西村優菜インタビュー(後編)

今季、米ツアー2年目に挑む西村優菜。自らのシーズン初戦を前にして、世界最高峰の舞台での飛躍を誓う――。

◆前編:西村優菜、苦しかった米ツアー1年目「何が正解なのかわからなくなった」>>
苦しい時期を乗り越えて、今季米ツアーのシード権を手にした西村優菜。photo by Getty Images

――昨年9月には、住友生命Vitalityレディス 東海クラシックに出場するために、日本に一時帰国されました。その帰国が後半戦に勢いづくきっかけになったのでしょうか。

西村優菜(以下、西村)帰国の前週にクローガー・クイーンシティ選手権(オハイオ州)に出場したんです。その前までに3試合連続で予選落ちしていて、まさにスイングがぐちゃぐちゃになっていた時期に迎えた大会で、その週に過去の自分のスイングを見返したんです。

 そのなかで、2021年に国内メジャーのワールドレディスチャンピオンシップサロンパスカップに勝った時のスイングが(自分では)とっても好きだったんです。

――「好き」?

西村 はい。すごくコンパクトなスイングなんですけど、無駄な動きがなくて、ボールに力が伝わっている感じがしました。

 それで、頭のなかではものすごく大きな発見があった状態で帰国して、以前に担いでもらっていた日本のキャディさんに、久しぶりに自分のプレーやスイングを見てもらって、「以前と違うところがあれば教えてください」と伝えました。

 そうして、細かなことばかりですけど、キャディさんから返ってきた答えがすごく自分のなかでマッチしたんです。何かが大きく変わったというよりかは、頭のなかがすっきりしたことが大きかったですね。

 あと、苦しい時期には母にもアドバイスをもらっていました。母はゴルフをやらないし、技術的なこともわからないんですけど、ずっと一緒にいるからこそ、「あの時はこうだったよ」「昨日はこうだったよ」と、今の私と過去の私を比べて違いを指摘してくれる。

 すると、自分では気づいていなかった、外から見ているからこそ気づけることが結構あって。その"違い"を(母は)端的に指摘してくれるので、的を射ていることが多いんです。母が外から見ていて気づいた問題を、自分の内側で処理して修正する作業の連続でした。

――結果的に、住友生命Vitalityレディス 東海クラシックでは3位タイフィニッシュ。アメリカに戻って直後のNWアーカンソー選手権(アーカンソー州)でも優勝争いに加わり、3位タイという結果を残しました。

西村 住友生命Vitalityレディス 東海クラシックの時にショットが劇的によくなって、そこで発見したモノを大事にしながらアメリカに戻って、優勝争いすることができました。

 久しぶりに優勝争いの興奮を味わうことができて、「ああ、こんな感じだった」という手応えも得られて。もちろん、優勝できなかったのは悔しかったけど、ゴルフの中身がガラッと変わったという意味では大きな一週間でした。

――その後は一度も予選落ちすることなく、2024シーズンのフルシード権を手にしました。

西村 ショットがようやくまとまってくれたからこそ、バーディーパットをたくさん打てた。後半戦はうまく戦えたと思います。

 ショットの悩みは、芝の違いから生まれた悩みで、アメリカの芝で高い球を打てるようにクラブセッティングを変更したりもしました。それがマッチしたことも後半戦で戦えた要因です。

――同じQシリーズを戦って、同時期にアメリカツアーに挑戦することになった勝みなみプロや、先に米ツアーで戦っている渋野日向子プロ、古江彩佳プロなどに何かしら相談するようなことはありましたか。

西村 仲間に相談することはなかったんですけど、2歳上のみなみちゃんは、先輩ではあるけど、同じQシリーズを戦って、一緒にアメリカに来たこともあって、私のなかでは勝手に「一緒に頑張りたい」という気持ちがある。実際、(勝とは)何度か食事に行かせてもらって、同じリシャッフルのプレッシャーを共有しながら、「諦めずに頑張ろうね」と声をかけてもらいました。

――アメリカでの生活も慣れましたか。

西村 まあ......、少しずつは慣れたのかな(笑)。アメリカのことは、好きは好きです。試合を戦ううえでも、日本とは雰囲気が違って面白い。

――どんな違いがありますか。

西村 人がフランクですよね。選手もそうだし、ギャラリーの方もそう。試合中は、ギャラリーが叫んでも許されるようなホールがあったり、エンターテインメントを追求している感じが好きですね。アメリカでしか経験できないことだなと、楽しんでいました。

――最初のインタビューが3年前で、20歳の時でした。

西村 もう、23歳になっちゃいました。

――「もう」? ですか。

西村 ですね(笑)。一昨年のQシリーズの結果がふるわなかった時、ショックを受けて、「本当にアメリカで戦えるのか......」という不安がすごくあった。Qシリーズのあと、アメリカに行くか、やっぱり日本で戦うか、二択ですごく悩んでいました。

 そして、1週間から2週間ぐらいの時間を費やして、アメリカに行くという選択をした。その時間がとてもよかったような気がします。やっぱり、この年齢でアメリカに挑戦した判断は間違っていなかったと思います。

――このオフに取り組んできた課題を教えてください。

西村 ショットはいい感じでまとまっているので、スイングの修正とかよりも自分のテンポを忘れない練習をしています。あとは、毎年の重点課題である100ヤード以内の(ショットの)精度の強化と、パターのテンポが少し乱れてしまっている部分もあったので......。

――西村プロはもともとパターを得意としていますが、パッティングでもアメリカで狂いが生じたのでしょうか。

西村 やっぱり芝の違いによって、転がり方がぜんぜん違うんです。私はジャストタッチで打つタイプなんですけど、強めに打たなければ入らない芝もあったりして。

 悩んだ結果、自分のテンポ、スタイルは変えないほうがいいという結論に至った。乱れてしまったテンポを戻すという作業を今、しています。

――海外メジャー制覇が大きな夢だと公言されてきました。昨年は全米女子プロが39位タイ、全米女子オープンは予選落ち、アムンディ エビアン選手権が予選落ち。そして、AIG女子オープンが21位タイという成績でした。

西村 昨年は(米ツアーに)生き残ることに必死で。とにかく目の前の試合、目の前の一打に必死だった。それ以外のことに集中力を向けられなかった。

 今季はフルシードを獲得したので、スケジュールの組み方も、練習ラウンドの組み方も、変わってくるし、それが結果的に昨年とは違った戦い方につながると思う。今季は、ツアー優勝が目標です。

――過去3年のインタビューで公言した目標はすべて達成しています。

西村 今年も有言実行となるように頑張ります(笑)。

(おわり)

西村優菜(にしむら・ゆな)
2000年8月4日生まれ。大阪府出身。2019年にプロテストに合格。2020−2021シーズンからツアー本格参戦を果たし、いきなりツアー4勝をマーク。賞金ランキング5位という結果を残す。2022シーズンもツアー2勝を飾って、メルセデスランキング5位、賞金ランキング2位という好成績で終えた。2023シーズンからは米ツアーに挑戦。厳しい条件下にありながら、CMEグローブ ポイントランキング48位となって今季シード権を獲得した。身長150cm。血液型O。