今年のゴールデンウィークは大型連休をとる人も多いのではないでしょうか? 仕事から長く離れることで、連休明けに不調を感じる人も多くいると言います。本気で会社に行きたくないと感じたら、もしかしたら適応障害の危険性もあると語るのは、うつメンタルコーチで公認心理師の川本義巳さん。その理由と対処について教えてくれました。

連休明け、メンタル不調にご用心。公認心理師が伝えたいこと

今年のゴールデンウイークは休み方によっては10連休になる人もいるとか。数年ぶりに行動制限のない連休が訪れることからお出かけをする人も多いのではないでしょうか?

また、新入社員など新しい環境で新年度をスタートした人にとっては、慣れない環境で頑張ってきてようやく一息をつける瞬間でもあったりします。私も何度か経験がありますが、初めての環境って慣れるまで本当に疲れますよね。ストレスもかかり、そんなに仕事をしていなくても、毎日疲弊していたのを思い出します。

また、この時期は気温変動も大きいので体調も崩しやすい傾向があり、これもまたストレスを増幅する要因にもなるので1年を通してもしんどい時季といえるかも知れません。

●連休明けの出社が憂鬱すぎるのは適応障害の前触れ?

ゴールデンウイークは、その疲れを癒やす期間とも言えますが、逆に長く休むことから、「連休明けの出社が辛い」と感じる人もいるかもしれません。これが比較的軽い感じならまだ大丈夫なのですが、本気で「行きたくない」と思うようなら要注意。それは適応障害の前触れかもしれないのです。

私たちは人生の中でいくつかの大きなイベントを迎えます。結婚。出産、介護などもそうですが、ほぼ全員に訪れるといってもいいものとして、入学や就職があります。

これらのイベントは喜ばしいことでもあったりするのですが、同時にストレスを与えるものにもなります。そしてこのストレスに対して私たちは、自分をコントロールしストレスを緩和させようとします。例えばだれかと話をするとか、趣味に没頭するとか、休養をとるとか。またはその場の環境から違う環境に移るということで対処しようとします。この対処行動を適応といいます。

●ストレスの原因が始まって早期の段階で対処が必要

ところが適応に失敗すると、適応機制というシステムが働きます。適応機制には防衛・逃避・攻撃の3つがあって、それぞれのやり方で再度適応しようとします。

適応機制の中には前向きなものもありますが、人のせいにしたり、現実逃避したくなったりというものもあります。これらは結局、問題を先送りしてしまうので、ストレスはいつまでたってもなくなりません。こういう状態がしばらく続き、仕事や生活に支障が出るようになったきに「適応障害」という診断が下されます。精神障害の診断・統計マニュアル第5版「DSM―5」によると「ストレスの原因が始まってから3か月以内に情動面または行動面の症状が出現する」と言われています。

適応障害は「明確なストレスの原因がある」とされていて、その原因がなくなってから半年以内に消滅するとも言われています。そのため、初期の段階でしかも比較的自分が使える時間が持てるゴールデンウイーク中に何らかのケアをすることをおすすめします。

●安心する人と過ごしてストレスを軽減させること

ケアの方法ですが、いろいろある中でまず絶対にやってほしいと思うのが「だれかと一緒に過ごす」ということ。これは以前からお伝えしてきていますが、心理的な問題は孤立してしまうと悪化する傾向があります。それを防ぐためにもだれか安心できる相手と一緒に過ごす時間をつくるようにしましょう。

次にどんな適応機制が働いているのかを客観的に観察するようにしてみてください。自分を卑下したり、だれかのせいにしたりなどしていないでしょうか? これらの方法は症状を長引かせるだけで解決にはつながりません。まずは100点満点を目指さなくてもいいので、「これならできる」ということを見つけてやってみるようにしてください。そしてそれを少しずつ増やすようにしていくことをおすすめします。言い尽くされた方法ではありますが、笑うことや体を動かすことはやっぱり有効です。少しでもよい状態をつくるという習慣を身につけるとよいでしょう。

適応障害はこじらせてしまうとうつ病へと移行してしまいますので、早めのケアにこしたことはありません。ちょっとでも「なんかいやだなあ。しんどいなあ」と思ったら無理をせずに、自分なりによい方法で適応するように心がけてください。