限りなく矮小化して表現すると、今我々が気にしているCookieの消滅はChromeというブラウザ上に限った話だ。そもそもAppleのエコシステム上ではすでに使えない。

つまり、「Cookieがなくなってしまうから、何かで代替しないと」と考えること自体が陳腐なのかもしれない。時代遅れのトラッキングや測定手段を捨てて、根本的に、より新しく、洗練されていて、消費者のプライバシーにも配慮した「なにか」をデジタルマーケティングは採り入れるべき段階なのだ。

ではその「なにか」とは? 先週DIGIDAY[日本版]で取り上げた記事を見るに、答えは明らか。「データ」だ。

プライバシーサンドボックスに期待せず、データへの投資を強化するマーケターたち



データへの投資を強化する、というのは単に「ファーストパーティデータを集めよう」「サードパーティデータを活用しよう」といったいつもの話ではない。そもそもプライバシーに配慮した上で収集されるデータは、サードパーティCookieで実現してきたターゲティングや測定ほど「正確」ではなく、本質的にある程度の不確実さを認めざるを得ないのだ。

つまり、その不確実さをいかに埋めていくのかがデータへの投資のポイントとなる。

英大手ホームセンターのHomebaseは、Havas Media Networkが提供するソリューション「Converged」を利用して、ファーストパーティデータすら必要とせず、プライバシーセーフなターゲティングを実現しようとしている。

「Converged」は、オーディエンス属性やコホートをデータ分析パートナーから提供されるメディア行動やデモグラフィック、サイコグラフィクに基づいて分析。AIを介して分析結果に基づいてプラットフォーム上の個人をマッチングする。

クリック単価やリード単価はCookieベースのキャンペーンに比べて大きく改善しており、Homebaseのマーケティング部門トップ、リサ・ティックル氏は「データにおける『ギャップ』を埋めていくマーケティングモデルは今後(中略)画期的な結果をもたらすことになる」と語っている。

小売データと動画配信データ、「価値ある」データの融合に大きなチャンスが



そう、価値はデータにある。より具体的にいうなら、データを融合させ洗練させ、自分たちが有しているデータの穴(ギャップ)を埋めることができれば、そこに価値が生まれる。

WalmartがスマートテレビメーカーのVizioを23億ドル(約3453億円)で買収したのは、ストリーミング機能をダシに広告主の関心と広告費を集めるためだけではない。自社が有する小売データと動画配信・視聴のデータを融合させるためだ。

Vizioは現在、2300万台のオプトインデバイスからデータを収集し、そのうち1800万台は同社のスマートテレビ用OS「SmartCast」経由となっている。このデータにはコンテンツ自動認識(画面上で再生されたコンテンツ情報)データなども含まれており、Walmartのリテールメディアにおけるターゲティングと効果測定は大幅に強化されることになる。

もちろん実際には両者のデータをどう連携させ、効果測定とレポーティングをどう統合するのかといった問題や、そもそも実現のための作業は膨大なものになるだろう。だが、繰り返しににあるが価値はデータにあるのだ。

Googleもファーストパーティデータに依存するターゲティングと効果測定の確立を狙っている



データの融合というのは素敵な響きだ。手札のモンスターも融合するとより強力になる。

しかし、ひとつ忠告もしておこう。ファーストパーティデータと連携して広告のターゲティングやキャンペーンのアトリビューション測定を実現するという触れ込みのソリューションは、Googleも準備している。プライバ……ではなく、年内に提供を開始する予定の「Google広告データマネージャー(Google Ads Data Manager、GADM)」だ。

Googleによると、ファーストパーティの顧客データ(オンラインおよびオフラインの販売データ、顧客の名前、電子メールアドレス、電話番号、自宅住所などの個人情報などなど)をGoogleのプラットフォームと円滑に共有できるようにする仕組みだという。

つまり、広告主は宝の山とも言うべき自社由来のデータをメディアデータに投入し、Googleのログイン情報と混ぜ合わせ、Googleが膨大なログインユーザーベースをサードパーティCookieの穴埋めに活用するのを手伝うことになる。わざわざそんな真似を? でもCookieの代替のためなら仕方ない?

本当にそうだろうか。

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