「六丁目」じゃないの? 仙台地下鉄の謎駅名「六丁の目」にまつわる「ありがたいお話」とは
仙台市地下鉄東西線の駅に「六丁の目」という、不思議な名前の駅があります。なぜ「六丁目」ではないのでしょうか。
「新宿三丁目」というような街路地名ではなく
仙台市地下鉄東西線の駅に「六丁の目」という、不思議な名前の駅があります。「新宿三丁目」「六本木一丁目」のように、「丁目」は街区の整理番号として地名に広く用いられ、それが駅名になるケースも多いですが、仙台にある駅はなぜ「六丁目」ではなく「六丁の目」なのでしょうか。
仙台市地下鉄東西線の六丁の目駅(乗りものニュース編集部撮影)。
「六丁の目」という地名は、公式には江戸時代からすでに「六丁の目村」として存在し、1889(明治22)年の町村合併で「宮城郡七郷村」の一つの字名となり、仙台市になったあとも「六丁の目元町・北町・中町・南町・東町・西町」として残っています。つまり、その誕生のメカニズムは一般的な「〇丁目」とは異なっています。
歴史資料をひもとくと、本来は「六丁の名」あるいは「六丁の銘」だといいます。鎌倉時代に新しい仏教宗派「時宗」を立てた一遍上人が、諸国を回って念仏を広める中で、この地で石に「南無阿弥陀仏」という6文字を描いていきました。この6文字のことを「六丁の銘」として、いつしかその石がある周辺の地名になっていったと伝えられています。ただし仙台市の紹介では、6文字を書いたのは弘法大師(空海)だとしています。
また、「六丁」という言葉は、仏教用語で輪廻転生の行先である「六道」が訛ったものという説があります。さらに「目」は、中世の租税単位である「名」が変化したという説もあります。それを裏付けるように、かつて六丁目村の周囲には苦竹村、荒井村とともに「南の目村」がありました。
現在、この「六丁の銘」が刻まれた石は、付近のコミュニティセンターの脇のお堂に存置されています。中を覗き込むと、石には左右反転され鏡文字になった「南無阿弥陀仏」という6文字を確認できます。