国内最高峰かつ最速を誇る「スーパーフォーミュラ」で日本人女性初&最年少デビューを飾った18歳のJuju(TGM Grand Prix)。3月に行なわれた開幕戦の鈴鹿サーキットには、全国のモータースポーツファンのみならず一般メディアも殺到して、かつてない空気に包まれた。

 そんな『Jujuフィーバー』で注目が集まるなか、18歳のルーキーは予選で大きく遅れたものの、決勝では安定したペースを披露。見事、初めての大舞台で17位完走を果たした。


初めてのオートポリスに臨んだJuju photo by Yoshida Shigenobu

 そこから2カ月のインターバルで、Jujuは高校を卒業して日本大学のスポーツ科学部に入学。さらにスーパーフォーミュラと並行して戦うヨーロッパの「BOSS GP」に参戦するなど、多忙な日々を過ごしている。

 マシンに乗る機会も増えて、トレーニングにも時間を費やせているのか、2カ月ぶりにサーキットで会ったJujuの姿を見ると、『首が太くなったな』という印象を受けた。

 スーパーフォーミュラ第2戦の舞台は、大分県日田市にあるオートポリス。Jujuの人気は九州でも絶大で、ピットウォークには多くのファンがTGM Grand Prixのピットに集まった。また、スポンサー関係のゲストもJujuの周囲を囲み、大きな賑わいをみせていた。

 まずは初日の土曜日。Jujuはオートポリスのコース習熟のため、前大会で使用したユーズドタイヤを使ってコースインし、フリー走行で周回を重ねた。スーパーフォーミュラでは、1レースで使用できるドライタイヤは6セット(新品タイヤ=3セット、前回から持ち越したタイヤ=3セット)と決められている。

 フリー走行でJujuは、1分35秒台のタイムを安定して出せていた。ただ、次のステップに進もうと一度ピットに呼び戻した瞬間、燃料ポンプのトラブルが発生してコース脇にマシンを止める事態となってしまう。

【最後は周回遅れとして道を譲ることに...】

 セッションは赤旗中断。マシンも回収されてピットまで戻ってきたが、修復作業に約45分もかかってしまうことに。フリー走行時間終了まで残り1〜2分でコースインは果たせたものの、計測もできないままタイムアップ。結果、ぶっつけ本番で予選に臨むことになった。

 Jujuは今回、予選Q1のAグループから出走。トラブルの影響で事前確認事項がほとんどできていない状態で、Aグループトップの太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)から2.9秒遅れの1分30秒373だった。前回の鈴鹿がトップから4.8秒遅れだったことを考えると、まだ大きな差ではあるものの、限られた条件のなかでタイムを詰めてきた印象だ。


気を取り直して決勝に臨んだJujuだったが... photo by Yoshida Shigenobu

「オートポリスを走ったことがなかったので、90分のフリー走行だけでは厳しいだろうと、事前にみんなと話していました。実際には90分も走ることはできませんでしたが、それを言っても仕方がないので、今の環境のなかでベストを尽くそうと思いました」(Juju)

 当初はフリー走行の終盤で新品タイヤを履いて、コースの感触を確かめる予定だった。しかし状況が変わったことで、新品タイヤを予選Q1の序盤に履いてタイムアタックに臨んだ。だが、納得のいく1周にはできなかったようだ。

「最終コーナーでちょっとミスをして、0.5秒くらいはロスしてしまいました。あれがなければ1分29秒台は出せていたので、(決勝では)チャンスも出てくるのではないかと思います」

 気を取り直して臨んだ日曜日の決勝レース。朝のフリー走行では決勝に向けたロングランペースの確認など、さまざまな準備を進めていった。だが、スーパーフォーミュラでオートポリスを走るという経験のないJujuにとっては、土曜日にトラブルで失った45分の影響が予想以上に大きく出てしまう。

 マシンのセッティングを十分に確認できないままスターティンググリッドについたため、序盤はペースが安定せず。24周目にピットインして後半スティントで追い上げようとしたが、後方からトップ集団が迫り、最後は周回遅れとして道を譲らなければならなかった。前回の鈴鹿は同一ラップでゴールできたが、今回は1周遅れでチェッカーを受けることとなった。

【予選アタックは確実に速くなっている】

 レース後、Jujuは静かに振り返る。

「けっこう厳しかったです。土曜日のフリー走行でしっかり走ることができなかったことが、一番大きかった。チームのみんなもがんばってくれましたけど、初めてのオートポリスで十分なデータが取れなかったので......。トラブルもなく走れていたら、もっと(タイムを)詰めることができていたかもしれません」

 デビューを飾った開幕戦では、レース後に安堵した表情を浮かべていた。しかし第2戦では、表情から悔しそうな雰囲気がにじみ出ていた。その違いが印象的だった。


Jujuの走りをエンジニアも評価した photo by Yoshida Shigenobu

 モータースポーツにおいて車両トラブルは、どうしても避けられない要素である。Jujuの53号車を担当する平野亮エンジニアは、悔しそうに第2戦を振り返る。

「予選のセッティングを確認できないまま、セッションが終了してしまった。どこがよくてどこが悪いかを確認できずに、本番のタイムアタックにいかなければいけない状況でした。あのトラブルの影響で、週末で組み立てていく工程がひとつずつズレてしまっていたんです」

 それでも、この状況のなかでJujuが魅せた予選アタックに関しては評価していた。

「スーパーフォーミュラやオートポリスの経験が豊富なドライバーなら、想像の範囲でうまく対応できます。彼女にはその経験がないので、ひとつずつやっていくしかない。そのなかであの予選アタックは、最終コーナーのミスはありましたけど、確実に速くなっているなと思います」

 オートポリスは苦しいレースとなったJujuだが、「今は経験を積む時期」という点を重視するのであれば、これも成長に向けての貴重な週末だったと言えるだろう。次戦の第3戦・SUGO(6月22日・23日/宮城)も、Jujuにとっては難易度の高いサーキットである。限られた時間でどのようにレースを組み立てていくのか、Jujuの適応力がポイントとなりそうだ。