マテラッツィとルイ・コスタ…歴史に刻まれるミラノダービーの伝説写真は奇跡の1枚だった!撮影カメラマンの秘話がおもしろい

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UEFAチャンピオンズリーグの準決勝で激突するインテルとミラン。

両者がCLの舞台で闘うのは、2005年以来18年ぶりのことだ。

ただ、2004-05シーズンの準々決勝で激突した当時の対決は後味の悪い幕切れだった。

インテルが敗戦濃厚となった2ndレグの後半にインテルファンが投げ込んだ発煙筒がミランGKジダに当たり、試合は打ち切りになったのだ。その後、インテルにはUEFA大会4試合を無観客開催とする処分も下された。

ただ、その一戦ではサッカー史に残る写真も生まれた。インテルDFマルコ・マテラッツィがミランMFマヌエル・ルイ・コスタの肩に手をかけたあの一枚だ。

『Guardian』は、この写真を撮影したステファーノ・レランディーニさんにインタビューを行った。

当時、Reutersで働いていたレランディーニさんは、2人が体格だけでなく、キャラクターも対照的であることからこの瞬間に惹かれたそう。

友情さ。

あの写真はサッカーが単なるサポーター同士の闘いではないことを思い出させてくれる。

金のためだけでもないし、単なるビジネスでもない。

違うチームの選手たちも友人だし、彼らはレストランで一緒に食事をしたり、自由な時間を一緒に過ごすこともある。

あの写真を見ると、サッカーはこの世で最も美しいゲームなんだと思い知らされる。

私はあの瞬間の空気感や状況を伝えられるような写真を撮ろうとカメラを構えていた。

突然、私はとまった。マテラッツィとルイ・コスタが隣同士になっているのが見えたからね。

マテラッツィの評判はあまり良くなかった。本当にハードな選手だったし、どんな手を使ってでも勝つタイプだった。それを後に2006年W杯(ジダンから頭突きされた事件)で目の当たりにすることになる。

一方、ルイ・コスタはより芸術的で優しかったし、彼のプレースタイルは詩的だった。

だから、まず思ったのは『Wow、なんて不思議なんだ。まったく異なるプレースタイルの異なるチームの違う2人が、友人として隣り合わせにいる』ということだった。

(発煙筒が投げ込まれた時点で頭は試合から離れ、身の安全を考えていた)

幸いにも私は反対側にいたが、同僚たちのことが心配だった。

ジダに投げ込まれた発煙筒が当たったのを覚えている。何度か同じ状況に遭遇しているが、いいものではない。

インテルファンたちはカンビアッソのゴールが認められなかったことに激怒していて、それで爆発してしまった。彼らがそういう風に怒った時には注意しなければいけない。
ほとんどのカメラマンは、自分の体よりも機材のことを考える。『買い替えると高くつくぞ!』ってね。

(一旦ピッチから退場した)選手たちは20分ほどで戻ってきたが、試合は再開されなかった。

カメラマンとして、起きていることを知る直感がある。何かおかしなことが起きていると分かった、全てがほぼ膠着してしまっているようだった。

私は写真を撮り始めた、煙と発煙筒を背景にした選手たちがそこにいたからね。

そうしている時にマテラッツィがルイ・コスタに数秒だけ肘をかけた。そこで『もう休もう、これはクレイジーだ』と思ったので、そのイメージを写真に収めた。

メモリーカードから画像を取り出して、ノートパソコンで全ての写真をチェックした。その日は800〜900枚ほど撮っていたが、あの場面は50枚か60枚ほどだった。

マテラッツィがルイ・コスタに肘をつく有名なポーズをとっているフレームが1枚だけあった。

この試合をGoogleで検索すれば、似たような画像はたくさん出てくるが、あの瞬間を正確にとらえているのは私のだけだ。

(この写真は世界中に拡散されたが、これほど長い間多くの人達に響くものになるとは思っていなかった)

すぐには気付かなかった。他の写真とは少し違うのであれを使った。

カメラマンとしては象徴的な写真なのかということにはすぐには気付かない。取材中の出来事に集中し過ぎているからね。

最も大事なのは写真を撮ること、適切な瞬間をとらえること、試合の重要な写真をね。
その後に分かる。クライアントがその写真を使っているかや、幅広いオーディエンスがそれを気に入っているかは数日後に分かるんだ。

この写真は私たちの知識や忠誠に応じて様々に解釈できる物語をとらえている。

CL準々決勝には大勢のカメラマンがいるものだ。(他に撮影できた人はいないので)本当に一瞬の出来事だったし、私はどうにかそれを収めることができた。

(18年経っても)多くの人達が気に入ってくれて、毎年毎年やってくれることは本当に誇らしいし、嬉しい。

好奇心から検索してみたら、今ではTシャツやポスター、絵画もあった。マテラッツィも自身のTwitterに投稿していたよ!

たまにクレジットなしで使われるのはちょっと残念だ、匿名の著作物みたいに感じるからね。でも、その陰に自分がいることは分かっている。

全ての試合に足を運び、雨や寒さのなかで取材するのはすごく大変なんだ。

私は多くのサッカーイベントを取材し、何百万枚も写真を撮ってきたけれど、天まで届く1枚が撮れたことには感謝しなければいけないね。

レランディーニさん自身はこの一枚を自分のためにプリントしたり、額に入れて飾ったりしたことは一度もないそう。

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ただ、18年ぶりとなるCLでのミラノダービーを前に「娘のためにTシャツになったのを買おうかな」とも話していたとのこと。