男女の出会いはオンラインへ移行 見た目の重要性は低下した - 立川智也
※この記事は2020年07月31日にBLOGOSで公開されたものです
全国的に新型コロナウイルス感染者が増加するなど、コロナの感染拡大に収束の気配が見えません。そんな中ですが、結婚を希望する独身男女や、そうした人々をサポートする我々のような結婚相談所も、試行錯誤をしながら歩みを進めています。
お見合い前のプロフィール交換に関しては“beforeコロナ”の時代から既に「オンライン」化が進んでいました。それでも、お見合いやお互いを知るための交際においては実際に会ってお茶をしたり一緒に遊びに出かけたりといった「オフライン」がメインです。
私自身も長年「実際に会うことが大事で、それが早く結婚に近づくためのカギである」と考えてきました。おそらく結婚相談所業界で働く方全体で見ても、そのような考え方が支配的であったように思います。
それが新型コロナウイルスの感染拡大局面を経て、「このウイルスが存在する世界でどう暮らしていくか」に向き合う“withコロナ”の時代になって激変しました。金科玉条としていた“対面で会う”に頼れなくなり、否応無しに“オンラインで会う”にシフトしたのです。
オンラインでのデートが主流に 「時間とりやすい」などと好評
具体的には、まずお見合いは一定程度、オンラインお見合いになりました。お互いが自宅にいながらにして、担当者引き合いのもZoom等のツールを使って会うのです。お見合い後に交際がスタートしてもこれまでとは状況が異なります。
デートの定番スポットである遊園地や水族館といったレジャー施設は限定的な営業が続いており、新宿や池袋といった都心の繁華街には近づきにくく、映画館の座席はソーシャルディスタンスを保つために一席飛ばしでの着席です。いわゆる「会ってするデート」が大変やりにくい状況であり、それを乗り越えるための工夫として盛んになっているのがオンラインデートです。
オンラインデートとはコロナで外出がしづらくなった今年3月頃から急速に広まっていった新しいデートのスタイルです。とは言えそんなに特別なことをする訳ではなく、ただZoomでつないでお茶をしたりご飯を食べたりネットサーフィンをしたりしながら二人で過ごすというものです。
これが婚活中の男女から意外と好評で「忙しい中でも時間をとりやすい」「帰りが夜遅くにならないので安心」「デートにかかる費用が減ってありがたい」といった声を多くいただいています。しかも日本は欧米諸国のようなロックダウン状態ではありませんから、三密を避けて外出をすることはできます。
そのため、多くのカップルがオンラインとオフラインをお互いの状況に合わせて使い分けているというのが現状であり、ポジティブに捉えればデートの選択肢が増えているとも言えるかもしれません。
「見た目」への考え方にも変化 第一印象の重要性はどう変わった
さて、そのような中で私は「見た目(容姿・身だしなみ)」についての考え方が少しずつ変化しつつあることに気がつきました。
婚活に限らず、見た目を良くすることは物事をうまく進めやすくするのに役立ちます。beforeコロナの世界で、見た目はいわゆる”第一印象”に大きく作用するファクターという位置付けでした。「第一印象が良くないと先の段階へ進めない。だから第一印象に作用する見た目をある程度良くしなくてはならない」というロジックです。
しかし、それがwithコロナの時代になって少し様子が変わりました。分かりやすくするためにここでは便宜上、見た目を「オフライン見た目」と「オンライン見た目」の二つに分けて、以下のように定義します。
オフライン見た目:実際に会って目にする見た目。リアルで会った時に知覚されるもの
オンライン見た目:ディスプレイを通した時の見た目。インターネットを介すなど写真や動画などを通じて知覚されるもの
この二つを対応させる形で婚活の基本的な流れをざっくり整理すると、beforeコロナ、withコロナでそれぞれ以下のようになります。
【beforeコロナの世界】
1.プロフィール写真を見て会いたい相手を決める(オンライン見た目)
↓
2.対面でお見合いをする(オフライン見た目)
↓
3.デートを繰り返す(オフライン見た目)
↓
4.結婚を決める
【withコロナの世界】
1.プロフィール写真を見て会いたい相手を決める(オンライン見た目)
↓
2.オンラインでお見合いをする(オンライン見た目)
↓
3.まず1~2回程度はオンラインでデートをする(オンライン見た目)
↓
4.オンラインとオフラインを交えたデートを繰り返す(オフライン見た目・オンライン見た目)
↓
5.結婚を決める
ご覧いただいて分かる通り、withコロナ時代の婚活においてオフライン見た目が関係してくるのは中盤以降の話です。ここで勘の良い方ならもうお気づきかと思いますが「第一印象が良くないと先の段階へ進めない。だから第一印象に作用する見た目をある程度良くしなくてはならない」というロジックは、withコロナ時代のオフライン見た目については当てはまらないのです。
オンラインでの見た目はどうすれば良くなるのか
第一印象を良くするにはオンライン見た目の方を向上させる必要があります。では具体的にオンライン見た目を良くするには、どのようなことに気をつければ良いのでしょうか。
・インターネット回線
ビデオ会議ツール使用時の動画のカクつきは、お互いにとって大きなストレスとなります。自宅には十分な速度の出る回線を用意しましょう。
・パソコン
持たない方が増えていますが、できればあった方が良いです。スマートフォンだと画面は小さいため、どうしてもカメラに顔を近づけがちになります。すると必然的に顔のアップを相手に見せることになってしまいます。パソコンを持っていない方はこれを機にパソコンを買いましょう!
・Webカメラ
最近発売されたそれなりの性能のPCであれば備え付けのカメラで問題ありませんが、廉価PCや比較的古いPCをお使いになっている方は別にカメラを用意するのがベターです。「綺麗な画質かつ顔のアップは映さない」がwithコロナ時代の婚活における一つの正解です。
・照明
部屋を明るくして、明かりを自分の顔を照らすポジションにすることが大切です。部屋が暗いとあなた自身が暗いという印象を与えてしまいますし、気持ちが落ち込みやすいこのご時世ですから部屋くらいは明るくしましょう。
・背景
真っ白な壁を背景にするのはできれば避けた方が良いです。バーチャル背景も最初のうちは良いですが、2度目3度目のデートではやめた方が印象が良いでしょう。本棚や家具などが映る角度にしておくと、楽しい雰囲気になりますし、それをきっかけに会話が生まれやすいのでおすすめです。
いざ対面すると鼻毛が出ていたケースも やはり見た目も重要
最後に一つ、コロナ禍の中で結婚を決めたカップルのエピソードを紹介させてください。
田村さん(30歳、男性)はオンラインお見合いで出会った女性と交際を続けていました。二人ともお仕事柄などもあり、緊急事態宣言中は全てのデートがオンラインでした。緊急事態宣言の解除後、二人は初めて直接会ってデートをすることになるのですが、デート後すぐに女性側から、田村さんの見た目について複数のフィードバックをいただきました。
詳細について書くことはしませんが、一つ明らかにしておくと、少なくとも鼻毛が出ている状態ではありました。オンラインでは分からなかったポイントがオフラインデートでようやく明らかになったのです。すぐに担当から田村さんに連絡し、指摘いただいた点を早急に改善するようアドバイス。そんな田村さんも今頃は結婚式の準備に追われているようです。
田村さんに限らず、このようなケースはコロナ禍での婚活でしばしば見られるものです。一般論として人は、初めから鼻毛が出ている相手に好意を持つことが難しい一方、既に好意を持っている相手の鼻毛が出ていても乗り越えることができます。コロナ禍の婚活においては結果的に「オフライン見た目でジャッジされるタイミングを後ろにずらす」ことになりますが、これは案外ポジティブな変化なのかもしれません。
「人は見た目が全て」という考えは極論ですが「見た目なんて関係無いよ」もまた極論です。男女問わず容姿や身だしなみは異性から良く見てもらうための大切な要素の一つです。しかし現在進行形で進んでいるこの見た目についての構造的変化は、婚活における見た目偏重の雰囲気を少し優しくしてくれるのではないかと、私は淡い期待をしています。