「脳卒中」の前兆となる症状・原因・発症しやすい人の特徴はご存知ですか?
脳卒中について、一度は耳にしたことがあると思います。聞いたことはあるけど具体的にどのような病気なのか、知らない方も多いでしょう。
脳卒中は早期に適切な処置をしないと、後遺症などが残ってしまう注意が必要な病気です。
この記事では脳卒中の原因・症状・前兆・治療方法などについて解説します。また予防方法や注意点など、普段の生活で気をつける点についてお伝えします。
脳卒中に関する正しい知識を身につけて、適切な対応ができるようにしましょう。
脳卒中の症状と原因
脳卒中はどのような病気でしょうか?
脳に栄養を与えている血管が詰まったり、破れたりすることで脳の細胞が死んでしまい、全身にさまざまな症状が出現する病気です。脳には大切な神経細胞が多く存在しています。脳の役割は全身に命令を送る司令塔です。
例えば「動きたい」「話したい」と脳が考えることで全身に指令を送り、手足を動かしたり、言葉を話したりします。そのため、脳卒中になることで全身にさまざまな症状が出現します。
症状を教えてください。
下記が特徴的な症状です。手足の麻痺・痺れ
顔の麻痺・痺れ
言葉の話しにくさ
飲み込みにくさ
目の見えにくさ
視野の狭窄
記憶ができなくなる
言葉の理解ができなくなる
言葉が出なくなる
頭痛
一般的な脳卒中の場合は上記の症状が出現することが多いです。症状が単独で出現したり、組み合わさったりして現れます。
また脳は右脳・左脳に分かれており、基本的に左右反対側の身体に指令を送っています。右脳に発症することで左の身体、左脳に発症することで右の身体に症状が出現する仕組みです。
脳卒中が発症した場合は損傷した脳と反対側に症状が出現すると覚えておきましょう。
注意点として脳の下部分に当たる脳幹部分の脳卒中では同側に症状が出現する場合もあります。また、くも膜下出血の場合は手足の動かしにくさなどの麻痺症状が出現せずに、頭痛症状だけが出ることも多いです。
発症する原因を教えてください。
高血圧・糖尿病・脂質異常症などの危険因子が原因となります。糖尿病の人では、脳卒中を発症する危険性が約2倍高くなるといったデータもあります。そのため、原因となる危険因子には注意が必要です。高血圧・喫煙では血管が脆くなり弾力性が低下し、血管が破れるリスクが増加します。
糖尿病・脂質異常症・肥満では血液がドロドロになることで血管が詰まるリスクが増加します。
どのような人が脳卒中になりやすいですか?
発症する危険因子をもっている人が脳卒中になりやすいです。生活習慣病により高血圧・糖尿病・脂質異常症など危険因子を引き起こすリスクが高くなります。生活習慣病にかからないように食事・運動など普段の生活に注意を払いリスクを管理しましょう。
脳梗塞とはどのように違うのでしょうか?
脳卒中は血管が詰まる脳梗塞と血管が破れる脳出血・くも膜下出血の大きく3種類に分類されます。そのため脳梗塞は、脳卒中といった大きな分類の内の一つとなります。脳卒中と脳梗塞は混同されやすいため、注意が必要です。
脳卒中の前兆と治療
脳卒中の前兆はありますか?
前兆として以下のような症状があります。片側の手足や顔が動かしにくくなる
片方の手足や顔が痺れる
呂律が回らない
視野の半分が見えにくくなる
激しい頭痛が起きる
歩けない
食べていても口からこぼれる
上記の症状が突然現れたら脳卒中の前兆です。
前兆症状の確認方法として簡便なFAST(ファスト)という言葉があります。FASTは顔・腕・言葉に関する質問をして、1つでも当てはまっていたら脳卒中の疑いがあります。
質問は「顔の片側がゆがむ」・「片腕に力が入らない」・「言葉が出てこない」・「呂律が回らない」です。違和感がある場合は、注意して観察しましょう。くも膜下出血は、FASTに当てはまることが少ないかもしれません。
くも膜下出血に関しては、突然の頭痛が特徴的な症状になります。また注意が必要な病気が、脳梗塞の前駆症状である一過性脳虚血発作です。
一時的に脳の血管が詰まって脳梗塞と同様の症状が出現します。名前の通り一過性であるため、すぐに脳の血流が再開して症状が改善します。
しかし一過性脳虚血発作は脳梗塞の前兆であるため、症状が改善したとしても必ず医療機関を受診しましょう。
前兆が見られた場合、救急車を呼んでも良いのでしょうか?
脳卒中の前兆が出現した場合は、必ず救急車を呼びましょう。時間が経過するほど、血管が損傷したことによる脳のダメージが大きくなります。その場合、命の危険や症状が重度になる可能性が高くなります。
発症からの時間が短ければ短いほど脳卒中に対する治療の幅が広がるため、症状改善のためにも早期受診は必須です。脳卒中は時間との勝負といえます。
脳卒中はどのような治療を行いますか?
脳卒中の基本的な治療は大きく分類すると3つになります。薬の内服
点滴治療
手術
薬の内服は症状の増悪・再発を予防します。点滴治療は損傷した脳のむくみを抑えたり、炎症を抑えたりすることが目的です。
手術は詰まった血液の塊を回収したり、破れた血管を補修する手術をしたりなどさまざまな種類の手術が行われます。
また脳梗塞には、t-PAといわれる特殊な治療があります。詰まった血管を再開させる点滴を実施することができ、脳梗塞の発症から4.5時間以内などの適応基準を満たせば可能な治療です。
脳卒中の死亡率は高いのでしょうか?
厚生労働省が出している死因(令和2年度)では脳卒中は全体の7.5%で死因別に見ると第3位となっています。また17万人の脳卒中患者様を調査したデータでは死因は全体の7.7%という結果でした。割合で見ると脳梗塞4.7%・脳出血14.6%・くも膜下出血22%といった結果となりました。
脳卒中の中でもくも膜下出血の死亡率が高い傾向にあります。また脳卒中になると、肺炎などを起こすリスクも高くなり、脳卒中が直接的な死因でなく合併症が原因で亡くなることもあります。
脳卒中の予後と予防
脳卒中は完治しますか?
脳卒中は完治が難しい病気です。脳の神経細胞は一度死んでしまうとなかなか再生することができません。しかしリハビリなどを実施することで、発症する前に近い状態まで回復が見込めます。諦めずに治療に向けて、リハビリに取り組むことが回復への近道です。
発症した場合、後遺症は残りますか?
顔や手足の動かしにくさ・痺れ・話しにくさなど、さまざまな後遺症が残る可能性があります。しかし後遺症が残ったとしても、生活に不自由がない状態にまで回復する可能性があります。そのためにも、脳卒中の前兆を感じたら早期受診を心がけましょう。
脳卒中を予防する方法を教えてください。
脳卒中の危険因子に高血圧・糖尿病・脂質異常症があります。これらの病気を引き起こさないために禁煙・正しい食事・飲酒量の調整・運動など生活習慣を見直しましょう。原因となる危険因子の指標を以下に挙げました。
血圧:140/90mmHg以下
HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー):6.5%以下
LDLコレステロール(悪玉コレステロール):140mg/dl以下
血圧は高血圧の指標・HbA1cは糖尿病の指標・LDLコレステロールは脂質異常症の指標です。
血圧の管理・血糖のコントロール・LDLコレステロールのコントロールなどが予防のために必要になります。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
脳卒中の発症には、生活習慣病が原因になる危険因子があります。そのため生活習慣の改善を心がけて危険因子を作らない生活を送りましょう。また前兆が出現した場合は様子をみるのではなく、救急車を呼ぶなど、医療機関へ早めの受診を進めてください。脳卒中は時間との勝負です。早期に医師の診察を受けて適切な治療を受けることが、改善への近道になります。
編集部まとめ
脳の役割は全身へ指令を送ることです。脳卒中により脳がダメージを受けることで、全身にさまざまな症状が出現します。
生活習慣を整え、危険因子である高血圧・糖尿病・脂質異常症の予防に努め、脳卒中を発症予防することが大切です。
脳卒中には「脳梗塞」「脳出血」「くも膜下出血」の種類があります。
出現する症状はさまざまですが、身体に異変を感じた場合は、FASTで症状の確認をして前兆症状の確認を行います。
激しい頭痛が起きた場合は「くも膜下出血」を疑いましょう。前兆があれば救急車を呼ぶなど早期の受診が必要です。
脳卒中は時間が短いほど治療の選択肢が広がり、早期回復への第一歩となります。
参考文献
脳卒中ガイドライン2015[追補2019]
1.脳塞栓症とは(国立循環器病研究センター)
脳卒中データバンク2021