鉄道・運輸機構が札幌市に計画している北海道新幹線の車両基地の概要が明らかになりました。この車両基地にはどのような特徴があるのでしょうか。鉄道・運輸機構に「気になる点」を聞きました。

札幌の中心地に型破りな新幹線車両基地

 函館から札幌へ延伸工事が進められている北海道新幹線。その新たな車両基地の姿が、2023年2月28日公表されました。

この車両基地、一般的に想像される「電車の車両基地」とはかけ離れた、「異形」とも言える形状になっており、ファンの間では衝撃が走っています。いったいどんな形で、なぜそのような特異な形に決まったのでしょうか。


北海道新幹線の車両(画像:写真AC)。

 現在、北海道新幹線の車両基地は、北斗市にある「函館新幹線総合車両所」のみ。北海道新幹線の全車両が所属し、車両の保留、検査、融雪作業等が行われる大規模な車両基地で、札幌延伸に合わせて留置線を増やす計画があります。しかしそれだけでは対応できず、各種作業を行う車両基地がもうひとつ新たに必要となってきます。それが、今回新設される「札幌車両基地」というわけです。
 
 この札幌車両基地の「異形さ」というのは、高架形式で防雪上屋によってすっぽり覆われていること。そして「細長い」ということです。

 鉄道・運輸機構の広報戦略課は「整備新幹線において、高架形式の車両基地は、現時点で札幌車両基地のみです」と話します。また、車両基地の全面が上屋で覆われている例も、他には無いとのこと。一般的な車両基地は、もちろん着発収容線など車両を留置する一部区間が覆われているケースは多いですが、基本的に大部分が青空の下にあります。

 さらに異例なのが「細長い車両基地」という点で、その延長はなんと約1.3キロ。新幹線札幌駅から、在来線の次の駅である苗穂駅付近まで、札幌市の中心市街地を縫うように、延々と伸びていく構造です。

1駅間分もある「細長い車両基地」なぜこうなった

 通常の車両基地といえば、留置線が何本も横並びにずらりと並行して広がっているイメージが強いでしょう。しかし細長構造の札幌車両基地は違います。札幌駅側から近い順に、車両を留置する「着発収容庫」、車両検査や融雪作業を行う「仕業検査庫」、保守用車両の整備・留置する「保守基地」と、複数の目的を持つ作業エリアが、進行方向に「直列に」並んでいるのです。

 札幌駅からは2本の線路が伸びて着発収容庫、仕業検査庫と続いて行き止まり。その隣に着発収容庫をバイパスする3本目の線路が伸び、仕業検査庫へダイレクトに車両を運ぶことができます。その3本目の線路はそのまま奥へ伸び、3本の線路へ枝分かれして保守基地となります。

 その中に入る新幹線の車両数は、「着発収容庫に2編成、仕業検査庫に2編成収容可能で、全体で4編成収容可能」(同)とのこと。やや意外だったのは、細長構造の収容庫内で、新幹線の「縦列停車」については「想定していません」とのことでした。

 このような細長い形状の車両基地になった理由については、鉄道・運輸機構によると「車両基地に必要となる面積や運用する営業主体の観点で検討し、札幌車両基地は札幌〜苗穂間に高架構造で設置することが適切と判断しました」としています。

 ところで、苗穂駅には隣接してJR北海道の在来線車両を管理する「苗穂工場」や車両基地「苗穂運転所」があります。もしかして、新幹線の保守基地や検査庫を苗穂まで延々と引いてきたのは、これらの在来線工場・車両基地との設備・人員の兼ね合いを考えたものなのでしょうか? JR北海道の広報担当に聞いたところ「そのような意図はありません」とのことでした。
  
 札幌市の中心部に巨大な構造物が出現することになりますが、車両基地の外壁の色、素材については検討中としています。また、外から車両基地内の新幹線車両が見えるように窓を設置する計画については「現時点では想定していません」とのことでした。
 
 今後のスケジュールは、今年6月から工事に着手し、高架橋と防雪上家工事を2027年度までに完了させる予定。設備工事や検査、試運転を経て、2030年度末までの完成を目指すとしています。