子どもの脳を育て、活性化させるためには、欠かせない存在である朝食。でも、朝の忙しい時間帯は、あまり時間をかけて調理するわけにもいきません。そこで、シンプルで手間はかからないけど、子どもの脳を育ててくれる料理や食材について、そして祖父母の立場から「孫」への関わり方について、脳科学者の黒川伊保子さんに教えてもらいました。

セロトニンを分泌させるには朝ごはんが大事

セロトニンの分泌は、日本の緯度だと9時台くらいまでの朝の光刺激によって加速します。朝日は、特別に緊張度の高い波動特性を持っていて、視神経を強く刺激するためです。

さて、せっかくセロトニンがアクセルを踏み込んでも、燃料不足じゃ、脳は動きません。車のアクセルを踏み込んでも、ガス欠じゃ動かないように、脳も動けないのです。ということで、朝ごはんは、思いのほか大事。自律神経の専門家で順天堂大学教授の小林弘幸先生は、「朝ごはんを食べないと自律神経が整わない。起きてから1時間以内に食べないと、朝ごはんとは言わない」ともおっしゃっています。自律神経は全身にいきわたる神経で体調を制御しており、脳の制御にも大きく関わっています。

朝ごはんではみそ汁が強い味方になる理由

朝ごはんで心がけたいのが、なんといっても、タンパク質。セロトニンをはじめとする脳内ホルモンの材料はトリプトファンと呼ばれるタンパク質で、これは体内ではつくれない必須アミノ酸。卵など、様々な動物性食品に含まれていますが、なんといっても、カツオやアゴ(トビウオ)、煮干しなどの動物性のだしの中に豊富に含まれていることは、日本人としては見逃せません。

これに大豆発酵食品であるみそを加えたみそ汁は、朝ごはんのヒーロー。大豆も脳や身体のために不可欠のタンパク質だし、セロトニンは腸でつくられて脳に届けられるので、発酵食品による腸活も、脳にはとても大事なのです。

おばあちゃんのみそ汁が孫を救う

前出の小林弘幸先生は、おみそ汁は自律神経にいいとして、おみそ汁の本を出すくらいに心酔していらっしゃる。私のラジオのゲストにいらしたとき、赤みそと白みそそれぞれに栄養素の組成が違って甲乙つけがたいので、合わせみそにするのがおすすめと教えてくれました。わが家では、以前から、信州みその赤白合わせ。私の個人的な感覚にすぎないけれど、赤と白のみそを合わせるとき、同じ地方の組み合わせのほうが、二つのみその味がなじんで一つになるような気がします。私が信州で生まれたからかもしれないけれど、信州みその赤白合わせは、味のバランスがよくて絶品です。

孫の生活習慣が整わなくて、どうにもやる気が起きないとき、あげく「学校に行きたくない」なんて言い出したとき、必要なのは小言じゃなくて、ひと手間かけた朝の一杯です。孫の両親が共働きで時間に余裕がなく、生活習慣が立て直せないときは、祖父母の出番。朝からしっかりだしを取って、赤白合わせみそで、おみそ汁をつくってあげましょう。離れて暮らしているのなら、手伝いに行ってあげてもいいし、可能なら孫を預かってもいいと思います。

「卵」は脳に必要な栄養素が取りそろう

わが家は、朝食に卵を食べることも心がけています。なぜなら、卵は完全脳食、脳に必要な栄養素がすべて取りそろう唯一の食材だから。身体に合わないという事態でなければ、一日一個と言わず、複数お食べください。

とくにおすすめは、朝食と夜食。だしパックを煮立てて熱々のだしをつくり、コップで混ぜた卵に注いで塩でととのえれば、受験生の脳に効く「必勝脳活スープ」のでき上がり。受験生の孫のために、ぜひつくってあげてください。

いじめなどの深刻な原因に心当たりがなく、なんとなく不登校になったというケースでは、規則正しい生活による自己肯定感の自噴が、その事態を救うことがけっこうあります。早起きをして、ちゃんとした朝ごはんを食べる。それだけのことですが、それが人間の基本なのだと思います。