●A4よりひと回り小さい12.4型、でもインタフェースは充実

堅牢性の高さや基本性能の高さでビジネスユーザーを中心に根強い支持を集めるパナソニック「レッツノート」。そのラインナップに新しく12.4型ディスプレイを搭載した2in1 PC「QR」シリーズが登場した。

1kg前後のコンパクトな筐体に第13世代Coreプロセッサやテレワーク向け機能を搭載しており、出先にも気軽に持ち運んで利用できる。今回、その実機を借りられたので、外観や使い勝手、パフォーマンスなどを詳しく紹介していこう。

パナソニック 「レッツノートQR(CF-QR4ADTCR)」

○A4より小さい12.4型2in1 PCだけど「タフさ」も健在

テレワークやハイブリッドワークが多くの企業で導入され始めた際、ビジネスパーソンを中心に注目を集めたのが14型ノートPCだ。画面が大きい割に持ち運ぶ際の負担が少ないため、据え置きでもモバイルでも使いやすいというのがその理由。筆者も少し前にメインマシンを13.3型から14型に切り替えて快適に使用している。

しかし、社会情勢が一段落して対面の仕事が増えてくるにつれ、もう少し小型の端末がほしいと思う場面も多くなってきた。そんなときにタイミングよく(狙って?)パナソニックから登場したのが「レッツノートQR」シリーズだ。

画面サイズは12.4型で、フットプリントは幅が273.2mm、奥行きが208.9mmとA4用紙よりもひと回り小さい。厚みも19.9mmと程よくスリム。質量は付属の標準バッテリーを搭載した状態で約1.029kg、別売の軽量バッテリーなら約0.949kgと1kgを切ってしまう。

14型に慣れた身には「12型ってこんなに小さかったっけ?」と驚いてしまうくらい、コンパクトで持ち運びやすい。それでいてレッツノートならではのボンネット構造を採用したマグネシウム合金の頑丈ボディは健在で、100kgfの加圧振動試験や76cmの落下試験などをクリアしているほど堅牢性が高い。これなら荷物が多い日でもバッグの隙間に押し込んで気軽に持ち出すことが可能だ。

フットプリントはA4用紙よりも小さく、幅が273.2mm、奥行きが208.9mmとなっている

本体前面は、電源スイッチとイヤホンジャックのみとシンプルだ

本体背面。本体の厚みは約19.9mmで、最近のノートPCとしては特別薄いわけではないが、厚みがほぼ均一なのでバッグなどへの収まりはいい

本体の素材はマグネシウム合金が採用されている。天板は他のレッツノートシリーズと同様に、ボンネット構造が採用されており堅牢性が高い

本体カラーはカームグレイとジェットブラックの2種類で、試用機はカームグレイが採用されていた。色の名称に“calm”とついていることからもわかるように落ち着いたグレイ(というよりはシルバー)で、ビジネスシーンでも目立ちすぎず違和感なく使えそうだ。

ちなみに、パナソニックには以前より12.4型ノートPCとして「SR」シリーズがあるが、「QR」はそのSRを2in1化したものとなる。

そのため本体サイズがまったく同じで、主要パーツも共通のものを使用している。インタフェースも変わらず、本体左側面にHDMI、USB Type-C(Thunderbolt 4)×2、USB Type-A(5Gbps)、LAN端子を、本体右側面にアナログRGB、USB Type-A(5Gbps)×2、SDメモリーカードスロット、セキュリティスロットを搭載している。

コンパクトな本体にもかかわらず、ビジネスシーンでニーズの高い有線LANポートやアナログRGBポートをしっかり搭載しているのは法人向けに強いレッツノートらしい特徴だ。

本体左側面にはHDMI、USB Type-C(Thunderbolt 4)×2、USB Type-A(5Gbps)、LAN端子が搭載されている

本体右側面にはアナログRGB、USB Type-A(5Gbps)×2、SDメモリーカードスロット、セキュリティスロットが搭載されている

●ディスプレイが360度回転してタブレットに早変わり

レッツノートQRはコンバーチブル型の2in1 PCで、ディスプレイが360度回転する構造になっている。画面を開く角度に応じて、クラムシェル、スタンド、テント、タブレットなどのさまざまなスタイルで使用することが可能だ。

実際に試してみたが、ヒンジの動きはスムーズで、止めた角度でしっかり固定されるため、膝の上や手に持った状態のような不安定な体勢でも比較的安心して使うことができた。

一般的なノートPCのように使えるクラムシェルモード

画面の角度を変えることで、スタンドモードで使用することもできる

奥行きが狭い机にも置きやすいテントモード

ディスプレイを360度回転すればタブレットとして使用できる

○アスペクト比はA4の縦横比に近い3:2

ディスプレイは、サイズが12.4インチ、アスペクト比が3:2で、解像度はFHD+(1,920×1,280ドット)となっている。

一般的なFHD(1,920×1,080ドット)に比べて縦の情報量が多いため、Web閲覧や文書作成がしやすいのがメリット。ビジネスシーンで多用されるA4の縦横比にも近いため、文書や資料の全画面表示が見やすく編集しやすかった。電子書籍や電子コミックなども見開きにした際にムダな余白が出にくいため、サクサク読み進めることができた。

ちなみに、アスペクト比が3:2の12.4型ディスプレイは、アスペクト比が16:9の14型ディスプレイと縦の長さがほぼ同じ計算になる(どちらも17.4cm前後)。そのため画面の横のスペースが余りがちな作業(文書編集やメール作成、Web閲覧など)の場合は、筆者が普段使っている14型と比べても見やすさや生産性に大きな差はなく、快適に作業できた。

液晶パネルは光沢タイプでタッチ操作にも対応している。映り込みはそれなりにあるが、黒の締まりがよく、色再現性も良好。また視野角が広くて斜めから見ても色味の変化が少ないため、ディスプレイを180度開いた状態でも画面が見やすい。取引先との打ち合わせや商談で画面を見せて情報を共有したいときなどに便利そうだ。

ディスプレイは180度開くこともできる

○お馴染みのリーフ型キーボード、配列は慣れも必要

キーボードはレッツノートお馴染みのリーフ型のキーを採用している。キーピッチが19mmあり、キーストロークも十分確保されているためタイピングはしやすい方だが、縦のピッチが15.5mmと少し狭いため多少の慣れは必要だ。

タッチパッドもレッツノート伝統の円形ホイールパッドを採用している。スクエアなタッチパッドに慣れていると一瞬戸惑うが、使い勝手に大きな差は感じなかった。むしろ円の外周をクルクルしてスクロールできるなど、この形状ならではの機能もあり、慣れると手放せなくなりそうでもある。クリックボタンが独立して設けられており、ドラッグ&ドロップなどのボタンをホールドする操作がしやすいのも好印象だ。

キーピッチは横が約19mm、縦が約15.5mmとなっている。レッツノートならではの円形のホイールパッドは機能的で使いやすい

○モバイルワークに便利な機能を多数搭載

モバイルワークやテレワーク時に気になるのが、セキュリティ対策やオンライン会議での使いやすさ。レッツノート QRには、そのための機能が数多く搭載されている。

ディスプレイ上部にはフルHDで撮影可能な約207万画素の顔認証対応カメラとマイクが内蔵されており、オンライン会議やビデオ通話などに利用することができる。またパームレスト部には指紋センサーも搭載されており、顔認証以外に指紋認証でのログインも可能だ。

ディスプレイ上部の顔認証/AIセンサー対応カメラとアレイマイク

AIセンサーも搭載されており、PC前の人物を検知して画面の状態を自動で制御する。例えばユーザーがよそ見をしたときに自動で画面を暗くし、電力の消費を抑える役に立つほか、離席時にPCを自動でロックしたり、逆にPCの前に戻ってきたときに自動でスリープ解除するようなこともできる。

ユーザー以外の顔を検知したときにポップアップアイコンで注意を促してくれたり、画面をぼかして覗き見を防ぐような使い方にも対応する。

プリインストールされているAIデバイスコントローラーでは、AIセンサーを活用したさまざまな制御が可能

離席時や着席時、覗き見を検知した際、よそ見した際のPCの挙動を細かく設定できる

このほか、オンライン会議のときに顔の位置が映像の中央に来るよう補正してくれたり、背景をぼかして部屋の状況が相手に分かりにくくしてくれるようなこともできる。明るさを補正して顔の表情を見えやすくしてくれる機能もあるので、光の状態を選べない場所で使う場合も安心だ。

音声に関しては、オンライン会議の人の声を聞き取りやすくする「COMFORTALK(コンフォトーク)」が搭載されている。これは、本体底面の高音質な「ボックス型スピーカー」と、声の周波数帯の音圧をアップするソフト「Waves MaxxAudio」、ノイズを除去して声を聞き取りやすくする「AIノイズ除去」の3機能からなる技術。

実際に試してみたが、キーボードのタイピング音や車の走行音、家電のノイズなどもしっかり抑えて、こちらの声をはっきり相手に伝えることができた。また内蔵スピーカーでも相手の声がくっきり聞き取りやすかった。これならオンライン会議のたびに環境ノイズを気にしてヘッドセットをつける必要はなさそうだ。

本体底面左右にはボックス型スピーカーが搭載されている

AIノイズ除去など、オンライン会議で役立つ機能も搭載する

●ビジネス用途には十分すぎる性能と長時間駆動が魅力

レッツノート QRシリーズは、モデルによって搭載するプロセッサが異なっており、上位モデルの「CF-QR4BFPCR」が12コアのCor i7-1360P、ベースモデルの「CF-QR4ADMCR」と「CF-QR4ADTCR」が10コアのCore i5-1335Uとなっている。下位2機種の違いはOfficeの有無で、搭載するメモリやストレージ容量などに違いはない。

今回はOfficeが搭載されていないベースモデル「CF-QR4ADTCR」を試した。主なスペックは次の通り。

○試用機の主なスペック

これらのパフォーマンスをチェックするため、「CINEBENCH R23」「PCMark 10」「3DMark」「CrystalDiskMark」などのベンチマークソフトでスコアを測ってみることにした。

まず、CPUの性能を測る「CINEBENCH R23」は、次の結果になった。

CINEBENCH R23の結果

Core i5-1335Uはモバイルノート向けの省電力性を重視したプロセッサだが、前世代の上位モデル、Core i7-1260Pに近いスコアが出ている。普段使いや文書作成などには十分すぎる性能で、写真編集などのクリエイティブ用途も快適にこなせる性能はあると期待できる。

そこで、PCの総合的なパフォーマンスをチェックするため「PCMark 10」も実行してみた。

PCMARK 10の結果

快適に動作する目安は、基本性能を示すEssentialsが4100、ビジネスアプリのパフォーマンスを示すProductivityが4500、クリエイティブアプリのパフォーマンスを示すDigital Content Creationが3450となっているが、本製品はいずれも大きく超えている。普段使いやビジネス用途だけでなく、画像編集などのクリエイティブ用途もある程度快適に行えることがわかる。

次に、グラフィックス性能のテスト「3DMark」では次の結果になった。

3DMark Night Raidの結果

CPU内蔵グラフィックスということもあって、それほどパフォーマンスが高いわけではないが、ちょっとした動画のエンコードや画像編集には十分な性能ではある。外付けの高解像度ディスプレイをつないで使ったり、オンライン会議でバーチャル背景などを利用する際も画面描画がカクカクすることなく快適に利用できるはずだ。

続いて「CrystalDiskMark」でストレージの性能も測ってみた。

CrystalDiskMarkの結果

PCIe Gen4対応のSSDを搭載しているだけあって、シーケンシャルリードは6,500MB/s前後と非常に高速。実際、データの読み込みやアプリの起動などもあまり待たされず作業できた。

バッテリーはスペック表だと約16時間駆動(JEITA2.0)となっている。そこでPCMARK10のバッテリーライフテストのうち、業務での使用を想定した「Modern Office」を実行して実際にどのくらい持つか計測してみた(なお、今回は電源モードを「バランス」、画面の明るさを50%に調節した状態でテストしている)。

その結果、11時間44分の駆動が可能だった。これだけ持てば、通常はACアダプターを一緒に持ち歩かなくても問題なさそうだ。出先では文書編集などの軽い作業しか行わないという人なら、別売の軽量バッテリーでも十分だろう。バッテリーが簡単に交換できるのもレッツノートの魅力的な特徴のひとつだ。

PCMARK 10 バッテリーテスト(Modern Office)の結果

バッテリーは簡単に取り外して交換できる

○安くはないが、幅広いシーンで活躍できる2in1 PC

360度回転するタッチ操作対応ディスプレイを搭載したパナソニックの2in1 PC、レッツノートQRシリーズ。アスペクト比3:2の12.4型液晶パネルはビジネス用途に使いやすく、オフィスでの業務もモバイルワークも快適にこなすことができる。

第13世代Coreプロセッサを搭載したことで高いパフォーマンスと長いバッテリー駆動時間を両立しており、外回りの仕事など出先で使う機会が多い人にとっては特におすすめできる製品だ。

Officeなしのベースモデルで341,000円(税込)と決して安くはないが、性能のバランスのよさや筐体の頑丈さ、バッテリー交換が容易なメンテナンス性の高さ、国内メーカーならではの充実したサポート体制などを考えれば、十分納得できる価格ではある。信頼性が高く使い勝手のよいノートPCを探している人には、ぜひ注目してほしい製品だ。

ビジネスシーンで役立つ機能を数多く搭載したパナソニックの2in1 PC、レッツノートQRシリーズ