ペットの柴犬の写真をX(旧Twitter)に投稿し続け、その自然体のかわいさが人気となっている@inu_10kg。ESSEonlineでは、飼い主で写真家の北田瑞絵さんが、「犬」と家族の日々をつづっていきます。第72回は「“彼”と久しぶりの散歩」についてです。

久しぶりに“彼”と再会!

inubot回覧板にたびたび登場している親戚のおうちの柴犬の“彼”。

初めて登場したときは0歳だった彼も青年の顔つきになってきて、立派にすくすくと育ってくれています。

彼のおばさんから母に連絡があって、7月ある日の夕方の散歩とごはん・翌朝の散歩とごはんを頼まれた。母が「私は忘れられてるかもしれへんから瑞絵も来て」と言うので、2人で行くことに。それならうちの犬の散歩も一緒にしようかとなって、軽トラに母と犬と私とで乗り込んで親戚宅に向かった。

いったん犬は軽トラに待機してもらい、私と母で彼のもとに行く。母の心配は杞憂であった。彼は私たちを見るなりフサフサのしっぽを大雨の日の自動車のワイパーくらい高速で振り始めた。彼は犬と真逆の性格をしていて、家にやってきた他人を歓迎できる子だ。

それでは2チームに分かれていざ散歩。一緒に散歩と言ってもただ同じコースを辿るだけで、離れて歩く。先に私が彼と歩き、その数メートルうしろを母と犬が歩いている。彼は友好的だが、犬はやはりほかの犬やほかの人とは触れ合えない性分である。

しかし簡単に他者との距離を詰められない柴犬も少なくない。柴犬特有の距離感を犬界隈では“柴距離”とも呼ぶ。警戒心と縄張り意識の強い柴犬の性格をよく表している。まぁマイペースでもあるので、はじめはふたりとも気にし合っていたが、ものの数十秒で各自散歩を楽しみ始めた。若々しい彼にリードを引っ張られ、その勢いの強さが懐かしかった。

久しぶりに犬以外との散歩だ。散歩の仕方がその犬によってこんなにも違うのかとおもしろかった。草むらのにおいを嗅ぐのにも個性が出る。

彼は気になる場所を見つければ、草むらにだってグイグイと分け入っていく。犬も一歩や二歩は入るが、歩道から嗅げる範囲ですませるのが通常なので、こうも果敢に突き進んでいく彼の背中は大きく見えた。

そして1か所のにおいを嗅ぐ時間もまた違う。彼はかなり丁寧に嗅いでいる。そういえばおばさんも「立ち止まったら長いねん」って言ってたような。

いつまでも嗅がせてあげていたいが、止まっていたら犬と母の距離が少しずつつまってくる。「ごめん〜、ちょっと進もか〜」とリードをくいくい引っ張ってみる…が、いやいや、びくともせえへん。めっちゃ力強い。

不動の彼をながめつつ、散歩中に犬が動かなくなるのはそこまでないのに気づいた。私が「そろそろ行こかー」と言えば「あいよー」と歩いてくれる。犬のほうが聞き分けがいいとかそんなん言いたいんちゃう。生活を積み重ねているうちに、“家族”になってくると、呼吸がそろったり、似てくるのだ。私と犬の呼吸が合い、また彼とおばさんの呼吸も合っているのだ。

そして犬もまったく動かないときもある。夕方の散歩から帰ってきても、家の中にまだ入りたくないときは頑なに動かない。犬と彼、頑固なところは似てるのかな。

散歩の折り返し地点から戻るときは、今度は母と犬のうしろを私たちがついていく。

となると、においチェックも急かさずにすむので「納得するまでどうぞ」と言えば、彼の目がきらりと光って見えた。気づけば日が沈んでいた。

そして迎えた次の日の朝

翌朝5時から母は農作業に出かけたので、私1人である。まずは犬と散歩に行ってから、今回は1人で親戚宅に向かった。「おはようさん」と彼の頭をなでれば、私の足を両手でホールドしてくれた。

昨日歩いた方向とは反対に向かって歩いてみよう。するとフェンスにたくさんの青い朝顔が咲いていて、あまりにキレイで立ち止まって見とれた。朝を迎え、開花している朝顔と、はつらつとした青年の彼が並んだ光景はまぶしかった。

朝顔の花は大丈夫だが、種子を犬が食べたら嘔吐や下痢になるらしい。時期によっては朝顔と近づくときにも注意が必要だ。

親戚宅に帰宅して、朝ごはんを食べるのをながめる。おかわりするほど食欲旺盛らしいが、あまり食べ進めない。隔たりなく接してくれているように感じても、やはり食事はおばさんとおじさんがいないとあかんのかな。なんて考えながらベンチに腰掛けたら、ススス…と私の足元に寄り添うように座ってくれた。

しばらくオモチャで遊んでいたが、落ち着いたのかウッドデッキの下に降りて行った。どこに行くんやろうと追いながら、おばさんが「自分の秘密基地を掘ってあるねん、また見たって」と言っていたのを思い出した。

影になるよう壁もしっかり立てられている。いったいどんな秘密基地なのだろうとワクワクしながら拝見させてもらおう。

彼の座っている窪みがちょうどいい深さと広さで掘られているのだ! 尻もちをつけるような穴って相当な広さである。加えて深さもあって快適そうだ。こんな穴を掘ってしまうとは、ほんまパワフルな子やよ。すごいな〜!! と両ほほを包んでなでる。

興奮冷めやらず、すごいすごい! と言いながら写真を撮っていたら、彼もなんだか「私が掘りました」とまるで職人のような表情を浮かべた。よい顔である。

彼も秘密基地ですっかり落ち着いたので、犬のもとに帰る。親戚宅に行ってきたあとの恒例行事、においチェックがはじまった。

たった今、掘った穴に収まる彼の写真を見ていて思い出した。そういえば昔、犬も庭に穴を掘ったことがあった。

写真の記録によると2015年1月18日、まだ0歳8か月だった。小さな小さな穴だったが、掘った穴を見せてくれた犬はやはりよい顔をしていた。