柏でプロ4年目を迎える細谷。今季はこれまで以上に結果にこだわる。写真:鈴木颯太朗

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[インタビュー連載]パリの灯は見えたか|vol.1細谷真大/後編

 プロ入り後、順調にステップアップを果たしてきた。その一方で誰からも認められるような数字を残したわけではない。柏レイソルの絶対的なストライカーになるべく、細谷真大に今季求められるのは、言うまでもなく結果だろう。しかも、今季は2024年のパリ五輪に出場するうえでも重要なシーズンとなる。柏でのパフォーマンスはもちろん、代表チームでもU-23アジアカップの1次予選が9月に行なわれ、五輪の最終予選を兼ねた本大会も年末年始(開催時期は未定)に開催される予定だ。自身のサッカー人生を左右するうえでも大事な1年を迎える前に、大岩ジャパンを牽引するストライカーにパリへの想いと今季への意気込みを尋ねた。

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 新たなシーズンが始まる。昨季はJ1で33試合・8ゴールを記録し、キャリアハイの成績を残した細谷。大岩剛監督が指揮を執る、パリ五輪を目ざすチームでも継続してメンバーに名を連ね、ヨーロッパの強豪国と戦う経験もできた。

「(昨年)9月の欧州遠征で対戦したイタリアに対して、フィジカル面やスピード面で差を感じた」なかで、「自分の武器である裏抜けへの飛び出しは通用した」と一定の手応えを得ている。11月のスペイン・ポルトガル遠征をコンディション不良で辞退したとはいえ、大岩監督がパリ五輪世代で最も信頼しているストライカーと言っても過言ではないだろう。

 そうしたなか、パリ五輪世代の選手たちは新たなステージを目ざして走り始めた。鈴木唯人(清水→ストラスブール)や小田裕太郎(神戸→ハーツ)のように、欧州へ活路を見出した者がいれば、半田陸(山形→G大阪)のようにJ2クラブからJ1クラブへ“個人昇格”を果たしてさらなる飛躍を期す者もいる。しかし、細谷は焦っていない。自分を育ててくれたチームでやり残したことがたくさんあるからだ。

 昨季はベストヤングプレーヤー賞を受賞している。しかし――。初の個人タイトルに喜びがあったものの、少なからず悔しさがあった。「気持ちとしては嬉しい。でも、欲を言えば、もっと結果を出して選ばれたかった」。

 そうした想いが、今季に向けて気持ちを駆り立てる。「自分はここでまだまだ成長できる」という一心で新たなシーズンに臨もうとしているのもそのためだ。「まずはレイソルでタイトルを獲る」。チームのために戦う――。その姿勢にブレはない。そして、今年は今まで以上に結果を求めるつもりだ。「得点王を狙っていきたい」という言葉からも強い決意がうかがえる。

【布陣図】2023年シーズン J1全18クラブのポジション別最新序列
 
 今オフ、新たな取り組みをしたわけではない。「自主トレは自分でやっていました。グラウンドを借りて基礎的なトレーニングをずっとやって、あとはジムに行ったりするぐらい」。特筆すべきチャレンジはしていないが、愚直に自分と向き合った。「サッカーは好きでやっているので、そういった部分ではコツコツ続けられている」という幼少期から変わらない姿勢で。

 あとは個人の成長を加速させ、いかに納得できるような成績を残せるかが。クラブでのプレーが自身の成長に繋がるし、そうでなければ大岩ジャパンのメンバーにも残れない。「選ばれ続けたいという想いがあるので、レイソルで結果を残し続けたい」と言葉に力をこめる。

 特にパリ五輪の予選がスタートする代表チームではシビアな戦いが続く。だからこそ、細谷にはストライカーとしてより決定的な仕事が求められる。大岩監督のもとで1年間プレーし、手応えは十分。「監督から求められていることは、自分の中で理解してプレーできている。本当に違和感なくやれている」。周りとのコンビネーションも成熟しており、1年間一緒にプレーしてきたことで、連係面も大きく向上した。
 
 4−3−3の最前線でファーストディフェンダーとしての役割はもちろん、ゴールを奪うパターンもバリエーションが増えつつある。代表では今まであまり決めてこなかった、セットプレーからヘディングで奪うゴールもあった。

 だが、目に見える結果が残せなければ意味がない。他の選手にエースストライカーの座を取って代わられる可能性も決して小さくないだろう。「気が抜けない。常に危機感を自分は持っていますし、怪我で離脱しないようにコンディションにも常に気を配って意識しながらやっていかないといけない」と本人が言い切るように、自分の立場は決して安泰ではない。

 その一方で、チームの主軸としての責任が増したのは事実だ。その重さは本人も理解している。「日の丸をつけて戦う以上は、本当に責任を背負わないといけない」。そうした言葉からも、1年前と比べて自身が置かれている状況が、まるで違うことを理解している様子が見て取れる。「俺が俺が、ではない。チーム全員でひとつの目標に100%で向かっていけたらいいと思う」と話すように、チームのことにも目を配っている。

 
 以前、パリ五輪世代のリーダー格である藤田譲瑠チマが、「選手同士の意見交換が少ない」と話していた。その点については細谷も同調し、もっとすべきだと考えている。「大きな大会では、自分たちの世代もコミュニケーションをすごく大事にしてきた」。それでも、A代表に初招集された昨夏のE-1選手権では、その活動を通じて「練習中の意見交換をすごくやっていた」と感じた。

 そうしたピッチ外の振る舞いもA代表を経験したからこそ、同年代の仲間たちに伝える役割がある。ゴールを狙いつつ、自らの経験をチームメイトに還元できるかどうかも細谷に課せられたタスクのひとつだろう。
 
「高校生の時はなかなか代表に入れていなかったので、そういった意味ではプロになって代表に選ばれて自信もついた」

 高校時代は決して日の当たる場所を歩いていたわけではない。地道に取り組んできた結果が今につながっている。少し遠回りをしたかもしれないが、パリ五輪世代を引っ張る存在にまで成長を遂げた。

 この1年でどんな結果を残すのか。決して大きなことを言う男ではないが、その言葉からは新シーズンに向けての意気込みがひしひしと伝わってくる。柏でも大岩ジャパンでもやるべきことは変わらない。「チーム全員でパリ五輪を目ざしてやっているので、出場権を掴み取りたい」と言い切るストライカーは、新たなステージを見据え、一歩ずつ歩みを進めていく。

※このシリーズ了

取材・文●松尾祐希(サッカーライター)