「アルコール依存症」と判断される基準をご存じですか? 医者は何を診ているの?

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普段深い酒を飲んでいるわけではないが、健康のためにしばらくお酒を断とうとしたらできなかった。このような場合でもアルコールに依存している可能性があるそうです。アルコール依存症について、塩釜口こころクリニックの河合先生に詳しく教えてもらいました。

※この記事はMedical DOCにて【アルコール依存症の治療法を解説「孤独にならないことが治療継続のカギ」】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。

≫ アルコール依存症の治療法を解説「孤独にならないことが治療継続のカギ」

監修医師:
河合 佐和(塩釜口こころクリニック)

藤田医科大学医学部卒業。藤田医科大学病院にて初期研修後、精神科・児童精神科の臨床経験を積む。2021年、愛知県名古屋市に「塩釜口こころクリニック」を開院。「どんなあなたでも大丈夫」をモットーとしている。精神保健指定医、日本精神神経学会専門医。

編集部

「アルコール依存症」は、単にお酒をやめられない病態なのでしょうか?

河合先生

お酒をやめられないことに加えて、“社会機能”にどれだけ影響が生じているかを診ていきます。例えば、「遅刻しないで出社できるけど、周囲が気づくほどの酒の臭いが残った状態で出社している」ようなケースですね。そのことを上司から指摘されても繰り返すようなら、治療介入が必要になってきます。

編集部

よく散見するのが「チェックシート」ですが、○項目以下であれば「アルコール依存症ではない」と言いきれますか?

河合先生

言いきれません。たった1項目だけでも「セーフ」とは捉えないでいただきたいですね。該当する項目が多ければ多いほど「依存症の疑いが濃い」のであって、濃淡で捉えてください。また、「自分では迷惑をかけていないと思うこと」と「実際にご家族や周囲が感じている困りごと」は、それぞれ違うかもしれません。つまり、自分を客観視できているかどうかも問われます。

編集部

具体的な弊害はなく、もっぱら健康のために「お酒を断ちたい」という人もいるはずですが?

河合先生

健康目的であっても、飲酒欲求が抑えられない場合は、アルコール依存症と診断される可能性があります。例えばですが、年に1カ月くらい「禁酒期間」を設けてみて、自己テストするのも方法でしょう。もし禁酒期間を守れなければ、「アルコール依存症」予備軍かもしれません。このとき、ご本人の自覚があれば、保険診療の対象になります。ご家族のみの相談受診の場合、自費診療になる可能性があると思いますので、事前に確認しておきましょう。

編集部

「寝酒」が習慣化している場合はどうでしょうか?

河合先生

深酒で眠ったとしても脳は休まっておらず、ずっと徹夜しているような状態です。もし、寝るために飲酒をおこなっているのであれば、適切な睡眠薬を専門医に処方してもらった睡眠の方がよほど健康的ですね。「飲まないと眠れない」としたら、依存症かもしれませんので気をつけてください。