おしゃれの本場・フランス。普段のフランス人はどんな服を着て、どのようにワードローブをそろえているのでしょうか。フランス生活文化研究・翻訳者のペレ信子さんが教えてくれました。

おしゃれなフランス人は本当に服を10着しかもたない?

重いコートをクリーニングに出して、明るい色の軽やかなおしゃれを楽しみたい季節です。
「フランス人は10着しか服を持たない」という本が世界的に流行しましたが、実際のところ、おしゃれなフランス人は洋服をどうやってそろえているのでしょうか。

【写真】定番の服を自分らしく着こなすフランス人

 

●日本人はフランス人におしゃれだと思われている

意外かもしれませんが、日本に来るフランス人が「日本人はおしゃれで驚いた」とよく言います。街を歩いている老若男女、みんながきれいな格好をしていて、なんとなく流行を押さえている印象だそうです。

以前、夫の父も夏休みに来日したとき、地下鉄に乗ってデパートに行ったのですが、ショートパンツとサンダル履きの自分の姿を呪ったと言っていました。
たしかに多くの日本人は電車に乗るようなお出かけのときは小ぎれいな格好をしますし、季節ごとにファストファッションなど利用しつつ、流行をおさえたおしゃれをしています。
ただファストファッションに頼りすぎると、道行く人とコーディネートが似てしまい、没個性になってしまうという欠点も。

 

●フランス人のワードローブのそろえ方。高級バッグは中古品で

フランスにももちろんユニクロや海外のファストファッションも存在し、若者を中心に人気です。
だからといって、だれもがシーズンごとに新しい形のデニムや流行のシルエットのシャツなどたくさん買いたす、という風ではありません。どちらかというとファストファッションのお店は基本的なTシャツやセーターをそろえたり、お金をかけずに旬のデザインに挑戦したいときに見に行くところという感じ。

ファストファッションでさえも高いと感じる若者たちが夢中になっているのは蚤の市やブロカントと呼ばれる古物屋さん。古着も扱っています。赤十字社のバザーでもよい状態の古着が見つかるそうです。

古着が苦手という方には不向きですが、おしゃれなフランス人にとってはだれともかぶらないオリジナルな服に出合える場所。
もちろん、お財布の中身を気にしなくていい方はオートクチュールという手もあります。

ブロカントで見つけた昔のディオールのバッグを大切に使っているパリジェンヌ。
フランスでは、高級ブランドの最新のコレクションのバッグを持つにふさわしいのは、それに見あった貫禄が必要だという考えも。お金さえあればだれでも持てるわけではない感じがあります。

●おしゃれなフランス人は、自分に似合う服を少しだけもつ

以前の記事でも書きましたが、フランス人は年齢に関係なく友達になるので、私には親子ほど年の離れたおしゃれな年上の友人がいます。

いつ会っても黒やナチュラルカラーのリラックスした服を着ていますが、自分に合う形を知り尽くしています。たとえば深いVネックのセーター、体のラインを拾わないけれどきれいに見えるパンツなど。それ以外のものを来ているのを見たことがありません。

コートは意外に高級ブランドのものだったりするのですが、目立ったデザインのものではなくて彼女らしい形。突飛な格好はしません。自分で決めたルールの中で服をそろえているのが感じられます。

あるとき、私が春用の軽いジャケットが欲しいと言って一緒に買い物に行きました。彼女のよく行くセレクトショップで、店員さんと彼女で私の雰囲気や背格好に合ったジャケットをいくつか選んでくれました。
その中から私が気に入ったジャケットを試着すると、お店の人が袖の長さを調節してピンで留め、「このくらいのバランスがお客様には合いますね」と言って、お店の2階にあるアトリエでお直ししてくれました。ほかの店を見て回って数時間後にはお直し完了。そしてピッタリ! 今でも大切なジャケットです。その店にまた行きたい!

 

●服を間に合わせにしない。とことん自分に似合う服にこだわる

結局おしゃれな友人が何着服を持っているかは知りません。でも自分に似合うシンプルな形と色の服、そしてパーティのためのハメを外したドレスが少し。バリエーションは少ないし、すべてが上質とも限りません。

彼女の服に対する姿勢が心に残っています。自分スタイルの服を厳選したら、じつは買わなくてもいい服がたくさんあるということをいつも思い出させてくれます。