(漫画:©︎三田紀房/コルク)

東大に合格できる可能性を秘めた子供の才能が、親や先生の無知のせいで潰されてしまうことが非常に多い――。東大セミナー講師・指導歴25年のベテラン・川本雄介氏はこう語ります。今回は『ドラゴン桜で学ぶ 伸びる子供の育て方』を上梓した川本氏が、「才能のある子の見極め方」について共有します。

みなさんは、「この問題わかる?」と聞かれて、「わかる!」と答える子と、「わからない!」と答える子、どちらの子の成績が上がりやすいと思いますか?

この質問は、一見すると「わかる!」と答える子のほうがいい、と思う人が多いと思います。物事を教えているわけなのですから、「わからない」よりは「わかる」のほうがよさそうですよね。親御さんも、「わかった?」と聞いて「わかった!」と答える子供のほうが、成績が上がっていくように感じるでしょう。

「わからない」と答える子のほうが伸びる

しかし、長年指導していると、この考え方は間違っていることがわかってきました。「わかった?」と聞いて、「わからない」と答える子のほうが、成績が上がりやすいです。

逆に、「わかりました!」と言って物わかりのいい子のほうが、実は危険で、成績が伸びなくなっていってしまいます。

このメカニズムについて、『ドラゴン桜』のワンシーンでも描かれています。このシーンでは、生徒が無意識のうちに「わかる」と嘘をついてしまっています。

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(漫画:©︎三田紀房/コルク)

これと同じようなことはいろんな場所で発生しています。先生の話や親御さんの話に対して、本当はわかり切っていないにもかかわらず、自分の中の「わからない」を封殺してしまうわけです。

これは、「わからない」ということを自分で認めたくない、ということから発生してしまう問題だと言えます。自分でも、「わかっていない」とは思っておらず、「なんとなくわかった」というくらいのテンションで簡単に「わかった」と言ってしまうので、なかなか根深い問題だと言えます。

「わからない」を「わかる」にする過程

勉強というのはそもそも、「わからない」ことを「わかる」ようにする過程のことです。ですから、最初は「わからない」のは、まったく問題がありません。

一度聞いただけで理解できるわけでもないし、わからないなら、とことんそれと向き合うべきです。でも、そんな自分と向き合わずにわかったふりをしてしまうと、そもそも勉強にならなくなってしまうわけです。

この状況を、『ドラゴン桜』の中ではどのように改善しているのでしょうか? 桜木先生は作中で、この2人を教壇に立たせて、年下の1年生たちに勉強を教えるように指示しています。




(漫画:©︎三田紀房/コルク)


(漫画:©︎三田紀房/コルク)

このように、「わかったふり」をしない、ということができるのは、1つの技術と言っても過言ではないのです。

「わからないこと」を「わからない」と素直に表現することができる子というのは、ほかの子に比べて「なんだか自分だけわかってないみたいで恥ずかしい」と感じてしまう場合も多いのですが、まったくそんなことはなく、むしろ素晴らしい才能を持っていると言っていいのです。ですから、「わからない」と言ってきた子供に対しては、むしろ「おお!よく言ってくれたね」と褒めるべきです。

子供が素直に言うことができない環境


逆に、親御さんや先生がこうした生徒を邪険に扱ってしまうことは多いですが、それは「子供がわからないということを素直に言うことができない環境」を作ってしまっています。

説明に対して「理解できない」という反応をした子に対して「どうしてわからないんだ」と言ってしまったり、何度同じ説明をしてもわからない子に「わからないわけがない」と言ってしまったり、そうしたことの積み重ねが、子供が素直に「わからない」と言えなくなってしまう環境を作ってしまうことも多いと思います。

子供の「わからない」に寛容になること。これも、教える側が持つべき1つのスキルだと言えるでしょう。

(川本 雄介 : 東大セミナー講師、ドラゴン桜コース責任者)