チャンピオンズリーグ(CL)決勝トーナメント1回戦第1戦。13日と14日(現地時間)に行なわれた4試合は以下のような結果に終わった(左側がホーム)。

・コペンハーゲン1−3マンチェスター・シティ
・ライプツィヒ0−1レアル・マドリード
・ラツィオ1−0バイエルン
・パリ・サンジェルマン(PSG)2−0レアル・ソシエダ

 久保建英が出場したPSG対レアル・ソシエダ戦。前半のある時までは互角に近い展開だったが、時間の経過とともにPSGが攻勢を強めていった。

 久保はアタッカー3人のなかで唯一フルタイム出場したことでもわかるとおり、それなりに活躍した。採点すれば6.5〜7弱か。レアル・ソシエダの先発11人のなかでは最上位にくる。言い換えれば、久保のウイングプレー以外で特筆に値する攻撃は、レアル・ソシエダにはなかった。久保のフルタイム出場は、最後まで久保頼みだったことを意味する。

 
パリ・サンジェルマン戦にフル出場した久保建英(レアル・ソシエダ)photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRA

ポジションは4−3−3の右ウイング。もっぱら4−2−3−1の1トップ下で起用されたアジアカップとは、プレースタイルが大きく違ったことは言うまでもない。最初の見せ場は前半18分に訪れた。アンドレ・シウバ(ポルトガル代表)からパスを受けると、対峙するルーカス・ベラルド(U−20ブラジル代表)と1対1に及んだ。

 内か縦か。ふたつある進行方向の選択で久保が選んだのは縦だった。後ろ足(右足)のインサイドでボールを押し出すように前進。ゴールライン近くまで深く侵入すると、今度は方向を内に変え、切り込むやシュートを放った。

 キックは引っかけ気味で、ポストの枠外に逸れたが、これこそがこの試合で久保が追い求めているプレーであることが伝わってくる瞬間だった。縦に勝負して出たほうがウインガーとして迫力が出る。その躍動感がチームに勢いを与えることになる。

 その4分後には、縦に行くと見せかけて中央にそのまま左足で折り返すと、ジャンプしたアンドレ・シウバの頭に合った。そのヘディング弾は惜しくも外れたが、久保が張る右サイドにチャンスの目が広がっていることが、これでいっそう鮮明になった。

【相手のU−20ブラジル代表を圧倒】

 PSGの4バックの並びが変型だったことも輪をかけた。右のアクラフ・ハキミ(モロッコ代表)が高めに、左のベラルドは深く位置をとり、ビルドアップ時には真ん中寄りに3バック然と構えたため、おのずと久保と距離が離れることになった。

 前半40分。そのベラルドを、久保は呼び込むような動きからきれいに外し、サイド縦突破を敢行。深い位置から折り返したボールはファビアン・ルイス(スペイン代表)にカットされたが、その結果CKをゲット。キッカーとなった久保はPSGゴール前に鋭いボールを送り込んだ。GKジャンルイジ・ドンナルンマ(イタリア代表)に弾かれるも、その流れからボールは再び右ウイング久保の足もとに収まった。

 選択したプレーは縦突破。ベラルドを苦もなくかわすと中央に鋭い右足センタリングを送り込んだ。ゴールまであと一歩に迫ったが、このあたりから流れはPSGに傾いていく。繰り返すが、久保のところしか突破口がないところが、その大きな原因だった。

 PSGが均衡を破ったのは後半13分。CKをニアでマルキーニョス(ブラジル代表)が頭で流すと、ファーポストに走り込んだキリアン・エムバペ(フランス代表)が押し込み、先制点とした。

 久保にやられっぱなしだったベラルドは、後半に入ると気がつけばオーソドックスな左SBの位置を取っていた。久保に圧がかかる状態になった。その結果、PSGの左サイドは攻撃的になった。左ウイング、ブラッドリー・バルコラ(U−21フランス代表)が躍動し始める。後半25分に生まれた追加点はその産物だった。バルコラが左サイドをごぼう抜き。そのままゴールを決めダメ押し点とした。

 レアル・ソシエダの右サイド対PSGの左サイド。優勢に進めた前半のうちにレアル・ソシエダはゴールを奪いたかった。アノエタで行なわれる第2戦。久保が縦突破を何本決めることができるか。目を凝らしたい。

 一番の事件が起きたのはラツィオ対バイエルン戦だった。後半22分。ダヨ・ウパメカノ(フランス代表)が、エリア内でグスタフ・イサクセン(デンマーク代表)を踏みつけ、一発退場&PKになったシーンだ。チロ・インモービレ(イタリア代表)がこれを決め、ラツィオが1−0で初戦を制した。

【鎌田大地にも惜しいシーン】

 ひとり多いラツィオは欲を言えば、もう1点決めておきたかった。チャンスはないわけではなかった。後半36分、出場機会が回ってきた鎌田大地にも、パスをせず強引にシュートを打ってしまえば......と言いたくなるシーンがあった。

 ブックメーカー各社から優勝争いの2番手に推されていたバイエルンは、目新しさのないサッカーに終始した。昨季と代わり映えがしないというか、単調で、柔らかみ、ラテン色に欠ける。

 本命に推されているマンチェスター・シティと比較すれば、ベルナルド・シウバ(ポルトガル代表)のような存在がいないのだ。ドイツ代表の問題点をそのまま引きずっているように見える。

 マンチェスター・シティはコペンハーゲンに1−3で勝利。1失点は完全なGKのミスで、内容的には0−3だった。PSGやバイエルン、さらにはライプツィヒに0−1で辛勝したレアル・マドリードと比較してみても、頭ひとつ抜けている印象だ。

 レアル・マドリードは勝利したものの、チャンスの数では相手に上回られた。ジュード・ベリンガム(イングランド代表)が不在だったことが大きいが、CLの決勝トーナメントの舞台であらためて感じるのは、それ以上にカリム・ベンゼマ(元フランス代表)の抜けた穴が大きいことだ。

 CFらしいCFがいない。ロドリゴ(ブラジル代表)、ホセル(スペイン代表)ではだいぶ落ちる。ヴィニシウス・ジュニオール(ブラジル代表)、ベリンガムの2枚看板で、マンチェスター・シティに対抗できるか。攻撃能力の低さがこの先のトーナメントを勝ち抜く上で決定的な問題になるのではないかと見る。