男性195人を犯した世界一邪悪なレイプ魔の恐るべき手口とは デートドラッグに気を付けて! - 木村正人
※この記事は2020年01月14日にBLOGOSで公開されたものです
36歳の“プレデター”に30年以上の無期刑
[ロンドン発]「あなたが犯した罪の本当の大きさは決して明るみに出ることがないかもしれない。しかしあなたが(スマートフォンで)撮影した動画には性的な攻撃を受けている195人の意識不明の男性が写っている」――。
英マンチェスター刑事法院のスザンヌ・ゴダード判事は1月6日、デートレイプドラッグGHBなどを飲ませて昏睡させた若い男性をレイプし、その様子を撮影して収集していたインドネシア国籍の留学生レイナード・シナガ被告(36)に30年以上の無期刑を言い渡しました。
動画のデータ量は実に3.29テラバイト。A4判サイズの紙を満載したコンテナトラックを並べると4.8キロメートルの長さになります。捜査員は数百時間かけて身の毛がよだつ動画を再生して1人ずつ被害者を特定していきました。
「あなたは邪悪な連続性的プレデター。友達と楽しい夜を過ごすためだけにマンチェスターの繁華街にやって来た若い男性を餌食にした」「被害者はあなたのことをモンスターと言う。あなたが犯した罪の大きさからすると正確な表現だ」とゴダード判事は断罪しました。
同性愛者のシナガ被告は2015年1月から2017年5月にかけ、17歳から36歳までの男性48人に対するレイプ136件と性的暴行13件、レイプ未遂8件など計159件の罪で4つの裁判にかけられました。スマホの動画に残されていた被害者195人のうち70人はまだ特定されていません。
「被害者は昏睡している役を演じているだけ」と否認
イギリスでは「同意」のない性行為はレイプとして罰せられます。公判でシナガ被告は「同意」に基づく性行為で被害者は昏睡している役を演じているだけと一貫して否認しました。
シナガ被告は被害者の乳首やおへそを指でなでたりキスしたりなめたりする様子も撮影していました。シナガ被告は法廷で「彼らはフィフティ・シェイズ・オブ・グレイ(イギリスの官能小説で世界的大ベストセラーとなり、映画化)ゲームに喜んで参加した」と開き直りました。
イビキをかいたり、意識不明で嘔吐したり漏らしたりしている被害者を最長37分間も犯し続けるシナガ被告の動画を延々と視聴させられた陪審員はトラウマにならないようカウンセリングを受けなければなりませんでした。二度と陪審員を引き受ける必要はないとも言われました。
「シナガ被告は動画を歪んだ後の楽しみのため残しておいた」とゴダード判事は断定しました。
「うちでスマホを充電しない?」手口の全容
シナガ被告の手口はこうです。深夜、同性愛の男性が集まるマンチェスター中心部のナイトクラブ周辺に繰り出し、独りでひどく酔っ払っている若い男性を探します。道に迷った者もいれば、スマホの電源を切らしてしまった者もいます。
彼らに近づいたシナガ被告は大学生活や音楽の話を始め、「良かったら僕のフラット(住宅)に来て飲み直さない。スマホを充電している間、少し話そうよ」と切り出します。そしてフラットでGHBなどをこっそり混ぜたお酒やソフトドリンクを飲ませて昏睡させるのです。
無料でも手に入るGHBにはアルコールと同じような効果があり、多幸感や眠気、くつろいだ感じを生み出し、性的に興奮したり、セクシーになったりします。GHBは量を調整するのが難しいので過剰摂取しやすく、意識不明、昏睡状態、または死に至る危険性さえあります。
そのまま服用すると口やノドをやけどする恐れもあり、一時的な混乱や方向感覚の喪失を引き起こします。容易に意識不明になり、筋肉も緩んで肛門性交がしやすくなるため今回のようにデートレイプドラッグとして使われることがあるそうです。
レイプされている最中に目が覚めた18歳の若者の反撃
2017年6月、レイプされている最中に目が覚めた18歳の若者はバスルームの床でうつ伏せにされ、ジーンズとパンツを脱がされていました。驚いた若者は後ろから挿入していたシナガ被告を数回殴って払い除けました。
これまで被害者が覚醒し、反撃されたことはないシナガ被告はたじろぎ、大声を上げて「泥棒、泥棒だ」と助けを求めました。若者がシナガ被告の白いiPhoneをつかむと、シナガ被告は取り戻そうと若者の腹部に噛みつきます。
フラットから逃げ出した若者は警察に緊急ダイヤル(999番通報)。警察がフラットに到着するとシナガ被告が頭から血を流して倒れていため救急車で病院に搬送されます。逆に若者が傷害容疑で逮捕され、警察は若者が持っていたシナガ被告の白いiPhoneを押収しました。
シナガ被告が「僕のiPhoneはどこ」としきりに尋ねるので、捜査員が自宅に落ちていた黒いiPhoneを見つけると、撮影された動画の中に先ほど逮捕した若者がシナガ被告に侵される様子が記録されていました。iPhone計2台から195人がレイプされていたことが判明したのです。
二度とレイプされないよう「結腸を切り取って」
195人のうちレイプされていたのに気付いたのはこの若者ともう1人だけでした。マンチェスター警察のマブス・フセイン副署長は「被害者は警察がスマホの動画を手掛かりに訪れるまで自分の身の上に何が置きたのかを知りませんでした」と述べました。
「サナガ被告は堕落している。彼は博士課程の学生としてこの街にいるが、その仮面の下には連続性犯罪者としての素顔が隠されていた。彼がこんなに長く本当の性質を隠すことができたという事実が彼の犯罪が計算して行われていたことを物語っている」
レイプされたことを捜査員から知らされた被害者の1人はクリスマスの日に自殺しようとしました。人工肛門を使用しているクローン病の患者は3回もシナガ被告に犯されたことを知った後、二度とレイプされないよう医師に「結腸を切り取ってほしい」と頼んだそうです。
8時間のうちに7回レイプされた被害者もいます。15時間にわたって8回レイプされた被害者もいます。うつ病を患っている被害者にとってシナガ被告に犯されていたことを知るのは背負いきれない十字架でした。レイプされたことを知り飲酒や社交を止めた人もいました。
シナガ被告はインドネシアの敬虔なカトリック教徒家庭の長男に生まれました。父親は複数の民間銀行の支店を所有する裕福な実業家。インドネシア大学建築学部を卒業したシナガ被告は2007年、マンチェスター大学で社会学を学ぶためイギリスに留学してきました。
マンチェスターで暮らしながら、リーズ大学で人文地理学の博士過程をスタートさせていました。学費もフラットの家賃も全て父親が負担していました。
「マンチェスターは魔法の街」
インドネシアではシナガ被告は同性愛者であることを公にできませんでした。ゲイ(同性愛者の)ビレッジのあるマンチェスターで同性愛者として間違った自由を手に入れました。
昏睡させた被害者の運転免許証、銀行カード、学生証から個人情報を盗み見たシナガ被告は“戦果”としてフェイスブックから写真をダウンロードしたり、スクリーンショットを撮影したりして自分のソーシャルメディアにアップしていました。
シナガ被告はオンラインチャットで友人とこんな意味深長なやり取りをしていました。
友人「常に新しい彼がいるのね。F ******地獄、ダーリン、あなたは毎週違うストレート(男性の意味)を得ている」
シナガ被告「黒魔術」「マンチェスターは魔法の街です。ゲイロマンスの街、同性愛の街。私の秘密の毒を一口飲んでください。それはあなたを恋に落ちさせます。一滴で十分です」
逮捕された時、シナガ被告は「マンチェスターの南アジアのゲイやバイセクシュアルの男性における性と日常のトランスナショナリズム」という題の論文に取り組んでいたそうです。