マリウポリに作られた即席の避難所で、温かい食べ物の列に並ぶ人々/Evgeniy Maloletka/AP

(CNN)ロシアが2022年初頭にウクライナ南東部のマリウポリを85日間包囲した際、戦争の手段として同市の民間人を意図的に飢餓に陥らせていた疑いがあることが分かった。人権団体グローバル・ライツ・コンプライアンスが13日に発表した文書で明らかにした。

76ページにわたるこの文書は、計算された戦略としての飢餓という戦争犯罪の観点から、マリウポリの住民にとって「この世の地獄」と表現した包囲を詳細に検証。ロシア軍が「民間人の生存に不可欠なものを組織的に攻撃」すると同時に避難経路を遮断し、人道支援物資の配布を阻止したことが判明した。

ウクライナの民間人は水、電気、ガスを断たれ、水たまりやラジエーターの水、雪解け水を飲むことを余儀なくされた。

包囲された中で生き抜いたニコライ・オシチェンコさんは、9人の人々と1つのアパートに2週間住み、食料を配り、水をかき集めた。2日間かけて大量の雪を手で溶かしたが、数センチの汚れた水しか得られなかった。

オシチェンコさんはCNNに対し、ラジエーターの水を20回以上沸騰させて浄化してから飲んだこともあったと語った。

意図的に飢餓や欠乏を引き起こすことは、国際法上の戦争犯罪にあたる。同団体はロシアが故意に飢餓を引き起こしたことに関する大がかりな文書の一部として、国際刑事裁判所(ICC)に今回の報告書を提出する手続きを進めている。

同団体のウェブサイトによると、同団体は欧州委員会オランダ、英国、米国の政府から資金援助を受けている。

同団体の上級弁護士はCNNに対し、マリウポリの包囲は戦争犯罪にあたると確信していると語り、その理由として、赤十字国際委員会(ICRC)や国連が何度も民間人の避難を試みたにもかかわらずロシア軍が許可しなかったこと、85日間にわたりマリウポリに人道支援が入ることを一度として許可しなかったこと、生活に不可欠な電気や水に関連する施設や食料配給所を攻撃していたことを挙げた。

弁護士は、ロシア軍は民間人の苦しみを和らげる機会が何度もあったにもかかわらず、それを怠ったと語った。

オシチェンコさんは日を追うごとに絶望的な状況になっていったと述べた。「小さな子を持つ母親の多くは、ストレスと空腹で母乳が出なくなり、粉ミルクや離乳食もなかった」と話す。

ロシア軍はマリウポリを占領すると、絶望的な状況を利用しようとした。

ロシアがマリウポリにやって来て、地下にいる人々に食料を届け、子どもたちにキャンディーを与え始めた。ロシアを憎んでいたとしても、あなたは彼らのところに行き、それを受け取るだろう。食べるものがなく、子どもたちは飲むものがないからだ。残酷だ」(オシチェンコさん)