前節のアウェー大宮戦は1−0で勝利。翁長(22番)が挙げた1点を守り抜き、首位を堅持した。写真:田中研治(サッカーダイジェスト写真部)

写真拡大 (全2枚)

 13節を終えてJ2首位のFC町田ゼルビアは、ここまでリーグ最少の6失点。「みんなが失点0に価値を感じて、1失点にアレルギー反応を起こすチームにならないと」と語る黒田剛監督の守備へのこだわりが表われている結果だろう。

 開幕前に選手を大幅に入れ替え、様変わりした町田をいかにして堅守のチームにまとめあげたのか。31歳の熟練ボランチ、下田北斗が明かした黒田監督の指導は「プロになって言われなかったので新鮮」な内容だという。

「身体を張るというのは大前提だから、プロになってからあまり指摘されてこなかったです。でも黒田監督は映像を駆使しながら、本当に細部までこだわったシュートブロックを指導してくれています。新鮮ですね。

 それだけではなく、クロスに対する身体の向きについても指示が細かい。マークを外したシーンも分析してくれて、『こういう向きで相手を見たほうが良かったよね』とかも。プロになるとそれぞれの感覚でやっていた個人戦術について徹底的に教えてくれて、改めて大事だなと感じさせられています」

 守備を重視するのは、何より勝つためだろう。黒田監督の勝利へのこだわり方についても、下田は「僕のプロ生活ではあまりいなかった」と驚いた。
 
「もちろんプロは全員、勝ちにこだわるのは大前提としてありますが、自分たちのサッカースタイルを表現して勝利を目ざす監督が多いなか、黒田監督は最優先事項に勝利がある。その次に勝つために何をしなければいけないかを提示してくれています」

 勝利のためにディフェンスを磨き上げ、無失点を重要視するスタイルにブレはなく、下田も「黒田監督はJ2優勝という目標に対してブレず、チームに求める内容も一貫しているので、選手としては迷いが生じにくい」と述べる。

 そして2017年の湘南でのJ2制覇、2018年と2020年の川崎でのJ1優勝経験を引き合いに、こうも話した。

「湘南だったら走り勝つ、川崎だったら攻撃。リーグのカテゴリーに関わらず、優勝できるチームには誰が見てもイメージしやすいアイデンティティがありました。スタイルは異なりますが町田には堅守というブレない戦い方があるので、貫いていけば勝てる自信がある」
 
 下田に話を聞く前、黒田監督は囲み取材でこんな心情を語っていた。

「心配性で細かいことが気になるから、常にいろんなことを考えているんです。家でもね。そういう性格だからこそ、いろんなところに手を加えています。結果につながるかは、水物なので分からない部分もありますが、サッカーは不確定要素が多いので、少しでも確定に近づけられるよう、細かく手を加える作業が今は功を奏しているかもしれません。

 そして選手たちがうま味を覚え、こうやれば勝てるというのを肌感覚で覚えてきて、彼らが自信を持っていけるのが一番良い」
 
 黒田監督は「選手から話は聞いていないですけど」と前置きしたうえで、「選手たちも納得感を持ってやっていると思う」と言ったが、下田のコメントを聞けば指揮官の努力が選手に伝わっているのは明らかだ。

 選手と監督の意志が通じ合っているチームには一体感があり、ゴールデンウィーク中に町田の練習場に足を運んだ熱心なサポーターも、雰囲気の良いトレーニングを見て楽しそうな様子だった。

 単なる勢いではない町田の実力は本物ではないだろうか。少なくとも、かなり良い道のりを歩んでいるとは思う。

取材・文●志水麗鑑

【PHOTO】大宮に駆けつけたFC町田ゼルビアサポーター!