6月2週目、マイアミで開催されていたグロッシーeコマースサミット(Glossy’s E-Commerce Summit)では、ステージ上とワーキンググループの両方で、美容ファッションブランドのリーダーたちが直面しているビジネス上の課題と、効果的であることが証明されている戦略について深く話し合っている。

1日目は、エグゼクティブたちがオーガニックコンテンツとブランド開発コンテンツの価値について語った。

以下に、その要約を示す。

主役はオーガニックコンテンツ



グロッシーeコマースサミットに参加しているマーケターにとって、オーガニックコンテンツは依然として最高の存在だ。Google、メタ(Meta)、TikTokなどのプラットフォームを通じた有料広告の価格が上昇し続けるなか、ブランドのリーダーは米グロッシーに、オーガニックコンテンツにフォーカスすることは費用を抑えられるだけでなく、よりよい結果につながると語った。

「ソーシャルメディア上で、有料広告をアルゴリズムに追いつかせることは不可能だ」と、美容インキュベーターのマエサ(Maesa)で最高ブランドおよびマーケティング責任者を務めるオシヤ・サブール氏は述べた。

「我々は皆、オーガニックコンテンツのほうがパフォーマンスがよいことを知っている。オーガニックコンテンツでPV数15万を達成したこともある。有料メディアでこれほど多くのPV数を獲得するには、いくら必要になることか。しかも、オーガニックのほうが共感を得られるので、PVの質も同じではない」。

しかし、オーガニックコンテンツにフォーカスすることは、世の中のあらゆる雑音と競い合うことでもある。TikTokだけでも毎日3400万本の新しい動画が投稿されている。オーガニックコンテンツが注目されるには苛烈な戦いに勝たなくてはならず、ブランドは人気が出るコンテンツと出ないコンテンツを常に予測できるわけではない。

アパレルブランドのH&Mでアメリカ大陸デジタル部門責任者を務めるジェン・ヴォルク氏は、クリエイターやインフルエンサーはオーガニックコンテンツにオーディエンスを引きつけることで、ブランドに大きく貢献していると語った。同氏によると、H&Mはインフルエンサーに商品やテーマを提供するときはサイトや店頭にも反映し、コンテンツが人気を集めたらすぐに商品を販売できるようにしているとのことだ。

「ブランドが直面する最大の課題のひとつが、雑音を切り抜けることだ」とヴォルク氏は述べた。「今はコミュニケーションチャネルが多くなりすぎていて、適切な顧客を見つけてメッセージを共鳴させることが困難になっている」という。

美容ブランドのメリット(Merit)のCMOであるアイラ・モーリン氏は、バイラリティーの追求は必ずしもよいことではないと述べた。TikTokで商品に火がつくと、過剰に手を広げて発注を増やしすぎたり、利益を得るためにサプライチェーンを変更したりする衝動に駆られるかもしれない。

しかし、バイラリティーは現れたときと同じくらいすぐに消えてしまう可能性がある。

「バイラルなコンテンツは信じているが、バイラルな製品は信じていない」とモーリン氏は語った。「バイラルな製品はサプライチェーンにとって危険だ。TikTokでのバイラルな製品のピークは非常に短いうえに、さらにどんどん短くなってきている」と話す。

しかし同氏は、トレンドやバイラルな瞬間に飛びつくことは、適度であれば依然として必要な要素であると付け加えた。

「それでも、ある程度はバイラリティーを予測できる」と同氏はいう。「当社は顧客と非常に近いので、何が心を動かし、スクロールする手を止めるのかを知っている。だから、そういうものを見つけたら、それを利用する。マーケティングの80%は安全な賭けで、20%は、チャンスが来たら飛びつくことだ。安全な賭けばかりして飛びつかないのは、学びがないといえる」。

垂直統合型マーケティングに価値はあるか



マーケティングチャネルの雑音を切り抜ける戦略に関するセッションで、マエサの最高ブランドおよびマーケティング責任者であるオシヤ・サブール氏は、すべてのマーケティングを社内で開発する利点について語った。

マエサは、ヘアケアブランドのクリスティンエスヘア(Kristin Ess Hair)、ヘアリテージ・バイ・ミンディ(Hairitage by Mindy)、フレグランスブランドのビーイングフレンチー(Being Frenshe)、ファインリー(Fine'ry)などを擁する美容インキュベーターだ。

「当社には、ブランド間で共有されているクリエイティブスタジオがある」と同氏は述べた。「クリエイティブスタジオは、すべてを行う社内エージェンシーだ。外部のエージェンシーは介入しない。これは本当に素晴らしいことで、そのおかげで迅速に行動し、仕事の質を高めることができる」という。

「クリエイティブスタジオの従業員のなかには、20〜25年もの長期にわたって在籍している人もいる。そこには、今までの積み重ねでしか得られない、つまりお金では買えない本質的な直感が存在している。だから、何がうまくいくかがわかるのだ」。

グロッシーポッドキャストの4月のエピソードでは、グロッシーサミットで講演するシューズブランドのラルーデ(Larroudé)の創業者であるリカルド・ラルーデ氏が、垂直統合型マーケティングの価値について同様の考えを示した。

「当社には社内エージェンシーがある。ブラジルにいる9〜10人のチームで、写真スタジオで画像を処理することに専念している」と同氏は述べた。

「米国で写真や動画を撮影したとしても、ブラジルに送って処理、編集してもらう。ラルーデが提供するすべてのコンテンツはブラジルで、靴を作っているビルと同じビルで作っている。これらが密接につながっているおかげで朝にデザインのアイデアが浮かぶと、昼過ぎに靴が完成し、午後に撮影して夜にはウェブサイトで予約販売ができる。こんなスピードで仕事をしてきたのだ」。

しかし、同じく4月に開催されたグロッシービューティーリーダーディナー(Glossy Beauty Leaders Dinner)で、独立系美容ブランドの創業者が社内にクリエイティブスタジオを設立するために投資すべきかどうかとほかの参加者に尋ねたところ、圧倒的に反対された。反対の理由は、主にフルタイムのクリエイティブチームを構築するために必要なコストによるものだった。

「それはケースバイケースで、一概にはいえない」と、サブール氏は述べた。「マエサの場合、プライベートラベルの会社としてスタートしたため、スタジオを持つことにした。現在も大規模なプライベートラベル事業を営んでいる。ある時期にはデザインと製造だけを手がけていた。そういう会社だった」。

「何年も経ち、自社ブランド事業が実際に発展するにしたがい、25年にわたって磨きをかけてきたプライベートラベルのスキルは大きな資産となった。当社のブランドの美学は我々が思い描いたもので、デザインはすべて我々のものだ。誰も奪うことはできない。これは、特に品揃えが退屈で革新性に欠けることが多いマスマーケットで競争上有利に働く」と話している。

[原文:Brands are refocusing on organic content]

DANNY PARISI、JILL MANOFF(翻訳:ジェスコーポレーション 編集:坂本凪沙)