薬物逮捕リストに人気アイドルや大物芸人の名前も - 渡邉裕二

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※この記事は2020年01月14日にBLOGOSで公開されたものです

合成麻薬「MDMA」の所持で麻薬取締法違反罪に問われている女優・沢尻エリカ(33)。今月31日の初公判が控える中、芸能界では「次の逮捕者は?」「内偵されているのは誰?」などといった〝情報戦〟が繰り広げられている。

芸能界で摘発相次いだ2019年

昨年は、3月にコカインの所持と使用で逮捕された電気グルーヴのメンバーで俳優のピエール瀧(52)に始まり、5月にはジャニーズの人気グループ「KAT-TUN(カトゥーン)」の元メンバーで現在はミュージシャンとして活動中の田口淳之介(34)と元女優の小嶺麗奈(39)や、7月にはロックバンド「Dragon Ash」(ドラゴンアッシュ)」の元メンバーだった金子賢輔(34)が大麻所持で逮捕された。また〝常連〟では11月に元タレントの田代まさし(63)が覚醒剤所持の容疑で捕まっている。

さらに、芸能界ではないが11月には元五輪代表でプロスノーボーダーの国母和宏(31)までもが大麻製品の密輸などで逮捕されるなど、とにかく著名人の摘発が相次いだ1年となった。

事件の要因について薬物ウオッチャーの1人は「東京五輪を目前に控えていることが大きい。海外からの旅行者の増加と同時に薬物も増加しています」という。しかし、その一方で「もちろん密輸もあります。ここ数年は暴力団にとっても薬物が大きな資金源となっていますからね」と語る。

昨年の暮れには、こんな〝密輸事件〟が話題となった。

熊本県天草市魚貫(おにき)町の漁港で覚醒剤数百キロを所持していたとして福岡県警と海上保安庁、税関などの合同捜査本部が台湾人の漁業者ら3人を逮捕した。ところが「その3人の中の1人が広島市在住の19歳の無職少年だったんです」というのだ。

密輸に10代の少年が絡んでいたのは大きな衝撃だったそうだ。

「3人は共謀して漁港に係留中の船内で取引していた。それも末端価格で数百億円にもなる取引だったのです。その後、別の台湾人や日本人会社員らも逮捕されていますが、事件には国際的な密輸グループが関与しているとみて捜査しているようです」

警視庁組対5課とマトリのライバル意識が激化

薬物が犯罪の大きな温床となっているのはもちろんだが、それに比例して摘発が増えている要因には、もう一つ、警視庁組織犯罪対策5課と厚生労働省地方厚生局麻薬取締部(通称「マトリ」)の〝争い〟があるといわれている。

「警視庁組対5課とマトリは双璧をなしていますが、実は共にライバル意識が異常に強い。ピエールや田口の逮捕はマトリの内偵捜査による摘発だったのですが、沢尻は組対5課によって逮捕されました。情報の入手方法や捜査方法は違うので何ともいえないのですが、何年か前に警視庁の組対が『もうマトリはいらない』なんていったとかいわないとか…。あるいはマトリの予算が減額されるかもしれないといった噂が出た辺りから、マトリの動きが活発になりましたね」(前出・薬物ウオッチャー)

つまり、捜査現場の意識が高まっているというのだ。とはいっても、組対はASKAの薬物捜査で失態を犯し、さらに今回の沢尻逮捕でも、その実態を見ると、家宅捜索をしたものの押収できたのはMDMAの入ったカプセル2錠だけ。しかも、薬物検査では「シロ」と出る始末である。

「その後の捜査で何とかLSDを染み込ませた紙片を押収することが出来たことから、起訴することが出来ましたが、正直言って強引な部分もありました。もちろん、微量であっても所持していたことは事実ですけどね。ただ、どっちにしても大物の逮捕で名誉挽回を果たしたいと思っていることは確かでしょう」(社会部記者)

芸能界の「内偵者」を捜査関係者がリークか

そんな中、冒頭でも記したように、芸能界では内偵者や次の逮捕者の名前が乱れ飛んでいる。当然、情報源となっているのは捜査関係者である。情報を流し、探りを入れ、それぞれの動きを見るのも常套手段なのかもしれない。

「あのミュージシャン、俳優がヤバいらしい」
「大物芸人に内偵が入っているようだ」
「何で、あの女優が逮捕されないの?」

ネットばかりではなく、ここ最近は朝刊スポーツ紙までもがイニシャルで示すようになった。逆に言ったら、それだけ芸能界では薬物疑惑が蔓延しているということになるのだが…。あるプロダクション関係者が実情を語る。

「ピエールさんや田口さんの時は、それほどではありませんでしたが、沢尻さんが逮捕された後は、それこそ激震が走りました。沢尻さんの関係者や周辺は火消しが大変だったと思いますよ。それに、これまでは大抵、所属事務所は起訴された段階で契約を解消してきましたが、エイベックスでは沢尻さんを切らずに『支えていく』としたことでも、(沢尻に)余計なことを言わせないようにしているのではないかとか…、逆に噂を広げる結果となっています。もちろん、警察も事情聴取で細かな情報を得ているとは思いますが、正直言って、沢尻さんの場合は闇の深さを感じています」

もっとも、真っ先に噂の立った女優のKやMは「さすがに本人も警戒しているようだし、事務所も慌てたようですからね。そういった意味では、沢尻の逮捕直後に名前が挙がった人物というのは、なかなか逮捕には至らないと思います」というのが大方の分析だが、しかし、一方では「内偵は続くと思います。というのも、時間が経つと緊張感も解れ『自分だけは大丈夫だろう』なんて思うようになってくるものなんですよ」(芸能関係者)という指摘もある。

さらに「いくら本人は警戒しても、実は女房、あるいは旦那をはじめ周りもみんなジャンキーなんてケースもあるんです。組対やマトリは、周辺からも容疑を固めていく。もちろん司法取引で、近い人間が〝エス〟(スパイ)になることだって考えられる」という。

次は元国民的アイドルグループのタレントAか

では、芸能界の中で、これまでに名前の挙がっていない人物で「逮捕が近い」と言われている者はいるのか?

「実は、国民的人気アイドルグループとして活動していたAというタレントが最右翼だと言われています。組対の内偵捜査も最終段階に来ているようで、かなり緊迫しているようですね。どうやら、容疑は大麻の所持、使用だと言われています」(芸能関係者)

Aは、現在はタレントとして活動しているが、大麻使用に関しては「当然、周囲も気づいていると思いますよ。大麻は交際相手から覚えさせられたようですが、どうも本人の犯罪意識が乏しいとも言われています」(前出の芸能関係者)。

確かに覚醒剤やコカインなどの薬物とは違って、大麻使用に関しては、どうやら反社会的な行いに対する個人的な意識の薄さがあるのも事実だろう。

例えば、米国から国際郵便で大麻ワックス約57グラムを18年12月に密輸した大麻取締法違反で昨秋、逮捕・起訴されたプロスノーボーダーの国母被告。

先週8日に東京地裁で初公判が開かれたが、その公判で国母被告は14歳ごろから大麻を常用し、妻からは「大麻に依存している。やめてほしい」と再三にわたって言われたが「改心することはなかった」という。さらに裁判官から「もう大麻はやらない?」と問われると「大麻と関わることがすべて違法なこととは思えません」などと主張する場面も。

検察は懲役3年を求刑したが、被告の代理人を務める弁護人にしても大麻の有益性をアピールするほどで、犯罪に対する感覚の鈍さが現れていた(判決公判は1月28日に開かれる)。

警視庁に対してマトリも、今年は芸能界にターゲットを絞って内偵捜査を進める方針を内々に打ち出している。「どうやら、多くの情報が寄せられているようです」というのは、前出の薬物ウォッチャー。

実際、前記したAとは別に、マトリの内偵リストには大物の演歌歌手や人気モデルの名前も記されていると言われるが、その情報は組対にも入っているという。「もはや警視庁とマトリのどちらが早く逮捕するかの段階」というわけだ。

それにしてもピエールや沢尻の逮捕ではNHKが大パニックになった。が、今年もテレビ局や広告代理店などは、それら事後の対応に駆けずり回るのだろう。