老後の収入を月3万円増やしたいのですが、どれくらい「受給を遅らせる」と3万円増やせますか?
もらえる年金の金額はどのくらい?
公的年金には老齢基礎年金と老齢厚生年金の2種類があり、令和6年度の年金額は図表1のとおりです。
【図表1】
※夫婦2人分の標準的な年金額(老齢基礎年金の受給額を含む
※日本年金機構「令和6年4月分からの年金額等について」より筆者作成
老齢基礎年金は、受給資格期間(保険料納付済期間と保険料免除期間などの合算期間)が10年以上ある場合に受け取れ、40年間納付された方は満額の6万8000円を受け取れます。
老齢基礎年金の受給権があり、かつ厚生年金の加入期間がある人は、老齢基礎年金に加えて老齢厚生年金の受け取りが可能です。ただし、老齢厚生年金は一律ではなく、厚生年金に加入していた期間や報酬額によって決まるため、受給額に個人差があります。
繰下げ受給で増額した年金を受け取れる
年金を受け取れる年齢は原則として65歳からですが、66歳以降75歳までに繰下げれば1ヶ月につき0.7%の増額率が適用します。「0.7%×繰下げ期間」に応じて増額率が決まり、一度適用されたら生涯にわたって変更されません。老齢基礎年金と老齢厚生年金のそれぞれの受給権を有している場合は、どちらか一方のみを繰下げて受け取ることも可能です。
増額率は図表2のとおりで、75歳まで繰下げた場合は84.0%まで年金額を増やせます。
【図表2】
※日本年金機構「年金の繰下げ受給」より筆者作成
繰下げ受給で年金額を月3万円増やす方法
繰下げ受給によって、老齢基礎年金額を3万円増やすことを想定してみましょう。老齢基礎年金の受給月額が満額で6万8000円の場合は、70歳3ヶ月まで繰下げる必要があります。
・70歳3ヶ月:2万9988円(増額率:44.1%)
・70歳4ヶ月:3万464円(増額率:44.8%)
繰下げ受給による老齢基礎年金の受給月額は、70歳3ヶ月からだと9万7988円、70歳4ヶ月からだと9万8464円です。65歳で年金を受け取らず70歳まで生活費を確保できれば、老後の備えをより手厚くできるでしょう。
なお、老齢厚生を繰下げた場合の増額率は、老齢基礎年金と同じです。それぞれを繰下げればさらに年金月額を増やしてゆとりのある生活を期待できます。
繰下げ受給以外に年金受給額を増やす方法
繰下げ受給は、自動的に年金を増やせる方法ですが、寿命や健康状態を考慮したら必ずしもベストの選択になるとはかぎりません。せっかく繰下げたものの、繰下げ待機期間内に自分が死亡することも想定できます。繰下げ受給だけに頼らず、別の方法で年金受給額を増やすことも考えておくとよいでしょう。
繰下げ受給以外に年金受給額を増やす方法の一例は、以下のとおりです。
・国民年金保険料の追納:保険料の免除や納付猶予・学生納付特例の承認を受けた期間がある人が対象。追納によって保険料を全額納付した状態に近づけられる
・付加年金:国民年金第1号被保険者や任意加入被保険者が対象。定額保険料に月額400円の保険料を納付することで老齢基礎年金を増やせる
・任意加入制度の利用:60歳までに老齢基礎年金の受給資格を満たしていない場合や、満額受給できない場合などで年金額の増額を希望するときは、60歳以降でも国民年金に任意加入することができる
・iDecoで運用:掛金を拠出して、自分で運用・資産形成を行う制度
寿命や健康状態を考慮したうえで年金の受取開始時期を判断しよう
毎月の年金額を増やしたい場合、年金の繰下げ受給を選べば受取開始時期を遅らせた分だけ一定の増額率が適用されます。ただし、健康状態がよくない状況で繰下げ受給をしても、待機期間中に死亡することも考えられるでしょう。
繰下げ受給はあくまでも、年金額を増やす方法の一つであると考えておくとよいかもしれません。その他に追納制度の利用、付加保険料を納付、任意加入制度の利用、iDecoで運用といった方法で、年金額を増やすことも考えてみてください。
出典
日本年金機構 令和6年4月分からの年金額等について
日本年金機構 老齢厚生年金の受給要件・支給開始時期・年金額
日本年金機構 年金の繰下げ受給
日本年金機構 国民年金保険料の追納制度
日本年金機構 付加保険料の納付
日本年金機構 任意加入制度
国民年金基金連合会 iDeCo公式サイト iDeCoってなに? iDeCoの特徴
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー