誤情報監視団体・NewsGuardの調査によると、イスラエル・ハマス戦争に関する陰謀論的な誤情報を拡散するアカウントも、Xプレミアムの広告収入分配プログラムの対象となっていると指摘されています。

Brand Danger: X and Misinformation Super-spreaders Share Ad Money from False Claims About the Israel-Hamas War - Misinformation Monitor: November 2023 - NewsGuard

https://www.newsguardtech.com/misinformation-monitor/november-2023/



Some X ‘misinformation super-spreaders’ may be eligible for ads payouts - The Verge

https://www.theverge.com/2023/11/24/23973876/x-misinformation-revenue-sharing-israel-hamas-premium-subscriber-blue-checkmarks-verified

NewsGuardは2023年11月13日から22日までにXに投稿された「イスラエル・ハマス戦争に関する陰謀論的な誤情報」30件と一緒に表示された広告を追跡調査しました。「イスラエル・ハマス戦争に関する陰謀論的な誤情報」が閲覧された回数は合計で9200万回以上だったそうです。なお、「イスラエル・ハマス戦争に関する陰謀論的な誤情報」を投稿したのはそれぞれ10万人以上のフォロワーを抱えるXアカウント(10件)で、これらはNewsGuardが「誤情報のスーパースプレッダー」と分類したアカウントでした。

「イスラエル・ハマス戦争に関する陰謀論的な誤情報」の一例が以下。投稿では「画像がAIによって生成されたもの」と、間違った主張を行っています。そして、この投稿の下にはピザハットの広告投稿が表示されており、Xプレミアムの広告収入プログラムの対象であることがわかります。なお、NewsGuardの調査によると「イスラエル・ハマス戦争に関する陰謀論的な誤情報」の下に掲載された広告投稿は、「86の主要ブランド、非営利団体、教育機関、政府による200件の広告」だったそうです。



「イスラエル・ハマス戦争に関する陰謀論的な誤情報」の具体例のひとつが、「保守系ポッドキャスターがAIで生成した『ハマスに殺害された子どもの写真を共有した』」と主張する投稿です。これは明らかに誤情報であるにもかかわらず、コミュニティノートが追加されないまま、2240万回以上も閲覧されているそうです。

NewsGuardのコミュニケーション担当ヴァイスプレジデントであるVeena McCoole氏は、「イスラエル・ハマス戦争に関する陰謀論的な誤情報」について「イスラエル・ハマス戦争に関する最もひどい虚偽または誤解を招く主張の一部を含むものであり、NewsGuardが誤情報データベースで以前に誤りを暴いていたものです」と海外メディアのThe Vergeに語っています。

NewsGuardの調査結果はXがヘイトスピーチや虚偽の主張に広告を掲載していることを疑問視する報道を裏付けるものです。Xは大手広告主のコンテンツが反ユダヤ的投稿の下に表示されているとの報道をめぐり、メディア監視団体のMedia Mattersを訴えました。

「X(旧Twitter)が反ユダヤ的投稿にAppleなど有名企業の広告を表示している」と主張したメディアをXが提訴、ヤッカリーノCEOが主張を否定するも速攻で証拠が提示される - GIGAZINE



この報道を受け、Appleやディズニーといった大企業がXへの広告出稿を取りやめています。

イーロン・マスクの反ユダヤ主義的コメントを受けてApple・ディズニー・ワーナー・パラマウントなどがX(Twitter)への広告出稿を停止 - GIGAZINE



by Daniel Oberhaus

なお、XはNewsGuardの調査レポートが公開される前に「NewsGuardはXに関する誤った情報をまとめたレポートを公開しようとしています。営利企業として、彼らは料金を支払った場合にのみ、研究と称するデータを共有します。彼らはこのようなレポートを使用して、企業にファクトチェックサービスを購入するよう圧力をかけています。これはどの基本モデルよりも利益が得られます。Xはレポート内のデータをまったく見ていません。掲載する前に、すべての報道機関に対し、主張の根拠となるデータを要求します」と投稿し、NewsGuardの調査レポートを「誤った情報をまとめたもの」と批判。さらに、レポートのベースとなった情報を開示しないとNewsGuardを批判していました。



そのため、NewsGuardは調査対象となった投稿のリストを公開しています。これについてThe VergeがXに問い合わせたところ、「今は忙しいのであとでもう一度確認してください」という自動返信があるのみで、明確な返答は得られなかったそうです。

イーロン・マスク氏は2023年10月に、モデレーションツールであるコミュニティノートからの修正が含まれる投稿ではXプレミアムの広告収入分配を行わないと言及しました。Xの広告収入分配条件にも「Xユーザーによる契約違反行為」が発覚した場合には広告収入の支払いを行わないと書かれています。ただし、この「Xユーザーによる契約違反行為」がXの利用規約に違反することを意味するのか、複数ページにまたがるルールに違反することを意味するのかは不明です。

また、NewsGuardが調査した「イスラエル・ハマス戦争に関する陰謀論的な誤情報」30件のうち、15件にはコミュニティノートが添付されているため、広告収入分配の対象外になるはずだとThe Vergeは指摘しています。

なお、「イスラエル・ハマス戦争に関する陰謀論的な誤情報」の下に掲載された広告には、FBIや台湾文化部といった政府機関の広告も含まれています。