なぜ「トヨタ・ランクル」盗まれた? 対策万全なハズが“40分以上”かけて盗難される! カメラで判明した盗まれ方とは
盗むまでに40分以上!? 2月16日にあった「足立区ランクル200盗難」は初心者窃盗団のしわざか?
近年、トヨタ「ランドクルーザー」の盗難が急増しているといいます。
警察庁が公表した2022年の車名別盗難認知件数のデータでは「ランドクルーザー(プラド含む)」が710台で2位の「プリウス」の477台を大きく引き離してワースト1位でした。
【画像】ドコにある? 盗まれたランクル200がこれです。画像を見る!((30枚以上)
2024年2月29日に、警察庁から発表された2023年の認知件数では1位がアルファード(700台)、2位ランドクルーザー(643台)でランクルの盗難台数は2022年よりも少し減ってはいますが、2024年になってから1−2月の2か月間、自動車盗難情報局やSNSなどで報告されたランクルの盗難台数は首都圏を中心に十数台ありました。
同情報局に登録されるのは実際に盗まれた車両の1割前後とのことなので、推計で今年に入ってからの2か月だけでも百数十台、1日2台以上のランドクルーザーが日本のどこかで盗まれている計算になります。
このような中、少し話は遡ること2月16日午前1時50分頃、東京都足立区の住宅街で2018年に新車で買ったランドクルーザー200が盗まれました。
筆者(加藤久美子)はこちらの窃盗事件についてフジテレビ「めざまし8」にて窃盗の手口や対策方法などをコメントしましたが、その際、盗難の一部始終を記録した約40分の防犯カメラ映像を確認。
手口はおそらくCANインベーダーで事前の下見などはなし。
窃盗団が乗るクルマは「クラウン(210系)」であることも明らかになっています。
防犯カメラの映像は午前1時10分、住宅街の中をクラウンが向かって来るところから始まります。
ランクルの前で少し速度を緩めますがその後、約1分もしないうちに、クラウンが戻ってきます。
そしてランクルから100mくらい離れた場所に駐車。中から3人の男性らしき人々が降りてきてランクルの運転席側のドア付近でドア越しに車内の様子を伺います。
車内にはどのようなセキュリティ装備があるか。車体を揺らしたりドアを叩いたりしてアラームが鳴るかどうかの確認をしていた可能性もあります。
1.車外から防盗対策や周辺の防犯カメラの位置などを確認
2.ドアロック解除
3.室内に侵入してT-Connectユニットを破壊
4.ハンドルロックその1切断
5.ハンドルロックその2切断
(車外からバンパーをずらしてCANバスに接続?)
6.CANインベーダーによってエンジン始動(ヘッドライト点滅)
7.ボンネットを開けて後処理→クラウンと共に立ち去る
このような手順で盗んでいった可能性が高いと思われます。
ちなみに、正面からランクル200をとらえた映像は途中でカメラの電源が抜かれていました。
その様子も映像には残っていますが、さらに別のWi-Fiカメラでは肝心な部分が映っていませんでした。
関係者の話によると、窃盗団の誰かがWi-Fi電波を妨害する装置を持っており、彼らがカメラに近づいたことで電波妨害が作動、40秒間の様子が「全く録画されていなかったのでは?」とのことでした。
なお、最初にランクル200の存在を確認し、最後にクラウンに続いてランクルが駐車場を出ていくまでに約40分掛かっていますが、これはCANインベーダーでの犯行としては通常考えられない長時間です。
窃盗団の動きには無駄が多く、手際も悪い。おそらく手馴れていない窃盗団が次のターゲットを物色中にたまたま盗みやすそうなランクルに遭遇し犯行に及んだと考えられます。
完璧に見える盗難対策! でも盗まれた理由とは…?
今回の盗難被害者であるAさんにどのような防犯対策をしていたか聞いてみたところ、以下の回答を頂きました。
「ハンドルロック2か所とリレーアタック対策のために鍵を金属製のケースに入れていました。
トヨタ純正のT-ConnectにはGPSでクルマを追跡できるトヨタ純正のT-Connectもつけていました」
一見すると、しっかりした防盗対策が講じられているように見えますが、残念ながらいずれの対策も効果を発揮することなくランクルは盗まれてしまいました。その理由について検証してみましょう。
●ハンドルロック
ハンドルロックは見た目からして窃盗犯に「盗みづらい」印象を与えますが、実はほとんどのハンドルロックは巨大なニッパーのような器具で短時間で切断されてしまいます。
Aさんは2つのハンドルロックを使っていましたので少し時間はかかっていますが2つとも切断されて持ち逃げされてしまいました。
なお、防盗対策として毎日ハンドルを外して自宅に持ち帰る人もいますが、この方法も確実ではありません。
下見の際、窃盗団がハンドルがないことを確認し、犯行時にはクルマに合う別のハンドルを装着し、ものの数分で盗んでいきます。
ハンドル以外にもバッテリーを外しているクルマも同様に盗まれる可能性があります。
●電波遮断ケース
リレーアタック対策としてAさんはランクルの鍵を金属製の電波遮断ボックスの中に入れていました。
こちらは鍵から発する微弱な電波を増幅させてドアを解錠、エンジン始動するリレーアタックの手口には効果がありますが、鍵の電波を必要としないCANインベーダーでは残念ながら無意味です。
●T-Connect(トヨタ純正GPSで追跡可能)
トヨタは2014年7月より新しいテレマティクスサービスとして「T-Connect」(ティーコネクト)を展開しています。
車種や年式によってサービス内容が変わりますが、Aさんのランクル200には盗難された際などに追跡できる機能がついていました。
いわばメーカー純正のセキュリティ装置なので、信頼性が高いというイメージを抱いてしまいそうですが、実は逆です。
純正=同型車種なら同じ場所にユニットが設置されているため、いったん窃盗団に解析されてしまうといとも簡単にT-Connectのユニット等は破壊されます。
実際、Aさんがランクル200がないことに気づいて愛車の位置をサーチしたところ、最後の位置情報として表示されたのは自宅の駐車場でした。
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盗難された日について、Aさんに確認したところ「風が強い日だった」そうです。
強風の日や大雨、台風などの荒天は窃盗団にとっては音が周囲に伝わりにくいため窃盗するには最高の条件となります。
このような天気の夜間には特に気を付ける必要がありそうです。
なお頼りになるはずの車両保険も近年は支払われない、または満額出ないケースが増えています。
警察の捜査も期待できないと思っていいでしょう。自動車窃盗の検挙率は全国平均で42.7%(2023年)ですが盗難の多い千葉、埼玉、愛知などでは約20-25%(同)です。
純正セキュリティは最初に破壊されますので、社外品のGPSやセキュリティアラームなど信頼性の高い製品を技術力の高い専門店で確実に取り付けて、扱い方の説明もきっちり時間をかけて受けることをお勧めします。