この記事をまとめると

■16代目となる新型クラウンが発表された

■4モデルのうち、まず今秋に発売されるのが話題のクロスオーバーモデル

■今回はまるも亜希子さんが乗ってみた印象をお届けする

大きなタイヤは転がり抵抗とスタイルを両立

 家族の絆をつなぐ1台であり、成功者の証として憧れの存在であり続けてきた、日本を代表するセダンであるクラウン。それが突如、クロスオーバースタイルという大変身を遂げて現れたものだから、世間はかなりザワつきましたね。とくに、クラウンに思い入れの深い年代の人たちから、拒絶反応が強かったと聞いていますが、そうでない世代の人たちからは「カッコいい」と好意的な意見も目立っていました。

 実際にその姿と対面してみると、近年のトヨタらしい“攻めてる”デザインは素直にいいなと感じます。欧州車でも、メルセデス・ベンツのCクラス オールテレインやシトロエンC5 Xなどがセダンの進化系としてクロスオーバースタイルを実現しているので、クラウンは世界に打って出るにあたり、しっかりとトレンドにのっていると言えます。

 外径の大きなタイヤも、 プレミアムブランドでは近年のトレンド。開発時に、トヨタとして初めてタイヤメーカーに外径の要望を出し、作り込んでいったというのも興味深いところです。225/45R21というクラウン専用サイズは、ミシュランと試行錯誤しながら転がり抵抗とスタイルを両立させたもの。たとえるならば、パイロットスポーツの形をしたプライマシーを作るというほど難しかったのだとか。

 また、試乗してみると、新たな挑戦をしたのがデザインだけではないこともわかってきました。

エンジンサウンドが印象的!

 まずは、乗降性の良さ。ヒップポイントがこれまでより80mm高い630mmとなったことで、腰を深く曲げずに乗り降りがしやすくなっています。視界も開けており、遠くまで見通せる安心感がアップしたと感じます。ここはクロスオーバーとなった恩恵でもあるところ。

 でも、走り出すとこれまでのセダンとなんら違和感なく、背が高くなったことなど感じさせない一体感を手に入れているのです。今回試乗したのは2.5リッターのハイブリッドモデルで、のちに2.4リッターターボモデルが追加される予定のため、試乗前には静かさがウリなのだろうと思っていたのですが、アクセルを踏み込んでいくと積極的にエンジンサウンドが響いてくることが新鮮でした。

 じつはこれも、クラウンとしての新たな挑戦で、考え方や狙いをこれまでとはガラリと変え、「音を聴かせる」方向性になっているのだそう。現時点では、「うるさい」という人と「いい音」という人が半々くらいだということでしたが、音も含めてリニアな走りの気持ちよさを作り上げていきたいという心意気はとても好印象です。

 シャシーはFFベースのGA-KプラットフォームをAWD化しており、駆動は100:0から20:80の間で前後の駆動を制御。リヤはマルチリンクサスペンションで、4輪操舵システムのDRSを全車に装備しているのですが、これらがとてもいい仕事をして走りがスッキリと爽快。ボディサイズの割には小まわり性能もわるくないので、予想以上に扱いやすいと感じさせてくれます。FFベースのDRSはトヨタでは初めての採用とのことですが、クルマの向きが変えやすいことや、フロントタイヤの依存度が減るといったメリットがあるとのこと。「FRじゃなきゃクラウンじゃない!」なんて拒絶反応を示している人も多いかもしれませんが、乗ってみれば意外に納得してもらえるような気がします。

 正直なところ、「クラウンという名前でなければ、もっとすんなりと受け入れられていたのだろうな」と思ってしまいますが、きっと何年か経てば、「これが令和のクラウンだ」と自然に馴染むようになるポテンシャルを持った1台だと感じています。