料理研究家としてさまざまなメディアで活躍するウー・ウェンさん。13年前に発売した『ウー・ウェンの蒸しおかず』(扶桑社刊)も、版を重ねロングセラーとなっています。多くの方にレシピを発信続けているウーさんに、改めて料理の大切さについて伺いました。

料理研究家が心から伝えたい、「料理をすること」「食べること」の大切さ

――料理教室や雑誌、書籍など多方面で活躍し続けているウー・ウェンさんですが、普段の暮らしの中で大切にしていることを教えてください。

ウー・ウェンさん(以下ウー):人間は健康であれば、生きていけると思います。その生きるということに、料理、食べることは直結しています。それほど人生において大事なことなんですよね。生きている限り、食べることからは逃れられない。だったら、料理を楽しくやったほうがいいというのが私の考えです。それが、暮らしの潤いにもつながるのではないでしょうか。

――今は忙しくて料理を楽しめない人も増えているようですね。

ウー:食べて生きることは、人間の原点。毎日の生活はその原点をはずれたら、楽しくないんです。今日食べるこの1食は、人生でもう戻ってこないたった一度の食事、そう考えたら、1食だっておろそかにしていいはずがないんです。
よく「料理をがんばる」と言う人がいますが、料理をするのは、あたりまえのことであって、がんばることではないと思うんです。私たちは暮らしの中で、自分や家族に合った料理をつくっていくしかない。それはだれもが避けては通れない道です。難しく考えずに、まずはみそ汁の一杯からつくってみては? と、私はいつも言っていますね。

●レシピと真剣に向き合ってつくってみて

――巷にはさまざまな料理家さんのレシピ本があふれているものの、なかなか料理が上手にならないというお悩みも聞きます。そんな人にアドバイスをお願いします。

ウー:「まずは1回、レシピどおりにつくってみてください」と声を大にして言いたいですね。いろいろな人から話を聞くと、レシピどおりではなく自己流につくる人が多すぎます(笑)。本にのっている料理をつくりたいなら、そのレシピに対して最低限のリスペクトをもつべきです。ただ、1回つくってみたら、「うちには少ししょっぱいな」とか「もう少し火をとおしたい」など、なにかしら感じることがあるはず。それをふまえて、次からは自分のしたい味や食感にアレンジをすればいいのではないでしょうか。そうすることで、はじめてそのレシピが自分のものになり、料理が上達すると思います。

――「献立が決まらない」という悩み。どうすれば解決できますか?

ウー:献立とはいえ、自分や家族のためのものでしょう? だったら自分の体に何が必要か聞いてみてほしい。そうやってシンプルに考えればいいんです。だれかが考えた献立が、自分や家族の体調や気分に必ずしもあてはまるとは限らないんですから。基本的には、タンパク質と野菜、これさえしっかり食べていれば十分。あとは大豆製品や炭水化物を適度に組み合わせれば、栄養もおなかも満たされますよ。

――最後に、いつもパワフルなウーさんの元気の秘けつを教えてください。

ウー:毎日、時間どおりに食事をすることでしょうか。私は人との約束がない限り、食事の時間は絶対にずらしません。夜は18時30分には食べると決めているので、それまでに仕事を終わらせます。だから、寝るときはおなかがすく寸前、朝は赤ちゃんのように空腹で目が覚めます。夜遅くまで仕事をしてからごはんを食べると胃がもたれるし、生活にメリハリがつきにくいですよね。毎日3食、食事の時間を決めることで、生活にリズムが生まれて心身ともに健やかでいられる気がします。

 

『ウー・ウェンの蒸しおかず』(扶桑社刊)は、シンプルに素材を蒸したものから、シューマイ、蒸し鶏、蒸しハンバーグまで、多数のレシピを掲載。毎日のご飯づくりに役立つこと間違いなしの一冊です。