全席「“めちゃ広”エコノミー」のみ!…なぜ? ANA系新航空「Air Japan」斬新客室の工夫がスゴイ
ANA(全日空)グループが展開する新たな国際線航空会社「Air Japan」。LCCでも様々な座席やクラスが打ち出されているなかで、同社はあえて「全席エコノミー」を採用しました。しかし、「フツーのエコノミー」とは一線を画す工夫が満載です。
324席オールエコノミー、意図は?
ANA(全日空)グループが展開する新たな国際線航空会社「Air Japan」。2024年2月に就航を予定している同社の客室仕様やサービス概要の一部が、公開されました。「LCCとフルサービス両方の良いところをあわせた新しいビジネスモデル」とするAir Japanですが、客室はオールエコノミークラスという仕様が導入されています。どのような意図なのでしょうか。
「Air Japan」のシート仕様や機内サービスなどの発表会の様子(2023年3月9日、乗りものニュース編集部撮影)。
「Air Japan」は、これまでANAブランドとして短・中距離国際線の運航を担当してきた傘下の航空会社「エアージャパン」を母体とし、これを発展させた形です。飛行機は、すでにANAグループで使用しているボーイング787-8を活用、324席の客席を設置し、東南アジア路線をおもに担当する予定です。
ただ2023年現在、中距離・長距離を主戦場とする国際線LCCでは、エコノミークラスのほか、上位クラスを設定する会社も多く存在します。そのようななかであえて1クラスの仕様とした意図を、Air Japanの峯口秀喜社長は次のように話します。
「上位クラスを設けると、どうしてもエコノミークラスを狭くせざるを得ません。そのためにエコノミークラスだけにし、1席あたりのシートピッチ(座席の前後間隔)を広くすれば、より多くのお客様に楽しんでいただけれるのではというのが、エコノミーのみとした意図です」
このようなAir Japanのエコノミークラスシートですが、同社は、一般的なエコノミークラスのものとは少し異なる仕様が導入されていることをアピールしています。
「ただのエコノミーじゃない!」Air Japanの高スペックエコノミー
Air Japanのシートピッチは、32インチ(約81センチ)で、これは一般的なエコノミークラスを上回るものと同社はコメントしています。実際に座ってみると、たしかに膝と前席背もたれとのスペースが、少なくとも多くのLCC系とは一線を画す広さ。フルサービスなみ、もしくはそれ以上かもしれない……といった感覚でした。
各シートには、スマートフォンやタブレット端末を充電できるよう、Type-AおよびType-Cの2種類のUSBポートとタブレットホルダ一が設置されています。また同社は、機内プログラムをスマートフォンやタブレットで見られるサービスを無料提供する予定で、機内の過ごし方のひとつは「自分のデジタルデバイスでコンテンツを見る」ということになりそうです。
「Air Japan」のシート仕様や機内サービスなどの発表会の様子(2023年3月9日、乗りものニュース編集部撮影)。
一方で、フルサービスキャリアの国際線エコノミークラスでは一般的な設備である「個人モニター」は設置されていません。担当者によるとこれは「広さ」を優先させた結果で、「このことで座席の背もたれ部分をスリムにでき、1席1席のシートピッチをしっかり確保しながら、客席数も増やすことができる」としています。
そしてAir Japanは、シートの強みのひとつとして、リクライニング機能を掲げています。担当者によると一般的なエコノミークラスのリクライニング幅は、3〜4インチとされているなか、Air Japanのものは6インチまで倒れる仕様となっているとのこと。
またリクライニング方法に工夫が凝らされており、前席の旅客がリクライニング姿勢をとった場合、シート上部だけが倒れる仕様に。ウリとしている足元のスペースは、リクライニングされても、通常時と変わらずに確保できるように機構が工夫されていそうです。
懸念は「ライバルも導入の『無料機内Wi-Fi』がどうなるのか」
シートはグレーの合皮でカバーされたものが採用されています。担当者によると合皮は座り心地の良さもありつつ、一般的な素材として使われている本革や塩化ビニールなどと比べ、最大2分の1から3分の2程度まで軽い素材で、機体の軽量化に寄与しているのだとか。
座り心地としては比較的柔らかめの座面となっており、筆者が体験で座っている限りでは「シートが硬すぎてお尻が痛くなりそう」といったものではありませんでした。
「Air Japan」のシート仕様や機内サービスなどの発表会の様子(2023年3月9日、乗りものニュース編集部撮影)。
なお、担当者によると、機内食や水を始めとするドリンク類は有料販売を予定しているとのこと。機内食は今後メニューが決まる予定としているものの、事前予約・当日購入から選定できるようにするとのことです。
このように機内の概要について明らかになってきたAir Japanですが、今後、「Wi-Fiを用いた地上との通信サービスが無料提供されるのか」というのが旅客にとっては大きなポイントとなりそうです。
日本の国際線専用LCCの先駆けといえるJAL(日本航空)系の「ZIPAIR」では、機内モニターを廃するかわりに、フルサービスでも有料が多数であるWi-Fi通信サービスを無料化しました。筆者も搭乗したさい、このサービスにより、モニターがなくても全く退屈せずに過ごすことができました。現在Air Japanはこのサービスについて「金額がかかるかどうかは後日発表する」としていますが、これが無料化されることを大いに期待したいところです。
就航地などは今後発表される予定ですが、今後Air Japanの就航によって、海外へ安く、そして快適に旅行できる選択肢が、またひとつ増えることは間違いないでしょう。