※この記事は2018年06月19日にBLOGOSで公開されたものです

日本でカジノが作れる法案――カジノを含む統合型リゾートIR実施法案が、衆院内閣委員会で与党などの賛成多数で可決された。これまで「刑法」で禁止してきた〝賭博〟だったが、政府が新たな成長戦略として考えていることもあって「解禁」されることになった。

「たった18時間での審議で採決は納得いかない」。

野党は反発している。が、この法案、結局のところ何時間審議したところで可決するわけで、極端に言ったら結論は同じ。巷で言われている「ギャンブル依存症対策はどうするか」なんて、本気に考え、論議したとしても糸口なんて見つかるはずない。何だかんだ言っても野党の「反対行動」も単なるパフォーマンスに過ぎない。

カジノを巡る利権構造

そもそも、審議不足と言っても日本でのカジノ構想は今に始まったことではない。元都知事だった石原慎太郎は十数年も前から「お台場にカジノを!」なんて叫んでいたし、沖縄が誘致に動いた際には〝カジノ利権〟を巡って、争奪戦のようなものが繰り広げられてきた。

吉本興業が沖縄で「沖縄国際映画祭」を始めたのだって「カジノ事業に食い込むため」だと言われ、その利権にあやかろうというのか、セガサミーなどが真っ先に映画祭をバックアップしたりしていた。

現在、カジノの誘致に積極的なのは何といっても大阪だろう。2025年には万国博覧会の開催を目指しているが、その一方で大阪湾の人工島「夢洲」へのカジノ誘致も積極的に動いており、先ごろは「見本市」まで開催している。

この「見本市」には、米国の「シーザーズ・エンターテインメント」の他、エンターテインメントのリーダーだと主張する「日本MGMリゾーツ」、さらにはトランプ大統領の有力支援者と言われる〝カジノ王〟のアデルソン会長率いる「ラスベガス・サンズ」、「セガサミー」など、実に6社が参加した。特に「セガサミー」の里見治会長は、安倍晋三総理が最高顧問となり超党派で結成している「カジノ議員連盟」のメンバーに対して、カジノの重要性を積極的にアピールしてきたと言われる。

そう言えば安倍総理も、シンガポールでカジノを視察した際は「カジノによる利益を文化的な施設につぎ込み、新たな雇用や文化への投資を生み出す総合リゾートは、日本の成長戦略の目玉となる」と自信を示していたように記憶する。

では、実際にはどうか?

世界一のカジノ都市「マカオ」

カジノで経済が潤っていると言われるマカオの場合は、すでにラスベガスを上回っている。ここ数年は米国資本が7割以上を占めていると言われ、かつてあったような「売春」のイメージは薄らぎ、カップルやファミリーで賑わうようになった。

雇用に関しても基本的に地元が優先となっており、何と16歳から普通に勤めることができる。しかも「給与は10代で20~30万円は貰える」というから、当然、生活も裕福になっている。

日本では「ギャンブル依存者」など〝不幸〟を前提にしたネガティブな部分だけがクローズアップされるが、地域の経済や活性化という部分では、バラ色に夢が語られても不思議ではない。

と言うわけで現在、日本国内でカジノ誘致に名乗りを上げているのは、沖縄は抜けたものの大阪の他、北海道の留寿都村(るすつむら)、釧路市、苫小牧市、千葉市、横浜市、そして愛知の常滑市や和歌山市、佐世保市の9ヶ所だと言う。

少子高齢化が進み、日本の出生率は2年連続で100万人を割っている。それだけに地方は深刻だ。そういった事情から…もちろん地元住民の賛同も重要だが、カジノの誘致は人口減や雇用面など「活性化に有効」だと言えそうだ。

もちろん、地域のブランド力を高めることも可能だろう。いずれにせよ内需を喚起するには外需に頼るしかないという事かもしれない。すでに、カジノ・スクールなるものまでが開設されているといい、ムードも高まっている。そういった意味でいうなら、日本のカジノ構想は良くも悪くも「待ったなし」となっている。

ギャンブル依存症はカジノだけで起きるものではない

その一方で、厚労省によるとギャンブル依存症の疑いのある人は推計で70万人だという。借金で自殺に追い込まれる人も多い。思い起こせば7年前の11年に発覚した大王製紙・井川意高元会長による106億円もの横領事件。これはマカオのカジノで大負けしたことによるものだった。これも「ギャンブル依存症」が要因だった。

しかし、こういったことは何もカジノに限ったものではない。パチンコや競馬、競艇…。さらには麻雀など、あらゆる部分で起こりうるものだ。〝賭博〟と言うから問題視されるのだと思う。要は「依存症対策」と言うことで論議するなら、ギャンブルだけを語るのではなく、例えば再犯率の高い「薬物依存症」についても現実問題として、もっと論議していくべきだろう。

ところが現実は、そういったことに対しての医療態勢などメンタルの部分での対策が全くなされていないのが現状だ。一事が万事である。何か論議している風で、結局のところ曖昧にしてきているではないか。

カジノ法案を見ると、誘致するのは国内で最大3ヶ所とし、入場料金は6000円で、日本人の入場は週3回、月に10回までとしている。正直「世界最高水準のカジノ規制」なんて言ってるが、入場回数だけで掛け金については規制はしていないので、どこまでが依存症対策になるかは疑問ではあるが、かといって現実的に解決することは難しい。

ここは永遠の問題として、ここは日本的に〝先送り事項〟にするしかないのかもしれない。が、まずはシンガポールのようにカウンセリングを取り入れることはすべきではないか。

いずれにしても、カジノが出来ることで、この国のカタチも変わって行くだろうし、街の空気も一気に変貌していくことは間違いない。そうなった時に結局のところ、日本人よりも外国人にどれだけ魅力を感じてもえるか、アピールできるかが大きなポイントになってくることだろう。

ちなみに、共同通信社が3月に調査した世論調査によるとカジノ反対は65.1%で、賛成は26.6%だったという。