全国転勤がある公務員の職に就き、現在も単身赴任のフルタイムで働く杏さん(仮名・35歳)。子どもが欲しい夫と価値観の違いが浮き彫りになるなか、夫の体に異変が。「2年以上のセックスレスですが、妊活に向けて話し合いを進めたい」と、心境の変化が訪れるまでのお話を詳しく伺いました。

レス期間が2年超。冷えきった夫婦関係が雪解けに

幼少期の過酷な経験や実母との関係に悩み、妊活に前向きになれないというお話を前回しました。

単身赴任中の私。コロナも落ち着き、以前よりも夫と会える頻度は増えたのですが、いまだにレスのまま。夫婦関係にヒビが入るきっかけとなった夫の実家へも、「仕事を辞めろ」と言われた2年前のお盆以降、顔を出していません。

そんなある日、夫が腹痛で倒れてしまったのです。

●苦しみもだえる夫。腹痛の原因は…

たまたま週末で一緒に過ごしていた日の夜でした。寝ていたら夫に起こされたのですが、うめき声をあげていてただごとではない様子。顔色も真っ青です。すぐにタクシーを呼んで、救急外来に駆け込みました。

タクシーのなかでも、ちょっとの揺れで悲鳴を上げているような状態。道はすいていて、10分くらいで近くの病院へ到着しましたが、体感だともっと長く感じました。救急車を呼べばよかった、このまま死んじゃうんじゃないかと最悪の事態が頭をよぎったほど。

あんなに大好きで結婚したのに、この2年、私はなにをやっていたんだろう…。夫の検査中、後悔で押しつぶされそうでした。

医師の説明によると、腹痛の原因は尿管結石。体の外から衝撃波を当てて粉砕する方法もあるそうなのですが、夫の場合、3mm程度なので自然排出を待ちましょうということになりました。

●離れて暮らしていたことで、血尿の話も知らず…

じつは、数日前から血尿も出ていたそう。このとき初めて知りました。私は妻なのに、全然夫の体調のことを気遣えていなかったなと反省。

以前なら、単身赴任生活といっても、平日に仕事が終わったら、どんな1日を過ごしたのかなど何気ないやり取りを電話やメールでちょいちょいしていました。レスになってからのこの2年は、いつ帰るとか事務的なスケジュールの連絡ばかりになっていたのです。

●失うかもしれないという恐怖。夫への愛を再確認できた

病院へ向かうタクシーのなかで、本気で夫を失ってしまうかもしれないという怖さを感じました。命に別条がないことに心底安堵できた瞬間、夫への愛を再確認。この人は、私の大切な人。

帰宅後は、尿管結石を出すためにひたすら水をガブ飲みしていました。痛み止めの座薬を入れてあげたときに、「この猫のポーズしてると痛みが和らぐ」という夫の姿がかわいらしく、久しぶりに二人で大笑い。

肝心の尿管結石は幸いすぐに排出されたのですが、なんとラグビーボールのような形状をしていて、いちばん長い部分は7mmもあったのです。

「角度の問題かな? 3mmって言われてたのに、こんなに大きかったよ〜」と誇らしげに報告してくる夫。夫婦でこんな風に和やかな雰囲気の時間を過ごすことが久しぶりで、夫の腹痛はかわいそうだったけれど、なんとなくうれしい気持ちになりました。

高齢出産になるけれど、この人の子どもを産みたい

この2年間で、私が子どもを欲しがっていないということを夫は感じ取って、レスや妊活のことについてはタブーというか、一切触れられないような状況が続いていました。

でも今回の夫の病気がきっかけで、いつまでも元気でいるわけじゃない、ちゃんと自分の気持ちを話し合っておこうと、お互い気がつくことができました。

●あとは私がアクションを起こすだけ

セックスを再開させるかどうかは、私の問題になっています。こちらが言い出すだけなのだと分かってはいるのですが、2年もあいてしまうと、なかなかその一歩が踏み出せないでいます。

けれど大好きな夫の子どもが欲しいという気持ちが湧き、私の中で確信に変わってきていて、勇気を出さなきゃと…。夫の実家もこのまま永遠にスルーするわけにもいかないので、どこかで折り合いをつけねばいけないですね。

●相変わらずズレている実母との距離の取り方にも変化が

一方、もう一つネックになっていた私の母親ですが、相変わらず私や妹たちに「このままだと家系が途絶えてしまう。跡継ぎができなかったらうちのお墓の管理はどうなるの?」と、遠い未来の不安をこぼしてきます。

「私たちの代になったら墓じまいでもするよ」と言ったら「それじゃ先祖に申し訳が立たない」などとブチぎれてきました。昔だったら、母に強い口調で言われたらそういうものなのかと思っていたかもしれません。でも社会へ出て、結婚して、自分の実家を客観的に見てみると、やっぱりちょっとズレてるよなと思い、意図的に距離をおけるようになりました。

世間体どころか、すでにいない先祖を気にして、今生きている妹たちが不幸になってはかわいそう。私から「もう家のことは気にしないで、出て行っちゃいなよ」とも話しています。

●母親の手を借りなくたって大丈夫という自信も

裁判官という仕事は、職責の重さが常にのしかかるものの、仕事の裁量は広く、最近はうまくコントロールできるようになりました。いつか子どもを授かれたら、充実した福利厚生をうまく使いながら実母は頼らず、保育園やシッターさんなどの外部のプロの手をフル活用することを考えています。

あと夫が「尿管結石の痛みは出産と同じくらい」と書いてあるネット記事を読んだらしく「僕は出産と同等の痛みの経験者だから、杏ちゃんがお産のときはしっかりサポートしてあげられるよ」と胸を張っていて、妊活を始めやすい空気感になってきました。コロナの影響で、会社員の夫側が完全リモートの在宅勤務になったので、一緒に住もうかという計画も出ています。

それに年齢的にも、私はもうすぐ36歳。高齢出産はリスクが高まります。うちの母親が、いちばん下の四女を産んだとき40歳だったのですが、「早産になって大変だった」と言っていたので、向こう2〜3年で授かることが直近の目標です。

●もう悩まない!人生のビジョンがより鮮明に

仕事はいったんセーブしたとしても、いつかキャッチアップがききますが、夫婦関係や健康の部分は、壊れてしまったら取り返しがつかなくなるかもしれません。自分の人生における優先順位を、立ち止まってゆっくり考える時期にきていると感じています。もちろん、夫と一緒に!

たとえ意見が対立したとしても、最近はお互い本音をさらけ出せる関係になったので、人生プランをきちんと話し合って同じ方向を向いて生きていきたいなと思っています。