座っている時間が長いライフスタイルは、運動不足を招くどころか人格にさえ悪影響を及ぼし、座っているくらいなら寝ていた方がましとまで言われています。そうは言っても、デスクワークやPCの使用などで座らないわけにはいかない現代人が健康リスクを最低限にするための運動量が、研究により判明しました。

Do the associations of daily steps with mortality and incident cardiovascular disease differ by sedentary time levels? A device-based cohort study | British Journal of Sports Medicine

https://bjsm.bmj.com/content/58/5/261

Scientists Reveal The Optimal Number of Daily Steps to Offset Sitting Down : ScienceAlert

https://www.sciencealert.com/scientists-reveal-the-optimal-number-of-daily-steps-to-offset-sitting-down

シドニー大学の健康科学者であるマシュー・アフマディ氏らの研究チームは、2024年3月に医学雑誌・British Journal of Sports Medicineで発表した論文で、座っている時間が長い人の運動量と健康の関係を調査しました。



分析には、UKバイオバンクに参加した参加者7万2174人の生活習慣と健康を平均6.9年間追跡したデータが用いられました。参加者の平均年齢は61.1歳で、追跡期間中に1633人が何らかの理由で亡くなりました。また、期間中に参加者らが経験した心血管疾患(CVD)は6190件でした。

各参加者には腕に装着する加速度計が配布され、1日24時間装着した状態で7日間の歩数や座っている時間が計測されました。平均して、参加者らは1日のうち10.6時間を座って過ごしたため、座る時間が10.5時間以上の人は「座位時間が長い」とみなされ、10.5時間未満の人は「座位時間が短い」とみなされました。

分析結果から、研究チームはまず座位時間が長い人は重大な健康問題に遭うリスクが高いことを確認しました。以下は、参加者の座位時間と、年齢と性別で調整した参加者の全死亡率(左)およびCVD発症リスク(右)の関係を示したグラフです。平均座位時間の10.5時間(赤線の丸印)を越えると、健康リスクが極端に増加していました。



一方、1日の歩数が2200歩を越えると、座位時間の長短にかかわらず死亡率とCVD発症リスクが低下し始め、毎日9000〜1万歩歩くとCVDの発症リスクは2200歩しか歩いていない人に比べて21%低下し、死亡リスクは39%低下することが判明しました。また、1日当たり約4000〜4500歩で効果の50%が現れることもわかりました。

以下がそのグラフで、左が全死亡率、右がCVD発症リスクのもの。縦軸がリスク、横軸が歩数で、青線が座位時間が長いグループ、点線が短いグループを表しています。座位時間が短い人の方が概してリスクが低くなりましたが、いずれのグループも1日約1万歩歩くとリスクが低減されました。



死亡率の場合、座位時間が長い人のリスクが最も低くなるのは「1日9000歩」でリスク低下率は39%、座位時間が短い人のリスクの最低点は「1日1万300歩」で、リスク低下率は31%でした。



CVDの場合、座位時間が長い人のリスクの最低点は「1日9700歩」で低下率は21%、座位時間が短い人は「1日9800歩」で低下率は29%でした。



アフマディ氏は、「この研究結果は、長時間座りっぱなしでもいいという免罪符にはなりません。しかし、日々の歩数を増やすことで、どうしても座りっぱなしになりがちな生活習慣による健康への影響を相殺できるという知見と、そうすべきだという重要な公衆衛生上のメッセージにはなります」と話しました。

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