「駅ホームのそば店」東京駅の東海道新幹線ホームも閉店へ “出張中の出陣式”なガッツリそば
東海道新幹線の東京駅ホームで30年以上にわたって営業を続けてきた駅そば店が、2022年9月末をもって閉店します。ボリュームたっぷりの「かつ煮そば」などの名物を擁するこの店舗は、出張の会社員に重宝されていました。
「えっ、朝からそんなに食べる?」新幹線ホームの“ガッツリかつ煮そば”閉店
駅ホームのそば店が、またひとつ、消えていきます。東海道新幹線・東京駅の18番・19番ホームで30年以上にわたって営業を続けてきた立ち食いそば店「東京グル麺」が、2022年9月30日(金)をもって閉店。さまざまな業態の店舗がしのぎを削る東京駅は意外なほど駅そば店が少なく、その中で唯一、新幹線駅の構内で営業を続けていた店舗でした。
東京駅東海道新幹線ホームの東京グル麺(宮武和多哉撮影)。
この「東京グル麺」の看板商品と言えば、やはり「かつ煮そば」でしょう。そこそこに肉厚な豚カツを卵でとじて、関東風の濃厚な味付けのかけそばに乗せた一杯は、ボリュームたっぷり、ことさら提供スピード・効率が求められる駅そば店舗らしからぬメニューです。飲食店や駅弁販売店など全般的に単価が高い東京駅で、新幹線への乗車前に「早く、安く、ガッツリ」食事をとれる貴重な店でもありました。
またもう一つの名物は、名古屋駅の構内ではおなじみの「きしめん」。この店舗を経営するジェイアール東海パッセンジャーズは、名古屋駅新幹線ホームできしめん店「住よし」を展開しているとあって、なると・稲荷・削り節が乗った一杯は、名古屋駅と同様にワンコイン以下の価格で満足できるものでした。
朝方の東京駅18・19番ホームは、地方から出張で到着するサラリーマンが多く、在来線やコンコースの駅そば店舗よりもスーツの着用率は格段に高め。中には白ごはんを頼んで、丼からカツを移して“セルフカツ丼セット”を完成させる人もあり、隣の人の注文内容に「朝からそんなに食べるの?」と驚くことも(単品で「カツ丼」もあり)。出張中の出陣式のような、独特の雰囲気がある駅そば店舗でした。
「かつ煮そば」消滅も、「きしめん」は別の駅で食べられる!
新幹線に乗り込む人々の胃袋を満たし続けてきた「東京グル麺」ですが、2020年には新型コロナウイルスの影響で、東海道新幹線の利用者も一時は前年度比で9割も減少。「東京グル麺」も休業ののち、営業時間を大幅に短縮するなど、厳しい状況が続いていたようです。
なお、ジェイアール東海パッセンジャーズが過去に展開していた新大阪駅でも「グル麺」ブランドの店舗はすでに閉店。「東京グル麺」は9月30日まで、平日6〜14時に営業します。スタンプ10個で麺や丼1杯と引き換えるカードを出張のたびに貯める人々も多く見られましたが、閉店までのあいだ、スタンプ10個未満でも、カード1枚あたり280mlのお茶1本と交換するそうです。
首都圏で食べられる駅のきしめん、池袋駅「爽亭」(宮武和多哉撮影)。
ちなみに、首都圏で「駅のきしめん」は、池袋駅中央口のコンコース(改札内)にある「爽亭」でも提供されています。この「爽亭」の経営母体であるジャパン・トラヴェル・サービスは名古屋駅の新幹線ホームと在来線ホームで「住よし」を展開しており、「東京グル麺」の母体であるジェイアール東海パッセンジャーズとは駅の各所に分かれて「住よし」を展開する関係。名古屋駅と同様に、安くて早く満足度の高いきしめんを味わうことができます。