ずっとすっきりと暮らせる家、ものが散らからない部屋。そのためには、どんな間取りにして、どんな収納計画にすればいいのでしょう。その極意を知るために、整理収納アドバイザーの大木聖美さんのお宅を訪問しました。築15年になるというのに、きれいに片づき、心地よい空間です。建てる前も住み始めてからも参考になる、収納のヒントがたくさんありました。

見た目より使いやすさ、暮らしやすさを優先して

大木邸のキッチンはオープンスタイル。つり戸棚は設けず、背面に収納カウンターを備えています。4人家族のわりにコンパクトな冷蔵庫もポイント。奥まで目が行き届き、食品ロスも防げるそう。

⇒【動画】大木邸の様子&すっきり暮らしのコツ

 

リビングから見たDK。大木邸のLDKは2階で、3方に窓があるため明るく開放的な空間。子どもたちの趣味だというレゴの作品もたくさん飾られています。

 

大木流すっきり暮らすための収納のポイント

POINT 1 家にあるものの量をしっかり把握する

POINT 2 使用頻度の高いものは、肩から腰くらいの位置に収納する

POINT 3 家族みんなで使うものは、みんなで収納場所を決める

POINT 4 家族の成長に合わせてものは増えるので、定期的に持ち物を見直す

POINT 5 「すっきり」にこだわりすぎず、暮らしやすさを優先する

家づくりの際にまずやるべきは、持ち物のチェックが大切。

「趣味のものを含め、自分の家にあるものの種類と量をざっくり把握しておけば、どこにどのくらいの収納が必要かという収納計画が立てやすくなりますよ」(大木さん、以下同)

収納場所が決まったら、そこに「入るだけ」と決め、新しいものが欲しくなったら、収納場所を確保してから買うようにしているそうです。

ものの配置については、「よく使うものは手が届きやすい位置に、が基本。肩から腰くらいの高さだと取り出しやすく、戻しやすくなります」とのこと。

クローゼットや玄関などの大きな収納には扉がなく、オープンなのも大木流。より出し入れしやすく、掃除も管理もしやすくなっています。

「ざっくり収納が好き」と言うように、最初からがっちり決めすぎず、定期的に見直しながら暮らしの変化に合わせて収納の仕方などを変えているのもポイント。家族と一緒に収納場所を決めることで、自然と家族も片づけるようになるそうです。

大木邸のリビングでは、市販のワゴンやラックを使って、よく使う仕事用品や子どもの教科書などを収納しています。

「リビングはとくにそうですが、すっきりとさせなくてはいけない!と思い込んでいませんか?  それより家族が今、どう暮らしたいかを優先させるほうが大切。市販の収納家具などもうまく利用して収納場所を確保しましょう」

 

大木宅は2階リビング。1階に寝室と水回りを配したプラン

こちらは、大木さんの家のプラン。大手ハウスメーカーで建てました。1階は、玄関にシュークローゼットを併設。夫婦の寝室と、ウォークインクローゼット、納戸、水回りが配されています。2階に上がる階段下にも収納が。

玄関ホールから2階に上がると、広い1室空間のLDKと子ども部屋が2つというプランです。

 

キッチン:動かず調理と片づけができるように、収納場所を決める

シンプルでありながら存在感を放つ、トーヨーキッチンスタイルのオールステンレスキッチンを採用。収納はすべて引き出し式で、大容量。奥までたっぷりものが入るのが特徴です。

 

壁側のカウンターの引き出しには、食器類を中心に収納。使用頻度の高いものが上の引き出しに入っています。

 

上の段の真ん中の引き出しは、カップや紅茶の茶葉などの収納場所。無印良品のワイヤーバスケットを2段に重ねて使用。カウンターの上に引き出しから使う道具を出して、お茶の用意をします。

 

リビングやダイニングに近い右端の引き出しには、普段よく使う茶碗やコップ、スプーンやフォークなどを収納。家族が配膳の手伝いをしやすくなっています。

 

左端の上の引き出しには、普段使いのお皿などが。「コンロで調理したら、振り返ってお皿を取り出して盛ることができ、食洗機で洗い終わった食器を戻すときもムダな動線は一切ありません」。

 

キッチンの奥に設けたパントリーには、おもに食品のストックを収納。無印良品やIKEAのバスケットを利用して種類ごとに分けて入れ、とくによく食べる食材は肩から腰の高さの棚に置いています。

 

シンク下の下部の引き出しには、左側に洗剤類、右側に調理器具を収納。中央には1枚1枚取り出しやすいように、ゴミ袋をセットした無印良品の書類フォルダーを置いて、左右のスペースを仕切っています。

 

シンク下の上段の引き出しには、ラップやアルミホイル、ビニール袋などを収納。ラップ類はいろいろなサイズをそろえず、1種類と決めているそう。在庫も少なくてすみ、引き出し内がすっきりします。

 

コンロの下の引き出しには、加熱調理をしながら使う調味料やキッチンバサミなどの調理器具を収納。

 

コンロ下の下部の引き出しには、鍋やフライパンなどの調理器具を立てて収めています。

 

リビング:子どもが勉強するので教科書収納を。戻す先を用意して散らかりを防ぐ

リビングには造作の収納を設けなかったため、市販の家具を利用。引き出しに入れると出し入れが面倒なリモコン類や、テレビを観ながら使うトレーニンググッズなどは、テレビの横のワゴンに入れてサッと取り出せるようにしています。

 

「子どもがリビングで勉強するので、教科書の収納場所を確保。戻す先を用意してあげれば、散らかりを防ぐことができます」。

クローゼット:回遊動線&オープンで出入りがラク!掃除しやすいメリットも

寝室のウォークインクーロゼットは扉を設けず、回遊動線を確保。扉の開け閉めがないので出入りも掃除もしやすく、衣替えや洋服の見直し、毎日の洋服選びもラクに行えます。

 

「夫婦共有のクローゼットですが、手前が夫、奥が私とエリアを分けて各自で管理。ここに入るだけ、と心がけています」と大木さん。ぎゅうぎゅうに詰め込むと洋服が傷む原因になるため、ゆとりを持たせています。 

 

ホコリがたまりやすい場所なので、収納用品はすべてキャスターつきに。バッグなどはキャスターつきスノコに載せて収納。

 

クローゼット内のこまかいものの収納は、持ち物に合わせてカスタマイズできる無印良品のスチールユニットシェルフを活用。「引き出しをつけたり棚を増やしたりと、暮らしに合わせて収納を変えていけるので、すごく便利」。

 

玄関:上着、傘など靴以外の収納場所もきちんと設けると、玄関がすっきり!

左手にシューズクーロゼットを備えた、広々とした玄関ホール。 

 

シュークローゼットは、寝室のクーロゼットと同じく扉はなし。出入りがラクで湿気もこもりません。

 

靴も家族それぞれの場所を決めて収納。手袋やマスフラーなどの小物は各自の箱に。鍵や靴磨きなど、家族みんなが使うものは、取り出しやすい位置に配置。下部には生協のボックスなどを置くエリアも設けています。

 

手前には上着や買い物バッグなどをかけられるクロークも設置。家の中へ持ち込まなし仕組みにしています。「ウイルス対策、アレルギー対策に」。

 

傘はキッチン用レールを2本使ってつるして収納。本数がひと目でわかり、水もホコリもたまらず、傘立てがないと玄関掃除もラク。

 

階段下収納は防災グッズが中心。食品はひとまずここに収納し、パントリーのストックがなくなったら補充するシステムに。

洗面室:家族が1日に何度も使う第2のリビング。広いスペースを確保して!

タオルやパジャマなどは右側、洗濯用品や洗剤類は左側と、ざっくりと分けた大容量のつくりつけ棚。物干しポールも設置しており、棚の向かい側に置かれた洗濯機から衣類を取り出して干すのもスムーズ。

 

洗濯機の横にマグネット式の収納棚を設置。洗濯洗剤のほか、ハンガーもつるして収納できます。

※情報は「住まいの設計2022年2月号」取材時のものです