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歌手の中島美嘉さんが、12月26日に開催予定だったディナーショーを「体調不良」を理由に取りやめた。ショーの始まる約1時間前にX(旧ツイッター)で中止報告がされたことで波紋も広がっている。

中島さんのオフィシャルアカウントは同日午後3時過ぎ、「楽しみにされていたお客様には多大なるご迷惑をおかけしますことを深くお詫び申し上げます」と謝罪。

また、「ご購入いただきましたチケットは、そのまま振替公演に有効となります」とし、チケットの払い戻し(返金)も受け付けるという。

ディナーショーは、オンラインと埼玉県熊谷市のホテルでの鑑賞が用意されていた。現地参加の客の中には、遠方からの移動や宿泊の費用をすでに支払った人もいただろう。

今回のように「直前中止」の事態が発生した場合、宿泊費なども主催側に求められるのだろうか。エンターテインメント問題にくわしい河西邦剛弁護士に聞いた。

●対応を誤れば「矛先」が主催者や事務所に向かうおそれも

--チケット購入者は宿泊費や交通費まで中島さん側にもとめられるのでしょうか

通常、購入したチケットには契約内容として公演中止の場合の免責事項が記載されています。公演中止時の宿泊費や交通費が「客の自己負担」になるとする条項については一応有効と考えられます。

しかし、1〜2日前ではまだしも、直前の公演中止となれば、交通費や距離によっては宿泊費が来場者に発生することはほぼ確実です。実際の訴訟になった場合、状況によっては、裁判所が免責条項を排斥して、一定金額の交通費の支払いを認める可能性はあると思います。

このような裁判を実際に起こした例が、これまでほぼないというだけです。

特に大規模コンサートであれば、主催者はオーダーメイド型の興行中止保険に入っていることが多いため、仮に裁判所が交通費や宿泊費の支払いを命じるとすれば、その先は興行中止保険の範囲に含まれるかという問題にもなってきます。

--イベント中止の決断にあたって、主催側が気をつけるべきことはありますか

みんなが楽しみにしていたイベントの中止はファンにとって辛いものです。もちろんアーティストの体調不良については、ファンのほとんどが受け入れるとは思いますが、やり場のない喪失感をどこかに向けたくなるのが人間心理でもあります。

そうすると、ファンの矛先がどうしても、主催者や事務所側に向いてしまうところがあります。

特に、会場に来たファンが現地スタッフに怒りや不満をぶつけるような状況にならないよう、事務所主導でイベント主催者や会場と連携しながら、状況説明についての、早期かつ積極的な発信が何より重要だと思います。

それだけでなく、事務所側としては、アーティストの状況や経過を見ながら、本人からのメッセージも含めて、積極的な発信をすることで、ファンの気持ちに向き合い続けることかと思います。

将来、アーティストがステージに再び立つときに、ファンが「このアーティストを応援し続けて良かったな」と思えるような対応がファンビジネスの肝だと思います。

●中島さんの体調を心配する投稿も少なくない

河西弁護士の解説は以上となる。

Xでは、中島さんのディナーショー中止を現地で伝えられたとするファンが「中止でも責める人は1人もいなかった」などと投稿したほか、中島さんの体調を心配する投稿も少なくない。

【取材協力弁護士】
河西 邦剛(かさい・くにたか)弁護士
「レイ法律事務所」、芸能・エンターテイメント分野の統括パートナー。多数の芸能トラブル案件を扱うとともに著作権、商標権等の知的財産分野に詳しい。日本エンターテイナーライツ協会(ERA)共同代表理事。「清く楽しく美しい推し活〜推しから愛される術(東京法令出版)」著者。
事務所名:レイ法律事務所
事務所URL:http://rei-law.com/