※この記事は2020年07月21日にBLOGOSで公開されたものです

河井克行・案里の河井夫妻、逮捕・起訴されたけど腹立たしくて仕方ないよ。渡す河井に受け取る面々。結局さ、金があれば選挙で勝てる、金で票集めできて当選できる、っていう「悪例」を証明したようなもんだ。令和の時代にまだそんな無法がまかり通るのかって、がっかりだよ。

一番がっかりしてるのは地元・広島選挙区の真っ当な有権者だろうね。広島の選挙を汚い金でけがされたって。広島のイメージをとことん落としたって。広島は悲惨な原爆の歴史を背負い世界に平和を訴える象徴的な都市だ。世界がヒロシマを知っている。

また、ここ何年も優勝の常連になっている広島カープは親会社の金よりも主にファンが球場に落とす金でやりくりして、鈴木誠也選手をはじめ生え抜きの選手を何人も育てあげてチームを強くしている。潤沢な「金」のチカラではなく、選手を見い出すスカウトの慧眼であったり、育てるコーチの手腕だったり、自分達の眼と腕で戦っている。

そういうクリーンなイメージが広島にはあるよ。だけどそんな広島に泥を塗ったのが河井夫妻。そして河井夫妻に大金を回した自民党の中枢。金で何でも動かせると考える連中だよ。

受け取った側の不起訴は納得できない

河井夫妻を逮捕・起訴した地検がこの事件にどう決着をつけるのか。国民はみんな注視してる。誰よりも広島の真っ当な有権者たちはその行方をじっと見ているはずだ。地検に対する信用と信頼が重く問われる大一番だと思う。

今の段階で、金を受け取った地元の県議、市議、町議、市長たちは不起訴なんだろ。まったく罪に問われないのは納得いかないな。検察は大悪を射るための思惑があるらしい・・・なんて話もあるけど、それはそれ、これはこれでケジメをつけてもらいたいね。無罪放免ってことになれば、先々同じことが起きた時「これって金を受け取ってもどうせ不起訴だよな、じゃあ受け取っておこうか」って、悪い前例になっちゃうよ。

すでに辞職を表明した人も何人かいるけど、少なくとも受け取った面々は全員辞職するべきだ。わかってるだけでも河井夫妻は3千万円以上バラまいたんだろ。その金って結局どうなるのかな? 河井さんに返すってことはないよな。検察通して国庫に入るの? この原資になった1億5千万のうち1億2千万は自民党が政党交付金から出したって話だろ。だとしたら元は税金だ。つくづく腹立たしいな。

発端は反抗的な自民議員との”仁義なき戦い”

河井夫妻の事件、あらためて編集部で振り返ってみてくれよ。

編集部)はい、元を辿れば広島の自民党議員である溝手顕正さんが安倍さんに批判的な存在だったことから始まります。第1次安倍政権で2007年に自民党が参院選で大敗した時に、首相を続投しようとした安倍さんに対し「責任がある」と指摘したり、2012年には安倍さんを「過去の人」と言ったり、何かと安倍さんに辛口でした。

安倍さんはそれを根に持ったようで、昨年の参院選で溝手潰しに動きました。溝手さんと同じ広島選挙区に地元県連の反対を押し切り、総理官邸の意向という公認で河井案里さんを擁立。表向きは2議席を取るという話ですがそれは土台無理で、これで事実上、自公の与党票を溝手さんと河井さんで奪い合うお家同士の選挙戦になったわけです。

こりゃあ広島だけにまさに「仁義なき戦い」だな(苦笑)。

編)そして、自民党は選挙資金として溝手さんに1500万円、河井さんには裏で1億5千万円を渡します。まさかの10倍です。さらに河井陣営には安倍さんの秘書たちが広島に乗り込んで応援、「総理のご意向」をかざして回りました。

コワイね。これ、安倍さんという親分が現金という弾丸をドカンと渡して、「これで撃ち合って溝手のタマとってこいや」って話だよ。「うちの若いもんを加勢に送っちゃるけんのう。広島の連中がどっちにつくんかハッキリさせたれ!」って、広島弁になっちゃったよ。「仁義なき戦い」だね(苦笑)。

編)そして河井夫妻は、主に河井克行さんが地元有力者に会って、溝手さん支持ではなく河井案里支持を取り付けようと現金を配ってまわります。その際に安倍さんの名前も明かしてます。参院選で河井案里さんの後援会長をつとめた府中町議の繁政秀子さんは、河井克行さんから現金30万円を受け取ったことを認め「安倍さんからと言われてもらった」と答えてます。

「繁政の秀子さんよぅ、これは安倍の親分からのキモチじゃ、何も言わずにしまっとき」ってことか。

案里氏勝利の2か月後に夫・克行氏は法務大臣任命

編)そして昨年7月の参院選、広島選挙区では河井案里さんが当選。溝手さんは落選。その結果、この選挙を指揮した河井克行さんへの「論功行賞」な人事で、9月に河井克行さんが法務大臣に任命されました。

「河井、よーやったのぅ。ご褒美じゃ、秋から若頭じゃ」ってことかね?

編)しかし、河井陣営が金をバラまいた公職選挙法違反がバレまして、河井さんは法相辞任。裏で糸を引いてたであろう安倍さんは自身に捜査の手が及ばぬようにか、お仲間の黒川さんを検事総長にさせようと動きます。ですがご存知のとおり、手口が強引すぎて国会答弁は混乱、国民の怒りも広がり、さらに黒川さんの賭け麻雀が文春砲で炸裂して計画は破綻。そして今、東京地検が河井夫妻を逮捕・起訴して、これからどう始末をつけるのかな・・・というところです。

やっぱり「仁義なき戦い」だな。安倍さんは金子信雄さんが演じた山守組長ってとこかな? 抗争をけしかけておきながら、いざとなると自分の保身に走る(苦笑)。あれは映画だから面白く見られるけど、こっちは現実に法務大臣が逮捕・起訴されるという前代未聞の不祥事が起きてるわけだ。まったくとんでもないよ。

編)河井さんに関して安倍さんは記者団にこう述べてます。「我が党所属だった現職の国会議員が起訴されたことは、誠に残念。かつて法務大臣に任命した者として、その責任を痛感するとともに、国民の皆さまに改めてお詫び申し上げたい」と。

えっ、ホントにそう言ったの? よく聞いたら「うちの組のもんがサツの世話になってしもうてえらいすまんのう。わしも残念じゃ。河井を若頭にしたんはわしじゃ。その責任は痛く感じとりますけん、カタギの皆さんには改めてお詫びしますけんのう」って言ってなかった? 安倍さんそんな喋り方はしないか、アハハハハ。

国会議員の夏のボーナス 満額支給に呆れ

しかし、コロナで日本じゅうが大変なことになって倒産や閉店が相次いで、感染がまたぶり返してるのにGoToキャンペーンだとか、病院も看護師さんがボーナス減らされたり、九州を始めとする豪雨被害もあったりして、国民には不安と不満が充満しているよね。

その中で、国会議員の夏のボーナスが満額支給ってのも呆れるよ。それがあらかじめ決まっていることとはいえだよ。国会議員は国を動かす立場にいるんだ。だからこういう時こそ国民の気持ちを汲み取ってほしいよ。各党で申し合わせて議員全員がボーナス半額返納するとかさ。金額の大小を別にして、そういう態度が大きなメッセージになると思うんだ。

「金」って使い方次第で薬にも毒にもなるし、ワクチンにもウイルスにもなるんだよ。

それで言うと、安倍さんが河井夫妻に大金を渡した、河井夫妻が票集めの買収で金を広島にバラまいた、広島の地元議員や首長がその金を受け取り、票の行方を左右した、その結果、河井案里さんが当選した・・・、これって「金」がウイルスになって次々に感染した結果だと思わないか?

感染源のクラスターは自民党の金庫を動かす総理官邸、そこから広島に「金」というウイルスがばらまかれ、集団感染が拡がったんだ。とにかく広島で一番怒ってるのは、金にも義理人情にも支配されず、キレイで真っ当な選挙に取り組んでた地元の皆さんだと思うよ。

参議院は「不要不急」

でね、この事件の舞台が参院選だったこともあるけど、改めて思うのは、参議院ってもういらないだろって話。結局さ、重要な国家予算の先議権は衆議院にあるわけだし、内閣閣僚はほとんど衆議院から選ばれる。実際に国を動かす力は衆議院が背負っているわけだ。

参議院不要論は前々からある。だけどそれがちっとも進まないのは、議員のセンセイ方が職を失うからだ。でもこの時代、コロナや災害に対峙しなければならない時代に、参議院って不要不急だよ。

参議院を無くして国政選挙が衆院選のみになったら、選挙への関心もぐっと高まって一票の重みが増すはずだ。そうなれば投票率も上がると思う。投票率が上がれば組織票の価値が減る。河井夫妻がやったような組織買収が幅を利かす余地も減るはずだ。

そうして現在ある参議院245議席を無くして、参議院の維持や選挙の実施にかかっていた予算が浮いたら、これを今後の感染症対策や、毎年の災害対策に充てる。そのほうがよほどこの国のために有効だよ。

増税、コロナ、災害、政権腐敗・・・。今、日本は明らかに弱ってる。だからこそ国民の金をより効果的なワクチンとして使う方法を選んでいくべきだと言いたいよ。

(取材構成:松田健次)