ベストセラー機C-130の後釜狙える? C-2ソックリな韓国の新型輸送機開発 あれこれ派生型も
最近、国産機の開発を数多く進めている韓国は、中型輸送機についても独自開発する構想があるそうです。今回、MC-Xと名付けられたコンセプトモデルを韓国で見つけたので関係者に話を聞いてきました。
日本のC-2と似ているけど別モノ
2022年9月21日より5日間の日程で開催された韓国の兵器展示会「DXコリア」において、同国の防衛企業「KAI(韓国航空宇宙産業)」が新しい輸送機のコンセプトモデルを展示していました。
「DX Korea」のKAI(韓国航空宇宙産業)のブースに展示されたMC-Xのコンセプト模型(布留川 司撮影)。
「MC-X」と呼ばれるその機体は、双発のターボファンエンジンを搭載し、主翼は胴体上部に付いた高翼配置で、尾翼は上部に水平尾翼が付いたT字型。そして機体胴体の中央下部にはバルジと呼ばれる膨らみがあり、そこに着陸脚が収納されています。
なおMC-XのMCは「マルチロール・カーゴ」の頭文字を取ったもので、Xは次世代を示す記号です。全体的な印象は、日本が開発した航空自衛隊向けの輸送機C-2に似ている部分もあります。しかし、T字型の尾翼や、胴体下部のバルジなどは他の輸送機などでも見られるデザインであり、C-2との類似性というよりも、この形が輸送機として理想形であると言ったほうがよいでしょう。
傍らにあった解説パネルによると、機体の大きさは全長40.3m、高さ13.5m、全幅41.1mで、日本のC-2輸送機と比べるとやや小さいサイズです。最大離陸重量は92tで、搭載できる貨物の最大重量(ペイロード)は30t。最高速度はマッハ0.75で、航続距離は7000kmと記されていました。
MC-Xは、現時点ではKAIによる提案段階のプロジェクトであり、韓国政府の開発認可や具体的な生産の予定が決まっているわけではありません。しかし、KAIの関係者によると、MC-Xが想定しているのは自国、すなわち韓国空軍のC-130「ハーキュリーズ」輸送機やCN-235輸送機の更新用としてであり、将来的には国内だけでも40機程度は需要があると考えているそうです。
なお、世界を見渡すとC-130輸送機は、最新タイプであるJ型とは別に、それより古いH型が現在も数多く現役で運用されていることから、それらの更新用として中小国への輸出需要も狙っているということでした。
海洋哨戒機や空中給油機、電子戦機などの計画も
現在、韓国軍では輸送機の更新以外にも、海軍が現在運用しているP-3CK「オライオン」哨戒機の後継選定も控えており、さらに空中給油機や電子戦機といった潜在的な需要もあります。MC-X計画では輸送機タイプをベースに各種派生型を開発して、これら需要にも対応しようとしているようです。
機体が大きい輸送機の場合、機内スペースが戦闘機などと比べて余裕があるため、改造や機器の追加がしやすくなっています。これまでも輸送機から派生モデルが開発された例は数多くあります。たとえば、航空自衛隊では、C-2輸送機をベースに、電子機器を搭載して機体外部に複数のアンテナを追加したRC-2という電波情報収集機を開発・運用しています。
前方から見たMC-X。デザイン的には現在の輸送機のトレンドをなぞった保守的なものとなっている。機体上部には空中給油用の給油口も描かれていた(布留川 司撮影)。
ただ、MC-Xの派生型の開発は簡単なことではありません。事実、KAIの担当者も「派生型を開発するには、機体自体の改造はもちろんのこと、それぞれに必要な技術を開発し、機体に新しい機器を搭載する必要もあるでしょう」と、その困難さを素直に認めていました。
しかし、同等の機体を海外から購入するよりも、国内企業であるKAIが開発することは、国内産業の発展や雇用を生み出すという経済的な利点があります。MC-Xでは機体性能だけでなく、それらの付随したメリットもアピールしているようでした。
開発計画にゴーサインが出た場合、KAIでは10年以内に原型となる輸送機タイプの生産が始められると考えているそうです。その後、派生型の開発も順調に進んだ場合、2030年代には数多くのMC-Xが飛ぶようになると見立てている模様で、筆者(布留川 司:ルポライター・カメラマン)としては、場合によってはアメリカ製のベストセラー輸送機であるC-130の代替となる可能性もあり得るのではないかと感じました。