田村被告と田村

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 2023年7月に札幌市の繁華街ススキノのホテルで男性会社員(当時62)の頭部を切断された遺体が見つかり、親子3人が逮捕された事件。死体遺棄ほう助と死体損壊ほう助の罪に問われている母親の無職・田村浩子被告(61)の第2回公判が、7月1日に札幌地裁(渡辺史朗裁判長)で開かれた。

【写真】「30年前」の田村修被告。他、瑠奈被告が飲んでいたとされる“目玉テキーラ”など

 第2回公判には、父親の精神科医・田村修被告(60)も弁護側の証人として出廷した。修被告自身は殺人ほう助罪などで起訴されており、公判開始時期は現時点で未定だ。

 修被告の調書では、事件に至るまでの詳しい経緯が明かされた。殺人や死体損壊などの罪に問われている娘の無職・田村瑠奈被告(30)は、初めて行ったナイトクラブで被害男性と知り合ったという。方向音痴の娘を心配し、現地まで送り届けた修被告。店内で娘と意気投合した相手が女装した男性であることに気づき、驚きつつも、“カラオケに行く”という2人を見送った。父親が待っていることがわかれば、「乱暴されることはない」と思っていたという。

 しかし、戻ってきた瑠奈被告は、「カラオケに行くと思っていたらホテルで、休憩すると思っていたら性行為を求められた」と主張。被害男性が避妊なく行為していたことに憤っていたという。

 そんなトラブルがあったにもかかわらず、被害男性と瑠奈被告は和解し、再び会うことに。父母は「娘に会わせたくない」と気を揉み、浩子被告は「お嬢さんに手を出したらえらい目にあうぞ」と暴力団を装い、被害男性に電話をかけるといった計画を立てるほどだった。さすがに現実離れしたシナリオではないかと考えた修被告は、結局、被害男性に電話で真正面から思いを伝えることにしたという。修被告の供述調書では、以下のようにその経緯が語られていた。

「6月30日に何回か電話しましたが、出ませんでした。7月1日14時頃に電話が繋がり、『この番号をどうやって知ったのか』と聞かれました。電話番号は娘から聞いていましたが、親が電話をしたとわかると、(娘が)半人前扱いされたと感じ、プライドを傷つけてしまうかもしれないと考えて、あくまで“関係者”にしようと、『(瑠奈被告の)関係者です。最初の出会いに大変ショックを受けているので、傷つけるなら会ってほしくはありません』と伝えました。

(相手に)『どうされますか?』と聞いたら、『会いに行きます』と答えました。『約束を守ってくださいよ。会ってほしくないと思っていることを理解してください』と伝えたら、『わかりました』と神妙な声で言っていました。相手に釘を刺したことを妻にLINEで告げて、『あとはあいつ次第だ』と思っていました。しかし不安が払拭できず、もう一度連絡しようと自宅近くの公衆電話からまた電話しましたが、繋がりませんでした」

ボディラインを強調

 娘の瑠奈被告にも「会うのはやめたほうがいいんじゃないか」と伝えたが、本人は「大丈夫」と言い張った。娘の意思を尊重し、無理やり止めるようなことはしなかったという。

 そして7月1日20時〜21時頃、瑠奈被告は被害男性に再び会うために家を出た。送迎のため自動車で待機していた修被告の前に現れた瑠奈被告は、ボディラインを強調するような服装に身を包み、スーツケースという大荷物だったという。

「玄関から出てきて後部座席に座った娘は、ボディライン、特に胸の谷間が強調された黒いSMの女王様風の服装の上に1枚羽織った格好でした。荷物は大きめの黒いスーツケース1台に、財布やスマホが入るボディバッグを持っていました。私はそのケースにSM道具が入っているのだと思っていました」(同前)

 女王様コスプレをした瑠奈被告は「大丈夫。3時間くらいで戻ってくる」と言い残して、車を降りてススキノのナイトクラブへと歩いて行った。娘を見送った修被告は、職場に行って仕事をこなした後、深夜1時頃に娘を下ろした場所へ戻った。1時間以上遅れてやってきた娘は、初めと服装が大きく異なっていた。

「(瑠奈被告は)暗めのハットを被り、水色の上着から黒い上着になり、黒いショートのウィッグから金髪の長髪ウィッグになっていました。小ぶりの手提げバッグも増えていたので、『荷物が増えてるけど、どうしたの?』と聞くと、『拾った』と言われました。『服は?』と聞くと、『着替えを持ってたから着替えた』と言われました。その他の会話はありません。

 自宅に着く直前、娘から『コンビニでパーティ用の氷袋を買ってきて』と言われて、1キロくらいの氷袋をいくつか買いました。何袋買ったかは数えておらず、何に使うかは聞きませんでした」(修被告の供述調書より)

 自宅に着いた瑠奈被告は、スーツケースを開けて、中から黒いビニール袋を取り出した。

「下のほうが小ぶりのスイカのような形状をしていたので、『それは何?』と聞くと、娘は『首』と答え、少ししてから『拾った』と言いました。

 娘は洗面所と浴室の電気をつけて、衣装ケースに黒いビニール袋を入れました。浴室でケースの中に少量の水を入れて、『氷ちょうだい』と言われたので2つ手渡しました。(娘は)何か作業していましたが、私はびっくりして頭が真っ白になっていました。娘がそんな冗談を言うわけがないので、首なら被害男性の首だと思いました」(同前)

 この夜を境に、田村夫婦の地獄の日々が始まった──。

◆取材/高橋ユキ(ジャーナリスト)