ANA機出発前のナゾ呪文?「セットスライドバー」の意味とは 昔は違う言葉だった
ANA機内の写真とともに「セットスライドバー」とSNS投稿する人、いるいる!
重要な保安業務「ドアモードの切り替え」を意味
出発直前の旅客機では、CA(客室乗務員)業務の責任者「チーフパーサー」が、おもに機内の各エリアを担当するほかのCAに向け、業務指示のアナウンスをすることが一般的です。そのアナウンスのなかでユニークなのがANA(全日空)機。ドアが閉まった直後に「セット スライド バー(Set Slide Bar)」という、聞き慣れない業務指示がチーフパーサーからアナウンスで発出されるのです。これはどういった意味で、由来はなんなのでしょうか。
ANAの旅客機(乗りものニュース編集部撮影)。
ANA広報部によると、これは「出発前のドア操作を実施するための業務指示」といいます。
飛行機のドアには、ふたつのモードがあります。この差は、開けたときに緊急脱出用スライド(脱出シュート)が出るかというところです。
飛行機が動いているときは、万一の有事の際、ただちに旅客が機内から脱出できるよう、客室ドアを開けたらスライドが膨らみ、勢いよく射出するようになっています。一方、地上での駐機時は、人の乗り降りのためドアを開けても、スライドが出てしまわないようCAが設定を切り替えます。このドアモードの切り替えは、CAの業務の中でも重要なもののひとつです。
そのため、CAはフライトのたびにアナウンスをし、その作業を実施・確認することが一般的です。しかし一方で国内の航空会社は、その切り替えの業務指示の文言は、航空会社ごとに定められている傾向があります。ANAの場合は、これが「セット スライド バー」にあたります。
なぜ違う言葉に変更?「スライドバー」とはなんなのか
このドアモード切り替えを意味するANA機出発前の業務指示である「セット スライド バー」、実は同社では、かつて違う言い回しでした。ANAによると、「セット スライド バー」の文言が使用されたのは、2016年12月からとのこと。それ以前は「ドアーズ フォー ディパーチャー(Doors for Departure)」という言い回しだったそうです。
2019年に導入された国内線用777-200の普通席。全席個人モニターが搭載されている(2019年、乗りものニュース編集部撮影)。
文言の変更についてANAは「より業務の目的に合わせた行動を指示するため」としています。従来の「ドアーズ フォー ディパーチャー」の場合は、直訳すると「出発するためのドア」「出発の扉」など婉曲的にもとらえられる表現なのに対し、「セット スライド バー」は「スライドのバーをセットせよ」で、直接的な表現となっています。
しかし、この「スライドバー」はどのような由来なのでしょうか。調べによると、「スライド」は脱出用スライドのことを指し、「バー」はスライドを降ろすための「ガートバー(Girt Bar)」というパーツを指すようです。
アメリカの旅行メディア「ザ・ポインツ・ガイ(The Points Guy)」によると、ガートバーをドアのフレームと接続することで、スライドが出るようになるそう。現代の旅客機では、ドアのレバーなどを動かす事で、このバーが機体側に固定され、スライドが出るモデルが多くなっています。なお、ボーイング737シリーズなど一部モデルでは、レバーによる操作ではなく、実際に「バー」をドアにセットするシーンも見られます。