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 今年1月、すべての大手電力会社が電気の値上げを発表、家計を直撃したが、まだ序章だと経済ジャーナリストの松崎のり子さんは言う。

【画像】毎年、上がり続ける電気代。3月22日には節電要請もあったが…

「新型コロナによる経済停滞が回復に向かいエネルギー資源の需要が増加。そこに2月に突然始まったロシアによるウクライナへの侵攻という国際情勢が重なって、国内の電気料金上昇が特に目立ってきました。この4月の電気代は比較可能な過去5年でもっとも高い水準になります」

電力各社、過去5年で最高値

 月々支払う電気代がどう決まるか。キーとなるのが「燃料費調整額」。この燃料費調整額が高額な電気料金の一因だ。

 燃料費調整額は火力発電に用いる燃料、原油、液化天然ガス(LNG)などの価格変動によって、2か月後以降に電気料金に反映される。燃料費は国際情勢により変わりやすい。そのため、できるだけ国内の燃料費、つまり電気料金の急激な値上がりを抑えるためにこの制度が取り入れられた。この燃料費調整額が昨年から高騰したため、月々の家庭の電気代も値上がりしたというわけだ。

 この高値がいったいいつまで続くのか。現在の国内電気代の値上がりには主に3つの国際的要因が関わる。

 1つ目はウクライナ情勢。ロシアは天然ガス輸出量世界1位のエネルギー資源大国。そのロシアと欧米の関係はウクライナ情勢により緊迫化し、経済制裁が発令されている。その結果、天然ガスの国際価格が高騰、国内の電気料金にもしわ寄せがきている。

 2つ目は、OPEC(石油輸出国機構)による原油増産が進まないこと。一時のコロナショックから急回復して今年3月には130ドル超にまで上昇した原油価格にもかかわらず、世界への供給量増加は足踏みを続けるばかりだ。

 そして3つ目の要因は、中国の急速な脱炭素化。大気汚染や地球温暖化対策として、石炭・石油の代わりにCO2排出量の少ないLNG発電にシフトする中国の問題。石油代替えのLNG大量購入が、日本を含むほかのアジア各国のLNG調達難につながっている。

「燃料費の高騰には、世界のさまざまな情勢が関わっています。ロシアがウクライナへの侵攻をやめても、家庭の電気料金が値下げされるのは、まだまだ先でしょう」(松崎さん)

さらなる節電習慣で家計防衛

 そこにもう1つ、国内事情が拍車をかける。それが「再エネ賦課金」。これも電気料金に忍び込んでいる。国が進める再生可能エネルギーへのシフトにかかる費用の一部を、国民が負担しているのだ。この制度が導入された2012年に、平均家庭でたった57円/月だった再エネ賦課金は、2022年度は897円にまで騰がった。

 政府は2050年の脱炭素社会を目指し、再エネの導入をさらに進めていく方針。つまり再エネ賦課金は今後も値上がりする。「節電意識がこれだけ求められている時代は、昨今、なかったのではないか」と節約アドバイザーの丸山晴美さんは語る。

 丸山さんによれば、いちばんのポイントは「仕組みづくり」。春になり暖房を使わないから一時的に電気代は落ち着くかもしれないが、このあと梅雨時の除湿や初夏からは本格的にエアコンが稼働となる。一軒家で部屋数が多かったりすると「月の電気代が5万円」の事態になることも十分にありうる……いや、恐ろしい。まずは自宅内でできることはないかしっかり見渡すことから始めてみよう。

オトクな制度「東京ゼロエミポイント」

家庭で使っている冷蔵庫やエアコン、給湯器を、省エネ性の高い家電に買い替えると、「東京ゼロエミポイント」がもらえ、商品券やLED割引券に交換できる、という東京都が促進する事業。最大で21000P(LED割引券1000円分+商品券20000円分)がもらえる都民には大変お得な制度。

自宅でできる節電アクション5選

1 省エネ家電へ買い替え

 10年以上使っているエアコン、冷蔵庫、照明などは最新の省エネ家電に買い替えることで、節電することが可能。省エネ家電に買い替えると電気代が何パーセントお得になるのかを算出してくれる「しんきゅうさん」というサイトが便利。照明をLEDライトに変えることで電気使用量は約半分に

2 わが家に合ったプランに切り替え

 ライフスタイルに合った新電力会社を見つけることで、今より電気料金が安くなることも! 丸山さんのおすすめは地方自治体が推進する電気の「地産地消」という取り組み。地域経済の活性化にもつながり一石二鳥なので、自分が住む自治体の新電力について調べてみて。

3 家の中でもマイボトル

 これから夏にかけては冷蔵庫の開閉回数が特に増えがち。マイボトルを1人1個、家庭内でも使用することで、飲み物を取り出す際の開閉回数が減り節電に。また冷蔵庫に直射日光が当たっていたり、壁にくっつきすぎている場合は設置場所を変えると節電に。

4 湿度対策は万全に

 夏場は湿度を下げることで体感温度も下がる。梅雨時季に湿度を下げるには、エアコンの「弱冷房除湿」か冷房を高めの設定温度で使用するとよい。「再熱除湿」という機能だと、電気代が高くなってしまうので注意。ネットなどで今使っているエアコンの除湿機能がどちらのタイプかリサーチ。

5 できることからチリつも節電

・エアコンは扇風機やサーキュレーターと併用
・炊飯器や電気ポットの保温機能は使わない
・カーテンは遮光性の高いものに
・ゴーヤやアサガオで緑のカーテンを作る
・エアコンのフィルターを2週に1回は掃除

監修/松崎のり子
消費経済ジャーナリスト。雑誌編集者として20年以上、貯まる家計・貯まらない家計を取材。「消費者にとって有意義で幸せなお金の使い方」をテーマに、各メディアで情報発信を行っている。著書に『「3足1000円」の靴下を買う人は一生お金が貯まらない』(講談社)ほか。

<取材・文/オフィス三銃士>