒立ちになってしまいます。私がよく買っていたひと袋100円ほどの高野豆腐が150円になったとき、「いったいなにを食べればいいんだ!」と心で叫びました。

【写真】小笠原さんの夕食

好物が買えないほどの価格になると、気持ちが萎えます。オリーブオイルの値上がりもこたえました。プルーンはもはや見ないふりするしかありません。それでも卵の値上げは、今はやや落ち着いてきましたね。

スーパーなど売り手側も、世間をにぎわしている価格上昇した商品を、いかに安く抑えるかで販売競争をしているような気がします。それに、ほとんど値段の変わらない商品も、なくはないのです。それが納豆や豆腐。私の住む地域ではヨーグルト価格は上がっても牛乳は上がりませんでした。消費者側も、情報だけに惑わされず、冷静に市場調査する必要があるようです。

ニンジンが、3本ほどの束売りになりになっていますが、一本あたりが安くても、私は買いません。単身者が3本一度に押しつけられると、「今日もニンジン、明日もニンジン」となってしまうからです。保存できたとしても、まだ残っているということが気になってしまいます。また、たくさんあると、複数のレシピを考えながらほかの食材を買いたしたりしてしまいますし、下手したら腐らせることにもなります。これでは節約とは言えません。

買いだめは危険。把握できる量のみ買う節約のルール

このように、買いだめには危険が潜んでいます。安くなっているからとなんとなく多めに買うのは考えものです。じつは知らないうちに食べる量も増えているのです。私は、一週間分を買いに行ったときはしっかり量を把握できる四日分だけ買うことにしています。

たとえば、二日分を買うときは、一日分に一品だけ加え、それを2日目分の量とします。なぜこうするのかというと、多めに買って余らせることを防ぐためです。

一日目の食材で使ったお肉や野菜類は翌日にも余る場合も多いので、そこに加えて買った一品を加えれば、立派な二日目の料理ができるからです。

このように無駄を生まずに食費をまわすためには、翌日のメニューを決めておくことも大事です。当日になってから冷蔵庫に頭を突っ込み、あれこれ献立を決めようとすると、食べたいものだけになりがちで、さらに栄養面での偏りが起こりやすいからです。それより前日に、栄養を考慮して翌日のメニューを決め、メモしておくと便利です。

私は普段メモ用紙にしているレシートの裏に、メニューを書くことにしています。そして決まった場所にそれを置いておけば、翌朝寝ぼけていてもきちんと朝食が準備できる仕組みです。また昼食も、食材をあれこれ選別せずにそのメモを見れば素早く用意できます。

食事はシンプルにすると、より節約になる

メモ書きを朝食と昼食だけにしているのは、夕飯は書き出す必要のないほどごくシンプルだからです。残り物をひとつずつ豆皿にのせ、おつまみのように鼻歌混じりに食べる夕飯が好きです。食生活のメリハリ化ですね。

できれば、夏なら普段の食卓を離れ、ベランダや窓際の小卓で総菜を突っつくもの、遊び心があるではありませんか。お腹いっぱい食べることより、とくに単身者は生活を活性化するためにも、食生活を楽しむことが大事です。火を使わない食事を一回採ると、光熱費・水道料が軽減できます。なにより食後の片づけがラクで、ゆっくりくつろぐことができます。

食事を抜かないのも、節約には大切

朝昼を抜いたり、食べたくないときは食事をとらない、ということもしないように心がけています。食べないでいると、結局いつかは食べすぎてしまったり、、お菓子をだらだら食べ続ける原因にもなります。決まった時間に食事を採ることも、食の節約につながります。今日すべきことは、いやでも真っ先に片づけるように、一日の時間配分を習慣化させれば、体内時計をつくることができます。時計を見なくても、朝起きたら顔を洗うように、体が動いてくれるようになるのです。

とはいえ、無理な食費節約には注意が必要です。食費を削りすぎるのは、無理にダイエットをして体を壊してしまうのに似ています。節約生活を無理なく持続させるためには、自分の健康を考えながらも、楽しさを見つけていくのがベストです。私の場合は、野菜や果物の皮を食べられるか挑戦し、いかにフードロスを防ぐかをゲーム感覚で楽しんでいます。