投資初心者におすすめなのは「積立投資」といえる理由とは(写真:tadamichi/PIXTA)

新NISA(少額投資非課税制度)が2024年1月にスタート。株や投資信託などで得た利益には所得税などの税金がかかりますが、その税金が非課税となるのがNISA。これまでのNISAよりも投資しやすく改良したのが新NISAです。

これを使いこなす際に知っておきたいのが積立投資。1400億円以上の資産を仲介で預かる日本トップの投資アドバイザー集団を率いる福田猛氏の著書『この世でいちばん臆病な投資生活』から一部抜粋、再構成してお届けします。

臆病な投資はひそかに「増やす」

どんな投資でも絶好調が続くことはあり得ません。上がったり落ちたりを繰り返すのが投資の常。不思議なことに投資信託は、落ちたときに「おいしい思い」をできる投資です。

といっても、投資信託の商品の価格が上がるわけではありません。株式で運用する投資信託であれば、株式市場とある程度連動しているので、株式市場が下落すると商品の価格は下がります。しかし、この冬の時代こそ、投資信託が底力を発揮するタイミングです。

何もしなければただ塩漬けになってしまう可能性がある冬の時代に、投資信託は冬眠をしながら春に向けてしっかりと力を蓄えていけます。それをできるのが「積み立て投資」です。

投資信託は「一括投資」と「積み立て投資」の主にふたつの投資方法があります。

「一括投資」はその名の通り、一度にポンと投資する方法です。1万円でも100万円でも一度で投資することです。株式投資と同じですね。

「積み立て投資」は毎月同じ金額をコツコツ投資する方法です。たとえば月に3万円積み立てすると決めたら、毎月払い続けます。

「まとまった資金があるときは一括で買ったほうが、大きなリターンを得られる」とすすめる専門家もいます。

しかし、一括投資は底値のときに買って、天井のときに売るのがもっとも利益が出る方法です。個別の株投資と同じで、読めない相場を読むしかありません。

一方、積み立て投資の場合、相場を完全に無視できます。価格が上がってもいいし、下がってもいいという、相反することを両立させる方法です。

投資信託は次の式で自分の資産を割り出します。

【 価格×量(口数) 】

とてもシンプルですね。

積み立て投資は、毎月「量」を買い増ししていく方法です。量に着目すると、「価格」は上がるより、下がったほうが多く買えます。

たとえば、あるところにリンゴが大好きな家族がいたとします。この家族は全員でたくさん食べるために毎月1万円分、リンゴを買っています。

1月は、リンゴの価格が100円でした。そのため、「100個」のリンゴを買いました。

2月は、リンゴの価格が20円値下がりして80円でした。1万円で買えるだけの「125個」のリンゴを買いました。

3月は、リンゴの価格が元に戻り100円になりました。この月は1万円で「100個」を買えました。

さて、この3カ月で家族はリンゴを何個買ったでしょうか。

答えは「325個」です。

投資信託が冬の時代にたくさん買える理由

もしリンゴの値段が100円に固定されていたら、3カ月で「300個」しか買えなかったはず。それが、値下がりしたら25個も多く獲得できたのです。途中で価格が下がることで多く買えるのだと分かります。

投資信託もそれと同じです。

1口1万円の商品を毎月3万円で積み立てたとします。その商品が5000円に値下がりしたら、普段は3口しか買えなかったのが、6口に増えます。

つまり、値下がりしたら「量」を増やせるということです。

普通は値下がりはマイナスでしかありませんが、いい商品を普段より安くたくさん買えたら得ですよね。

それを1万5000円に値上がりしたときまで持っていたら、「価格×量」でかなりのリターンを得られます。

一方で、値上がりしたときは買える口数は少なくなります。けれど、それは高値になりすぎた商品を買うのを抑えられる効果があります。

このように、毎月同じ購入額を投資し、「安いときにはたくさん買い、高いときに少なく買う」方法を、「ドル・コスト平均法(dollar cost averaging)」と呼びます。

ただ、この名前を覚えておく必要はありません。「途中で下がったときほど得」だということだけ、覚えておいてください。

積み立て投資は毎月自動的に口数を調整してくれるので、値下がりしたときに「損切りしなきゃ」、値上がりしたときに「売らなきゃ」と考えなくて済みます。

そして、一度増やした口数は減ることはありません。たとえ商品の価格が下がったとしても、100口買っていたのが90口に減ったりしないので、買えば買うほど量は増えていきます。

投資の成果は「価格×量」ですから、最後は価格が上昇したほうがいいという点は変わりません。

しかし、途中は下がっても良い。というより、下がったほうがありがたいのです。

この「下がってもいい」という考えこそが、積み立て投資信託を最強の資産運用法たらしめる「魔法」です。

価格が下がってもたくさんの量が買える意味

次の図をご覧ください。毎月1万円の積立投資を10年間継続したとします。


(出所)『この世でいちばん臆病な投資生活』より

投資金額は毎月1万円、10年間で120万円です。

スタート時の商品価格は1万円でしたが、7年後に2000円まで下がり、その後少し回復し10年目に5000円まで戻ったとします。その段階で売ることになったとき、商品の価格は買ったときより半分に下がっているので、利益はマイナスになっていると思うかもしれません。

ところが、実際には139万円に増えていました。10年間で19万円の利益です。これは、価格は当初の半値でも途中で下がったときにたくさんの量を買えたから、増えたのです。

それでは、次の図をご覧ください。同じ投資で1万円からスタートして5年後に2000円になり、10年後に元の1万円に戻ったとします。投資金額は10年間で120万円という点は変わりありません。


(出所)『この世でいちばん臆病な投資生活』より

この場合、なんと120万円は241万円と、倍に増えました。もし、この商品に120万円で「一括」投資していたら、株価が戻った段階でプラスマイナスゼロになるので、利益は出ません。やはり、積み立てだからこその恩恵です。


ここまでお話ししてきたように、世界株式型の投資信託+積み立て投資を選べば、何もしなくても資産を増やすことが期待できます。

本来、資産運用はそうあるべきです。

「手っ取り早く1億円稼いで、セミリタイアしよう」とリスクの高い投資(というより投機)に手を出して一獲千金を狙うより、今の生活をキープしたまま、将来に備えるのが本来の資産運用です。

ウサギが次々にゴールしていても、自分のペースで資産をコツコツ貯められるカメが、最終的には人生の勝者になれるのですから。

(福田 猛 : 資産形成コンサルタント)