エンドロールはきらめいて-えいがをつくるひと-上條葉月

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エンドロールの暗闇できらめく、映画と生きるプロフェッショナルにインタビュー。第2回目のゲストは字幕翻訳の上條葉月さんです。

上條葉月 字幕翻訳

かみじょう・はづき/4月29日公開の『私、オルガ・ヘプナロヴァー』、6月16日公開の『アシスタント』などの字幕翻訳を手掛ける。新宿ゴールデン街〈西瓜糖〉に立つことも。Twitter:___8azuki

観客のノイズにならないことを最優先に。

「字幕をやっている」と言うと英語がペラペラだと思われがちなのですが、そんなことはなくて。語学習得のために本腰を入れて取り組んだことといえば、受験勉強くらいなんです。小学生の頃、大好きなジョニー・デップが何を言っているのか知りたくて『パイレーツ・オブ・カリビアン』を英語字幕で観ていたことはありましたが(笑)。この仕事には聞く力や話す力よりも、読解能力や、それをどう日本語に変換するかという発想の方が必要なのだと思います。

加えて、一つの画面に何文字まで字幕を入れていいのかなどの基礎知識が必要になります。私はジャン=リュック・ゴダール作品などの字幕を手掛けた寺尾次郎さんの講座でそれらを学びました。印象に残っているのは、「字幕は見る文字だ」という話です。漢字ばかりでは硬い印象になってしまう一方、平仮名ばかりが並んでいても読みづらい。字幕者は見た目のバランスにまで気を配っているのだと初めて知った時は驚きました。

そうした様々な要素を考慮しながら作業を進めるので、かかる時間もまちまち。私はだいたい10日以内で1本の字幕を完成させることが多いです。ただ、ケリー・ライカートの『ウェンディ&ルーシー』なんかは、どこにも行けない主人公の心許なさがスッと理解できたので、一気に字幕を完成させることができました。

翻訳作業をしていると、言葉の受け取り方が時代によって変化することに難しさを感じます。最近だと、いわゆる「女言葉(〜だわ、など)」をどう捉えるかについても、よく考えていて。字幕が観客のノイズにならないことを最優先に考えながら、いい塩梅を探っていきたいです。

『ウェンディ&ルーシー』。仕事を求め、愛犬と旅するウェンディの姿を描く。© 2008 Field Guide Films LLC井戸沼紀美 インタビュアー

いどぬま・きみ/映画上映と執筆を軸にしたプロジェクト「肌蹴る光線」を主宰。映画に関するコラムやエッセイを『キネマ旬報』『ユリイカ』等で執筆。

text : Kimi Idonuma edit : Wakaba Nakazato

No. 1221

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