萩原聖人さんとウルトラマンアーク 撮影/山本一人 (C)円谷プロ (C)ウルトラマンアーク製作委員会・テレビ東京

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『ウルトラマンアーク』第3話では、主人公・飛世ユウマの過去と、ウルトラマンアークとしての最初の戦いが描かれた。第3話のキーパーソンが、ユウマの座右の銘となる「走れ! ユウマ!」の言葉を遺した彼の父・飛世テツヤと、ユウマと一体化してウルトラマンアークとなる光の使者・ルティオン。

テツヤ役として出演し、ウルトラマンアークとルティオンの声を演じるのが、萩原聖人さん。テツヤとアークはなぜ同じ声なのか、その謎は今後の物語で明らかになるとのことなので、注目したいところだ。

今回は萩原さんにインタビューを敢行。ウルトラマンシリーズの玩具の思い出から、アークのアフレコの裏話、テツヤのセリフに込めた想いなど語っていただいた。

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◆思い出のウルトラ怪獣玩具たち◆

――出演のお話を聞いた感想を教えてください。

萩原 率直にビックリしましたね。まさかこのようなお仕事をやらせてもらえるチャンスがあるとは思っていなかったので。この歳になってウルトラマンの仕事にチャレンジさせてもらえるなんて、夢みたいじゃないですか。本当に嬉しかったです。

――ウルトラマンシリーズの思い出をお聞かせください。

萩原 僕はニュージェネ(※2013年放送『ウルトラマンギンガ』に始まるニュージェネレーションウルトラマンシリーズの略称)はほとんど知らなくて。『ウルトラマンレオ』までは観ていた、完全な昭和世代なんです。思い出と聞かれるとたくさんありすぎて……。一つひとつのエピソードや、あの怪獣がカッコいいとか、いっぱい出てきます。モロボシ・ダンはよくウルトラアイを失くすなぁ、とか(笑)。あとどの作品もトラウマ回というか、ショックを受ける回がありますよね。『帰ってきたウルトラマン』ならブラックキングとナックル星人の回とか、『ウルトラマンA』のヒッポリト星人の回とか、『ウルトラマンタロウ』だったらバードンの回とか。子どもの頃に観たものが、50歳を過ぎた今でも忘れないでずっと残っています。

――集めていた玩具などはありますか?

萩原 僕は怪獣が好きだったので、キングザウルスシリーズのソフビをめちゃくちゃ欲しがっていて、何体か持っていた思い出が残っています。なんというシリーズかはわからないのですが、ちょっとデフォルメされた、結構マニアックなウルトラ怪獣を出しているソフビもたくさん持っていました。HGシリーズも集めていましたし、「少年リック」さんのものも、気に入った玩具は買うようにしていましたね。

――結構いろいろとコレクションされているんですね。

萩原 収集癖があるんです。一時期は『ONE PIECE』のフィギュアとかをたくさん集めていました。あとは「ウルトラ怪獣名鑑」! 値段はそんなに高くないのに、作品のワンシーンを再現した、クオリティがメチャクチャ高い小さめのフィギュアと、サブタイトルが書かれた台座があって。あれは本当に素晴らしいです。

――かなり夢中になって集めていたんですね(笑)。ちなみに、ウルトラ怪獣の中で特に好きな怪獣は?

萩原 それこそいっぱいいますよ。単純にフォルムが好きなのはシーボーズだし、カッコいい怪獣だとアントラーだし。斬新で怪獣っぽくなくてカッコいいと感じるのは、超獣です(※『ウルトラマンA』などに登場する改造生物)。最近フィギュアとかでも、いろいろと超獣が出ているじゃないですか。マニアックな超獣もいて、キリがなくてなかなか手は出せないんですが、「あの超獣がこんなふうに造形されているんだ!」とメチャクチャ欲しくなりますね。

(C)円谷プロ (C)ウルトラマンアーク製作委員会・テレビ東京

◆怖さを感じたアークの目つき◆

――ウルトラマンアークのビジュアルを見た印象はいかがですか?

萩原 カッコいいですけど、何かちょっと怖いなと思いました。見透かされているような恐怖感を抱きましたね。その人が持つ本質みたいなものを見抜く目つきなんですよ、アークって。

――実際、かなりツリ目ですしね。

萩原 そうなんですよ。そういう怖さが、いい抑止力になるんじゃないかなって。僕は、優しさが人をダメにすることもあるといつも考えていて。優しいだけでは、人は決して良くならない。その裏側に厳しさや強さがなければ優しさにつながらないし、逆に優しくなければ強くもなれないと。アークの表情には、そんな僕の考えと通じるものも感じました。

――アークの声を演じる際に、辻本貴則監督とはどんな相談をしましたか?

萩原 とにかく昭和ウルトラマンの匂いをしっかりオマージュしたい、とこだわっていました。一番印象に残ったことは、昭和(ショウワ)とかけて「シュワッチ」を「ショワッチ」にしたいと言っていたこと。ただのダジャレで、「本気か?」と思いました(笑)。もちろんふざけているわけではなかったし、よく聴けば「ショワッチ」に聴こえる、くらいになっているんですが。あと、ウルトラマン風やセブン風、ジャック風、エース風、タロウ風、レオ風と、昭和ウルトラマンを意識した声も収録しました。

――なかなか演じ分けが難しそうです。

萩原 もうね、監督のこだわりがすごいんです(笑)。それぞれのウルトラマンのことに詳しくて、監督からのディレクションにはとても助けられました。僕と監督の世代が近いこともあって共感しやすかったし、ウルトラマンシリーズをどう観てきたかというのも、結構近かったんです。「レオ風で」と言われて伝わらない人もいると思うんですが、僕の場合はスッとイメージできたし、監督の狙いみたいなものもなんとなく入ってきた。かなり楽しくやらせてもらいましたね。

――戦闘シーンをご覧になった感想も伺えればと。アークは昭和ウルトラマン的な挙動が放送前から話題になっていましたが。

萩原 こう言うと怒られちゃうかもしれませんが、動きにどこか野暮ったさがありますよね(笑)。あの野暮ったい動きが昭和らしいというか魅力の一つで、僕的にはたまらなくツボです。新しいことをやる斬新さもありつつ、昭和世代としては違和感なく見られました。きっと監督も、昭和ウルトラマンを知らない世代に向けて、あの頃の良かったものを体感してほしいという想いが、絶対にあると思います。そういう温故知新な面白さを感じましたね。それに、いまハリウッドでやっているようなCGで表現するゴジラとは違う、スーツで表現された生き物の面白さ、昔ながらのウルトラマンシリーズの世界を守り続けているなと思いました。エフェクトとかいろいろなものが進化しても、スーツのウルトラマンと怪獣が戦う構図は、何十年経っても変わらない気がしました。

――飛世テツヤ役として出演した第3話の撮影で、記憶に残っていることはありますか?

萩原 現場に瓦礫がたくさんあったり、「あそこにこんな怪獣がいます」と言われたり、ウルトラマンの撮影現場はこうなんだなと、何だか感慨深かったです。僕もいろいろな仕事をさせていただきましたが、怪獣から逃げて子どもを守るなんて、初めてに近い経験でしたから。シーンとしてはすごくシビアで、「走れ! ユウマ!」という、後々ユウマが何かあったときに思い出す言葉があったので、それが印象に残るものになれば、と考えていました。ユウマに対してどう思っているかは深く描かれていない分、ある意味で全国の父親が持つ、普遍的な息子に対する想いを集約したというか。

――父親代表みたいな心持ちで演じた?

萩原 みんな自分より息子を守ると思いますしね、ああなったら。結末は最悪なことになってしまいましたけど、世の中って全てが上手くいくわけでもないですよね。そんな思い通りにならないことが多い世の中で、どう生きるかという話になるわけで。ウルトラマンシリーズは、たくさんの幼少世代の子が観ると思うので、そんな子たちがただウルトラマンがカッコいい、強いという印象から変わって、前向きにいろいろなことが考えられる。「走れ! ユウマ!」の言葉が、その一つのヒントのようになっていたなら、俳優というお仕事をやらせてもらっている甲斐がありますね。

※辻本貴則監督の「辻」は「一点しんにょう」が正しい表記。
(C)円谷プロ (C)ウルトラマンアーク製作委員会・テレビ東京