完治する治療法のない難病「潰瘍性大腸炎」。波乱万丈の闘病生活をコミカルに描いたギャグマンガ家を取材した。

【映像】20代で大腸全摘→あまりの痛さに「モルヒネの100倍効力の医療用麻薬」服用の瞬間(マンガ)

 「結果だけど…潰瘍性大腸炎…だね」

 「潰瘍性大腸炎」。大腸の粘膜にびらんや潰瘍ができる、原因不明の指定難病だ。安倍元総理も苦しんだことでも知られるこの病気の主な症状は、下痢や血便。日本の患者数は2016年の調査でおよそ22万人と推計され、完治する治療法はない。

 マンガ『腸よ鼻よ』(KADOKAWA)は、そんな潰瘍性大腸炎との長きにわたる闘病生活をコミカルに描いている。作者の島袋全優さんが19歳で発症してから9年の間に入院した回数は20回以上。そして10回におよぶ手術を受けながら、闘病中に連載をはじめた。

 「潰瘍性大腸炎になったとき、絶対にマンガにしてやるって思った。こんなにつらい思いしたんだったら絶対にマンガにしてやるって」(島袋全優さん、以下同)

 当初は「腸炎」と診断され、下痢止めを出されたもののよくならず。内視鏡検査をしてようやく潰瘍性大腸炎だと分かったという

 「1日にトイレが多い時で30回とか…全部下痢でもう水を飲むだけで下痢をするみたいな状態だった。すべてが刺激になるみたいな」

 1年のうち、3分の1を病院で過ごすようになった島袋さん。通っていた専門学校も1年休学に。成人式にも出席できなかった。唯一の楽しみが、マンガを描くことだったという。

 「趣味がマンガを描くことだった。(連載中の)原稿の手伝いをしてもらうために病院に友達を呼んで」

 潰瘍性大腸炎と診断されて3年。症状の和らぐ「寛解期」がなく、慢性的に炎症がある珍しいタイプだった島袋さんは、何度も長期入院や絶食を繰り返した。そこで決意したのが…。

 「『炎症を起こす部位がなくなったら治るのでは?』とその時に思って。一大決心として大腸全摘を決めた」

 大腸全摘。大腸が無くなってしまえば、確かに「潰瘍性大腸炎」ではなくなる。悩みぬいて、20代にして大腸を全摘した。

 しかしそんな島袋さんを、術後に更なる試練が襲う。縫合不全による合併症だ。

 「痛みすぎて理性的な判断ができない。解離性障害が起きちゃって…。無意識下に変なことしちゃったりとか。でも痛みから逃れたいから、もう…見境がなくなっていた」

 より専門的な治療ができる病院へ転院した島袋さん。そこで投与されたのが、最大モルヒネの100倍の効力を発揮する医療用麻薬「フェンタニル」。これを大量に使用したことで、ようやく痛みから解放された。

 「(転院するまで)2年かかった。その間ずっと痛みで苦しんでいる時間だった。夜痛くて気絶するように寝て、朝早くから痛くて起きる。そんな中でも仕事のマンガも趣味のマンガも描いていた。マンガが生きがいの人間だったので、マンガが取り上げられたら逆にもたなかったんじゃないか」

 マンガを描くことが救いだった島袋さん。一方で、マンガを読んだ読者からも「気分が楽になった」と様々な声が寄せられたという。

 現在は症状が大分落ち着き、一時的な人工肛門「ストーマ」をつけて生活する島袋さん。

 「明るく病気と付き合うなんてそんな大層なことは言わないが、病気のことで笑って話し合える仲間が増えたらいいなとは思うので。(マンガを読んで)ちょっと心が軽くなってくれたらいいな」
(『ABEMAヒルズ』より)