老朽化が進行する首都高の新たな更新計画、その概略がまとまりました。現在“造り替え”に相当する大規模な更新事業が約64kmで進んでいますが、さらに約22km追加、その事業費は約3000億円と概算されています。

絶対やらなきゃヤバイ「羽田トンネル」「荒川湾岸橋」ほか

 首都高速道路は2022年12月21日(水)、「首都高速道路の更新計画(概略)」を公表、あわせて前田信弘社長の記者会見を開催しました。


新たな更新計画に選定された1号羽田線「羽田トンネル」坑口(中島洋平撮影)。

 首都高は最初の開通から今月でちょうど60年が経過し、老朽化が進行しています。このため現在、約64kmで“造り替え”に相当する大規模更新事業が進められていますが、その対象がさらに約22km、追加されることとなります。事業費の概算は約3000億円だそう。

 2014年度以降、道路構造物について5年に1度の近接目視点検が義務付けられ、それが一巡したことを経て、顕著な老朽化が明らかになった箇所が追加されています。特に、開通から50年を経た構造物について、いままで想定されなかった損傷メカニズムや、いわば「思っていた以上にヤバい」と分かった箇所があるというわけです。

 特に名前が挙がっている構造物が2か所あります。ひとつは1号羽田線「羽田トンネル」、もうひとつが湾岸線「荒川湾岸橋」です。

 羽田トンネルは1964(昭和39)年に開通した首都高初の海底トンネルです。近年、漏水を伴う緊急の交通規制が増加しており、内部では海水が入り込んでコンクリートの鉄筋が消失してしまうほどの重大な損傷が確認されているといいます。このためトンネル躯体の抜本的な対策が必要だそうです。

 荒川に架かる荒川湾岸橋は1978(昭和53)年開通した壮麗なトラス橋ですが、腐食による部材の破断などが確認されているほか、塗装の塗膜の下地に近い層で剥離がお気、付着力が失われているのだとか。ここは2010年の点検時は健全だったものの、それから急に劣化が進んだ箇所だそうです。

 前田社長によると、これら損傷箇所には「外部からなかなか直接見ることができない」ところや、「建設当時は心配ないと思われてきた」ところがあるといいます。同様の古い基準で造られた箇所は他にも存在し、損傷が顕在化する可能性があることから、今後の点検結果次第で、さらに更新事業の追加もあると示唆されています。

財源どうする 値上げ?税金?

 では、3000億円もの財源をどうするか。今後は事業化の前に、このスキームが検討されていく見込みです。記者からは、「値上げですか?」といった質問も集中しました。

 2014年度から行われている現在の大規模更新事業では、国が道路法を改正し、首都高の料金徴収年限を延長(2050年→2065年)することで、6000億円以上に上る費用の財源を確保しています。今回の約22km分だけでなく、将来、さらに対象区間が増えていくことも見越さなければなりません。「どういった財源確保の方法が現在において一番適しているか、国にお願いをする時期」(前田社長)といいます。

 他の高速道路会社も同様に更新事業を進めており、国の審議会も、財源確保のため料金を“永続的に徴収”することを含めた検討を進めています。今後、何らか動きがあるかもしれません。


会見する前田社長(中島洋平撮影)。

 現在大規模更新を進めている箇所では、1号羽田線の一部区間のように、完全に新しく造り替えているところもありますが、今回選定の22kmについては、「もとある構造物を活かす」が基本になる模様。「性能回復を基本に、コスト抑えて効率的、経済的な方法を選んだ」といいます。

 損傷がかなり進んでいる羽田トンネルも、上り線のみ、かつて使っていた「羽田可動橋」を活用した別ルートになるものの、トンネル自体は更新のうえ下り線として活用されます。
「もちろん更新とともに走りやすくするところもありますが、実際の光景が変わるのは一部」とのこと。あまり目につかないところを直していく箇所が多いものの、「いずれにせよ安心・安全には大きな効果があると思っている」ということです。