創業から130年近くの歴史を誇るアウターブランドのフィルソン(Filson)は、中古品がいくつかのリセール市場で数千ドルで取引されているのを目の当たりにしてきた。同ブランドのクルーザージャケットのなかには、小売価格の2倍の値が付けられているものもある。フィルソンの戦略責任者であるニール・モーガン氏によると、同ブランドの商品はイーベイ(eBay)やポッシュマーク(Poshmark)などサードパーティのリセールプラットフォームで500万ドル(約7億8500万円)以上の売上を記録しているという。

それが、フィルソンが昨年12月に自社ウェブサイト上で中古品のリセールプラットフォーム「フィルソンアンフェイリング(Filson Unfailing)」をローンチした理由のひとつだ。顧客は中古品をオンラインまたは店頭で古着を下取りに出し、現金またはクレジットを受け取ることができる。また、中古品購入者はその商品に付属する生涯保証も引き継ぎ可能だ。

「我々がその市場を作れば商機が増えるし、中古品も当社の手のなかに留めることができる」。

急速に成長しているリセール市場



どうやらリセール市場は好調のようだ。広く引用されているスレッドアップ(ThredUp)による「リセールレポート(Resale Report)」では、世界の中古アパレル市場はアパレル市場全体の3倍の速さで成長すると予想されている。ただし米国に限ると、その成長は予想よりも鈍化するとの予測もある。

市場調査会社であるイーマーケター(eMarketer)によると、今年のオンラインリセールの収益は800億ドル(約12兆5600億円)を超えるという。以前の予測よりも80億ドル(約1兆2560億円)低くなっているが、その理由は需要の弱まりにある。今後、2027年までには910億ドル(約14兆2900億円)にまで達すると予想されている。

ブランドにとってはほかにも優先事項があるなかで、独自のオンラインリセールプラットフォームを構築する価値があるかどうかが問題になる。リセールソフトウェアプラットフォームのリキュレート(Recurate)共同創業者兼CEOを務めるウィルソン・グリフィン氏は、結局のところブランドがそれにより利益を挙げられるかどうかに帰着すると語った。

「もしも自社商品の中古品リセールからうまく利益を得られるモデルを作ることができれば、ブランドの考え方は完全に変わる。中古品をリセールすることで実際に利益が得られるのだから、ある日突然ブランドはリセールへの参加を人々に奨励するようになり、品質と耐久性にさらなる投資をするようになる」。

以下では、ブランドがリセールに参入する際に直面するメリットとデメリットについて説明する。

メリット:リユースと循環型社会の促進



アパレルブランドのエムエムラフルアー(M.M.LaFleur)は、約4年前に「セカンドアクト(Second Act)」というピアツーピア型のリセールサービスをローンチし、現在も高い収益性を保ちながら運営している。これまでに1万6500件の注文があり、2万5000点以上の商品を売り上げた。創業者兼CEOのサラ・ラフルアー氏は米モダンリテールの取材に対し、ブランドの設立当初からリセールをオンライン事業の一部にすることを構想していたと語った。

「歳を重ねれば体のサイズや体型は変わるだろう。買ったものが永遠に使えるという考えは夢物語である」。

リセールプラットフォームのアーカイブ(Archive)を利用してリセールプログラムを運営している同社は、最近になって返品された商品や要修理品を追加することでセカンドアクトの在庫を拡大させた。これは総在庫の1.5%にもおよぶ。同社は昨秋から現在までに3176点の商品を修理に出している。そのうちの約94%が出品可能となり、これまでに1300点以上が売れた。

「修理・再生プログラムのおかげで在庫が本当に増えた。良い商品なのだから、なんとしてでも新たな持ち主の手に渡るべきだ」とラフルアー氏は続けた。

リキュレートのグリフィン氏は、中古品の販売がブランドにとって当たり前になれば、新商品を生み出す必要性が減るかもしれないと話す。そうなれば材料の使用量や排出量が減り、社内外のサステナビリティ・ベンチマークをクリアする助けとなる。スレッドアップのレポートによると、リセール品を提供している小売業者のエグゼクティブの45%が、リセールはESG目標に対する投資家の懸念を払拭するのに役立っていると回答している。

「当社の役割はブランドが独自のリセールプログラムを立ち上げるためのツールを作成することだ。ブランドはリセールプログラムからの恩恵を受けて、時間の経過とともにビジネスのやり方を変えていく」。

デメリット:新品の売り上げや収益性と「共食い」してしまうという懸念



ブランドによっては、顧客が新品の代わりに中古品を購入することを懸念してリセールに乗り気ではない場合もある。スレッドと調査会社グローバルデータ(GlobalData)の共同調査によると、小売業者の半数近くが、リセールが長期的な成長をもたらすとしても「短期的には売り上げを奪い合う可能性がある」と答えているという。

リキュレートのグリフィン氏は同社のデータはその懸念を裏付けていないと述べ、「ブランドのリセールで中古品を購入する顧客は、そうしないのであれば、ポッシュマークかデポップ(DePop)、それかイーベイで買っていたはずだ」と指摘した。

リセールオペレーターのトローブ(Trove)でCEOを務めるゲイル・テイト氏は、同じような懸念を頻繁に耳にすると語った。「私の答えはこうだ。あなたのビジネスの中心部はすでに、あなたのサイト以外の中古品販売サイトに食われている」。

それでも多くのブランドは、このトレンドから距離を置く一部のラグジュアリーブランドと同様に、自社リセールにまだ価値を見いだしていない。また、リセールの開始を決断したブランドのなかにも、利益が上げられていないブランドが存在する。

メリット:ブランドや市場に応じたカスタマイズが可能



リセールへの参入を決めた場合、選択できるモデルは複数ある。ユーザーが写真を撮って出品リストを作成し、商品を直接消費者に発送する「ピアツーピア型マーケットプレイス」を選択するブランドもあれば、フィルソンのように、商品をブランドに送ってもらい、検査や修理、認証を行ってからプラットフォームに出品するという「下取りスタイルのプログラム」を選択するブランドもある。また、ファッションブランドのジェイクルー(J.Crew)やトムス(Toms)のように、スレッドアップに料金を支払って、自社サイト上でホワイトレーベル版のサービスを運営しているブランドもある。

アーカイブのCEOであるエミリー・ギッティンズ氏は、ブランドは自社に適したモデルを選ぶことで小規模なスタートも可能だと話す。「まずはアパレルなど1つの商品カテゴリーを選択し、アクセサリーなどほかのカテゴリーは除外することもできる。リセールモデルや商品カテゴリーを徐々に追加したり、新しい市場に拡大していったりすることで、プログラム規模を拡大していくのだ」。

フィルソンと提携しているトローブのテイト氏は、各ブランドそれぞれの目標を理解することをめざしているという。たとえば正確で競争力のある価格体系を構築し、ビンテージ品やアーカイブ品も視野に入れることも含まれる。「非常に価値の高い商品があるのならば、それに応じた対応をしたい」。

デメリット:運用するプログラムの増加



テイト氏が聞いたところによると、ブランドがリセールへの参入をためらう最大の理由のひとつは、人員のキャパシティとプロジェクトに費やせる時間や労力の限界にある。ブランドは新しいウェブサイトやロイヤルティプログラム、卸売の拡大などをなんとかやりくりしているところかもしれず、そこに新しい販売カテゴリーを追加することには抵抗を覚えるかもしれない。

「ビジネスが難航しているときは、自分たちが慣れ親しんでいるところに戻る傾向がある」とテイト氏は語った。

エムエムラフルアーのラフルアー氏は、同社が2017年にリセールを開始しようとしたときは効率的な在庫計画が見出せなかったためうまくいかなかったと語った。「現実的に考えるとあまりにも大きな挑戦だった」ため、結果としてアーカイブのクライアントになったのだという。

リセールチャネルへの参入はしばしばその運用のための新しいベンダーを雇う必要が生じることを意味し、ブランドがほかのビジネスにおける意思決定を優先している場合、その支出が足かせになることがある。スレッドアップのリセールレポートに引用されているファッション小売業者に対するグローバルデータの調査によると、リセールに参入していないブランドの半分近くが、参入するにはサードパーティを雇う必要があると答えている。

メリット:新規顧客とリピート顧客獲得の促進



特に顧客獲得コストが急騰している現在において、ブランドがリセールに参入する大きな動機のひとつが新規顧客獲得の機会だ。フィルソンのモーガン氏は、リセールの価格帯は低いので、若い顧客や定価の新品には手を出せない顧客を惹きつける可能性があると語った。「顧客にとっては、多少の節約ができて、自分の望むように衣服を新調できるチャンスになる」。

アーカイブのギッティンズ氏によると、同社と提携しているブランドでは、リセール品購入者の約50%がそのブランドの新規顧客だという。それでも常に新品を望む顧客もいるが、リセールプログラムはこのような顧客にもメリットがある。「後々リセールできるという選択肢があることがわかると、人々はより高価な商品に投資する傾向があるようだ」と同氏は説明した。

エムエムラフルアーの場合、セカンドアクト経由の売り手の約70%が、販売の対価としてストアクレジットを受け取ることを選択している。ラフルアー氏によると、このような売り手は通常、最終的にストアクレジットの約3倍の金額を使っているという。

デメリット:成功に必要なインセンティブとマーケティング



どんな新しい販売チャネルも同様だが、リセールプラットフォームで成功するにはマーケティングと認知度が必要になる。「なんでも同じで、小売チャネルを作成したとしても、誰にも知られず、目立たず、アクセスしづらければうまくいくわけがない」とリキュレートのグリフィン氏は話す。「つまり、ブランドはこのような選択肢があると顧客の大部分が認識するレベルまで、継続的にマーケティングについて議論し、プログラムの認知度を高める必要がある」。

たとえば顧客が商品を購入した日から1年後の記念日などに、その顧客に対してリセールサービスについて知らせるメールを送ることもある。またリキュレートでは、特定の商品在庫が少なくなったり売り切れたりしたときに、その商品を購入したことのある顧客に向けて中古品市場に需要があることを知らせる自動メールを用意することもある。

エムエムラフルアーCEOのラフルアー氏は、セカンドアクトの主要な成長戦略のひとつが、積極的なマーケティングと認知度の向上だと語った。同ブランドは2022年から2023年にかけて、ホームページ上に新たな目立つリンクを追加したことでプログラム収益を50%以上増加させた。また最近では、商品を下取りに出すと一律の割引を受けられるようにすることで、リセールプログラムの拡大を目論んでいる。これは、自分で商品を出品する手間をかけたくない顧客にとって有益である。

「我々は学びながら進んでいるのだ」。

[原文:The case for and against brand-owned resale]

Melissa Daniels(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:都築成果)
Image via M.M. LaFleur