「乳腺症」とは?症状・原因・治療法についても解説!【医師が監修】

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マンモグラフィで見つかる乳腺・乳房の石灰化とは?Medical DOC監修医が主な原因や病気リスク・カテゴリー・ステージ別の対策等を解説します。

≫「花咲乳がんの前兆となる3つの初期症状」はご存知ですか?原因も医師が解説!

監修医師:
山田 美紀(医師)

慶應義塾大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、総合病院や大学病院にて形成外科、外科、乳腺外科の研鑽を積んできた。医学博士。日本外科学会 外科専門医、日本乳癌学会 乳腺認定医、検診マンモグラフィー読影認定医(A判定)の資格を有する。

乳腺・乳房の石灰化とは?

乳腺・乳房の石灰化とは乳腺にカルシウムが沈着したものです。マンモグラフィで真っ白い砂のような影としてみえます。ほとんどの石灰化は良性であり、心配はいりませんが、石灰化の形や分布の仕方、大きさや濃淡によっては悪性(がん)を疑うものがあります。乳腺・乳房の石灰化とは何か、また、良性とはどのような意味か、石灰化ができる原因についてご紹介します。

乳腺・乳房に見られる石灰化とは何?

乳腺・乳房に見られる石灰化自体はカルシウムの沈着です。乳腺は乳管と小葉からできており、乳汁を分泌する働きがあります。乳汁に含まれるカルシウムなどが乳管内に沈着したものがマンモグラフィで石灰化として確認されます。

マンモグラフィで石灰化が見つかる原因は?

石灰化が見つかる原因として良性の場合も悪性の場合もあります。良性の石灰化は、乳管内の分泌物に含まれるカルシウムの沈着や乳腺症や線維腺腫などの良性病変の一部です。悪性の石灰化は乳がんからの分泌物に含まれるカルシウムの沈着やがん細胞の壊死によってできます。石灰化自体はしこりなどの自覚症状がなく、マンモグラフィを行って初めて確認することができます。石灰化を確認するためには、定期的に乳がん検診をうけることが大切です。

マンモグラフィ検査の見方と再検査が必要な石灰化に関する結果

ここまではマンモグラフィで石灰化が見つかる原因と対処法を紹介しました。
再検査・精密検査を受診した方が良い結果がいくつかあります。
以下のような診断結果の場合にはすぐに病院に受診しましょう。

マンモグラフィ検査のカテゴリーと結果の見方

マンモグラフィ検査の結果は5段階にカテゴリー分類されます。カテゴリー1は「異常なし」、カテゴリー2は「良性」、カテゴリー3は「良性、しかし悪性を否定できず」、カテゴリー4は「悪性疑い」、カテゴリー5は「悪性」です。腫瘤(しこり)、石灰化などの所見を総合的にみて、カテゴリーを判定します。乳がん検診ではカテゴリー3以上の場合、悪性の可能性が否定できないため、精密検査が必要です。

マンモグラフィ検査の石灰化のカテゴリー

マンモグラフィ検査の石灰化のカテゴリーは5段階に分類されます。石灰化の形や分布の仕方によって分類を行います。カテゴリー3以上の石灰化は「要精密検査」となります。良性の石灰化の種類として、皮膚や血管壁の石灰化、単発の石灰化や中心が抜けた大きい石灰化などがあり、カテゴリー1または2となります。角のない小さい石灰化が乳房全体に広がっているものも良性の石灰化と考えます。乳がんによる石灰化は細かい石灰化が1カ所に集まっている(集簇性:しゅうぞくせい)、扇状(区域性:くいきせい)や線状に分布することや、石灰化の粒の形が不揃いで角がある、線状であるなどの特徴があります。乳がんの可能性を否定できない石灰化は、形や分布の仕方の特徴を組み合わせてカテゴリー3~5に分類されます。

マンモグラフィ検査で乳腺の石灰化が見つかった場合の再検査基準と内容

カテゴリー3以上の石灰化が見つかった場合、再検査や精密検査が必要になります。「再検査」となった場合は、石灰化の変化を経過観察するために一定の期間(半年後など)をおいて再検査の指示があります。指示されたタイミングでの受診をしましょう。また、「要精密検査」の結果が届いたら、なるべく早めに乳腺科を受診しましょう。検査はまず乳腺超音波検査や造影MRI検査などの画像検査を行います。必要があれば、組織診で確定診断をします。マンモグラフィ検査でしか病変を確認できない場合は、マンモグラフィで撮影しながら組織診を行うステレオガイド下マンモトーム生検を行います。精密検査の費用は保険適用になるので1~3割の自己負担となります。ステレオガイド下マンモトーム生検を行った場合は、3割負担で25,000円程度の費用がかかります。精密検査の結果、乳がんの診断となった場合は手術などの治療を行います。良性の診断となった場合も、定期的に経過観察を行う場合があります。

マンモグラフィで石灰化が見つかったときに考えられる病気・疾患

ここではMedical DOC監修医が、石灰化が見つかったときに考えられる病気を紹介します。

乳がん

乳がんは乳腺の組織に発生する悪性腫瘍です。乳腺は乳管と小葉からできており、がんは乳管から発生することが多いです。症状として多いのは、乳房のしこりですが、石灰化のみの場合は無症状のことが多いです。乳がんによる石灰化は、細かい石灰化が1カ所に集まっている(集簇性)、扇状(区域性)や線状に分布することや、石灰化の粒の大きさが不揃いで角がある、線状であるなどの特徴があります。乳がんの原因として、女性ホルモンが過剰に暴露されていることがあげられます。経口避妊薬やホルモン補充療法の使用、月経のある期間が長いことなどが乳がん発症リスクを高めます。飲酒、喫煙、肥満などの生活習慣も乳がんのリスクです。また、血のつながったご家族に乳がんの方がいる女性は乳がんになる可能性が高く、BRCA1/2遺伝子の検査を行います。乳がんの治療は、手術や放射線などの局所治療と薬による全身治療を組み合わせて行います。個々の患者さんの状態や乳がんの性質に合わせて治療方針を決定します。症状がある場合は、早めに乳腺科を受診しましょう。乳がんは早期発見、早期治療で完治できる病気なので、乳がん検診を受けて症状が出る前に対処することが大切です。

乳腺線維腺腫

線維腺腫は最も多い乳腺の良性腫瘍です。10歳代後半から40歳代の若い女性に多いです。症状として、よく動き、境界のはっきりしたしこりを自覚することがあります。線維腺腫に伴う石灰化はポップコーンのような形をした大きな石灰化が多いです。線維腺腫の原因は女性ホルモンの変化が関係しているのではないかと考えられています。症状がある場合は乳腺科を受診しましょう。マンモグラフィや乳腺超音波検査などの画像検査や針生検などで線維腺腫と診断された場合は、治療は必要なく、乳がんの発症と関係はありません。しかし、しこりが大きくなった場合は、摘出手術を行うことがあります。

乳腺症

乳腺症は30~40歳代によくみられる、乳腺の良性変化の総称です。囊胞(のうほう)、乳管内乳頭腫、腺症などのさまざまな病態を含みます。乳管内乳頭腫に伴う石灰化は乳管内に沿って扇状または線状に石灰化が分布している場合があり、乳がんとの区別が必要です。乳腺症は女性ホルモンのバランスが崩れることが原因と考えられています。乳房のしこり、でこぼこした硬結、痛みや乳頭分泌などの症状を自覚することがあります。硬結や痛みは月経前に増大し、月経に伴って軽快することが多いです。乳腺症と診断された場合は、特に治療は必要ありません。乳がんとの区別が難しいため、症状があれば早めに乳腺科を受診することをおすすめします。

「マンモグラフィの石灰化」についてよくある質問

ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「マンモグラフィの石灰化」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

婦人科健診のマンモグラフィで乳腺の石灰化を指摘されました。乳がんなのでしょうか?

山田 美紀 医師

マンモグラフィで指摘される石灰化のほとんどは良性の石灰化です。皮膚や血管壁のカルシウムの沈着、乳腺の分泌物に含まれるカルシウムの沈着、線維腺腫などの良性腫瘍に伴う石灰化であることが多いです。しかし、石灰化の形や分布の仕方によっては、乳がんにともなう石灰化の場合があります。乳がん検診で精密検査が必要な石灰化を指摘された場合は、なるべく早めに乳腺科を受診しましょう。

胸のマンモグラフィで石灰化がカテゴリー3の女性は精密検査が必要ですか?

山田 美紀 医師

乳がんの可能性が否定できないため、精密検査が必要です。なるべく早めに乳腺科を受診しましょう。乳腺科で乳腺超音波検査、組織診、造影MRI検査などを行います。

マンモグラフィで石灰化が見つかったのですが放置した場合はどうなりますか?

山田 美紀 医師

カテゴリー2以下の石灰化は経過観察のみで放置していても問題ありません。カテゴリー3以上の石灰化がある場合は、悪性の可能性が否定できないため必ず精密検査を受けましょう。放置した場合、乳がんが進行してしまう可能性があります。石灰化のみで見つかった乳がんの多くは非浸潤性乳がんという初期の乳がんであることが多く、適切な治療を行うことで完治できます。放置せずに早期発見、早期治療することが重要です。

マンモグラフィで石灰化が見つかった場合、良性の確率はどれくらいですか?

山田 美紀 医師

ある施設ではマンモグラフィで指摘された石灰化のうち、要精密検査対象の石灰化は570人中106人であり、約18%であったというデータが報告されています。石灰化が指摘されても、8割以上は精密検査の必要のない石灰化です。精密検査が必要な石灰化の中にも良性の石灰化が含まれるため、さらに良性の確率が高いでしょう。

久しぶりにマンモグラフィを受けたとき、前回よりも石灰化が増えていることはありますか?

山田 美紀 医師

マンモグラフィ検査で前回よりも石灰化が増えることがあります。石灰化の形や分布の仕方によっては、乳がんの可能性も否定できないため、要精密検査となる場合があります。定期的に受診することが大切です。

まとめ マンモグラフィで石灰化が見つかったら定期的な乳がん検診を

マンモグラフィで石灰化が見つかった場合、多くは良性の石灰化です。石灰化がある=乳がんではありませんが、カテゴリー3以上では乳がんの可能性が否定できないため、必ず精密検査を受けましょう。また、前回よりも石灰化が増えた場合に、精密検査が必要になることがあります。定期的に検診を行うことが大切です。

「マンモグラフィの石灰化」で考えられる病気

「マンモグラフィの石灰化」から医師が考えられる病気は3個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

乳腺科の病気

乳がん乳腺線維腺腫乳腺症

マンモグラフィで石灰化が指摘された場合、多くは生理的なカルシウムの沈着や乳腺線維腺腫、乳腺症などの良性疾患です。しかし、乳がんの可能性もあるため要精密検査となった場合は必ず乳腺科を受診しましょう。

参考文献

[日本乳癌学会]乳癌診療ガイドライン2022年版

[日本乳癌学会]患者さんのための乳がん診療ガイドライン2023年版

[日本赤十字社熊本健康管理センター]令和2年度 事業実績報告書 検査データ 11.乳房 (2)マンモグラフィ